[技術解説]

暗号技術の限界と次に来る秘密分散技術の基本を理解する

2018年1月15日(月)友村 清(ZenmuTech 研究開発本部 取締役)

2017年10月、ISO(国際標準化機構)が5つの秘密分散技術を標準化したというニュースがあった。なぜ今、秘密分散技術の標準化なのか、5つの技術それぞれの違いは何なのかを、この技術の専門ベンダーであるZenmuTechの友村氏に解説してもらった。

 情報セキュリティに100点満点がないことは周知の事実。だからこそ万一、文書やファイルが漏洩したり盗まれたりした場合でも実害が生じないように対策を講じる必要があります。今日、筆頭に来るのが、情報の暗号化でしょう。暗号化により文書やファイルを可読性のないビット列にすることができ、暗号化に利用した鍵がなければ復号できません。暗号の存在は通常、ほとんど意識することはありませんが、モバイルデバイスやWebサイトから政府/金融機関の情報管理まで広く普及しています。

 ところが今、そんな暗号に関する安全神話が終わりを告げるかも知れないという指摘が大学、研究機関や政府などから出されています。脅威になり得るのは量子コンピュータです。米国政府は「量子コンピュータが実用化されると現行の暗号化技術が破られる」とセキュリティに関する異例の警戒情報を出し、注意を喚起しています。政府や企業は機密情報を暗号化して送受信していますが、量子コンピュータの悪用によりセキュリティが担保できなくなります。現在、暗号化技術は全世界で使われており、量子コンピュータの登場は、セキュリティの屋台骨を崩壊させると考えられています。

 では、情報を守るのにどうするのか。暗号に変わり得る技術は何か?欧米でも日本でも、そうした視点での技術開発が進んでいます。現時点で最有力なのが「秘密分散技術」と呼ばれる鍵を使わない方式です。2017年10月に国際標準化機構が秘密分散技術を標準化し、関心が大きく盛り上がったこともあります。そこで以下では暗号技術を巡る現状と、課題をカバーする秘密分散技術の原理、およびいくつかある方式の特徴について解説します。

公開鍵暗号技術を復習する――計算量の大きさに依存

 文書やデータなど情報を暗号化するということは、コンピュータ的に言うと、情報に対して乱数などの任意のビット列を用いて計算処理することによって、計算処理前の情報とは異なるビット列に変換してしまうことです。計算処理に用いた乱数などの任意のビット列を「鍵」と呼びます。

 現在、通信など暗号化に広く使われている公開鍵暗号方式では、「公開鍵」と「秘密鍵」というペアになった2つの鍵を使用します。公開鍵は文字通り一般に公開されている鍵で、秘密鍵は鍵の作成者が他の人に分からないように所持している鍵です。公開鍵を使って暗号化された情報は、対応する秘密鍵でしか復号できない仕組みになっています。2つの鍵を使うことで鍵そのものをやりとりする必要がないのがこの方式の利点です。

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暗号技術の限界と次に来る秘密分散技術の基本を理解する 2017年10月、ISO(国際標準化機構)が5つの秘密分散技術を標準化したというニュースがあった。なぜ今、秘密分散技術の標準化なのか、5つの技術それぞれの違いは何なのかを、この技術の専門ベンダーであるZenmuTechの友村氏に解説してもらった。

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