[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

経営者は「ITは人を幸せにすること」にフォーカスしてほしい

ふくおかフィナンシャルグループ デジタル戦略部 部長 河﨑幸徳氏

2018年11月8日(木)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り込みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、株式会社ふくおかフィナンシャルグループでデジタル戦略部 部長を務める河﨑幸徳氏のオピニオンです。

 このコラムを読まれている方はITと何らかの関わりがあるでしょう。しかし、職種や年齢は様々でしょうし、ITに対するイメージや認識も個々に異なっているはずです。財務会計のごとく、全業種に共通するルールの下でITが活用されているわけではありませんし、ITに関する知識やスキルも同じではありません。しかもITは進化し続けますし、他の技術に比べ進歩のスピードも速いので普段から勉強することが求められます。

 そのため多くの経営者にとってITはハードルが高く、IT投資に躊躇する方々も少なくありません。それは経営陣の中でIT活用の責任を負うCIOも同じかもしれません。例えば役員のキャリアパスの一環として、ITに関わる業務を経験したことがないのにCIOに就任するケースです。公言しないまでも、CIOの中には「自分はITが苦手」だとか「難しくてわからないんだ」とおっしゃる方もおられると聞きます。

 そうしたCIOや経営層の方々は大変ですが、ITの効用や優位性を理解して貰わないと新規のIT投資もできない現場は、もっと大変です。機会を作ってレクチャに努めたとしても、理解してもらうには時間がかかりますし、この間、何もできませんから当然です。いったいどうすればいいのか? 一昔前と違って、今は答があります。大事になるのがITに対する考え方。ズバリいえば、「人を幸せにするためにはどのようにすればいいか」という観点から取り組むとことです。

 ITに限らずあらゆる技術が人類を裕福に、幸せにしてきたことに反対する人はいないと思います。電化製品や乗り物がその例です。ITもまったく同じですが、一定のレベルにまで進化し、多くの方々に効果が波及していくには様々な技術開発が必要で、時間がかかりました。何かをしようとするとお金や時間がかかり、その割には大した効果が得られない時代が続いたのです。

 しかし今日のITは、アイデアを実現する費用や時間を劇的に小さくするレベルになりました。一般企業にとってITはしょせん道具かもしれませんが、これまで不可能だったことがITで可能になるケースは枚挙に暇がありません。その結果、「人を幸せにするためにはどのようにすればいいか」を追求しさえすれば、ITによってそれを具体化でき、提供側も消費者など顧客側もどちらもハッピーにできるようになったのです。

 銀行の業務から例を挙げましょう。一昔前まで、銀行は平日の9時から15時までしか開いていませんでした。技術の進歩によりATMが登場し、夜間や休日など入出金できる時間が大幅に延びました。その後インターネットバンキングにより夜中でも振込や残高照会ができるようになり、今では口座開設含めほとんどの手続きがスマホで済んでしまいます。小さな幸せかもしれませんが、できなかった頃にはもう戻れないでしょう。

 こうしたIT活用の原動力が、お客様への利便性の提供、すなわち「便利で幸せ!」と思って貰うことです。便利かつ操作性を良くしないと他の銀行に負けてしまいますから必死です。以前なら他行に追随するだけで良かった戦略も、急激に進化するITを迅速に採用することで競争優位に立てることも予想できるため、積極的に取り組んでいます。IT自体は今も本業ではありませんが、本業を伸ばすためには欠かせない存在になったのです。ITは単なる手段や道具以上の存在と言えます。

 お客様向けのサービスだけではありません。一般企業と同様、銀行にも企業としての基本的な業務機能があり、「人を幸せにするためにはどのようにすればいいか」の対象です。経理や販売管理など間接業務の効率化や、迅速な意思決定を支援する仕組みを実現できます。効率的な組織での迅速な意思決定は経営者を幸せにしますし、社員を長時間労働から解放し、単純作業を削減することで時間的なゆとりをもたらします。在宅勤務など働き方自体を変えることも可能になり、従業員も「便利で幸せ!」を享受できるようになります。

 こんな考えで、IT化に取り組んでいけたら、IT化を推進する側も幸せです。特に、効果を皆さんと共有して、お客様からは「便利になったね」と言われ、ユーザー部署からは「作業が減って考える時間が増えたよ」とか、「ありがとう」などと言われたら、「ITの仕事に携われて本当に良かった」と感動してしまいます。

 最後に、まとめましょう。ITに詳しくないCIOや経営層の方々にお伝えしたいのはただ一つ、「ITは上手く使えば人を幸せにできる」こと。ですから「お客様や社員の目線で、人を幸せにするためにはどのようにすればいいか」を考え、「目の前にあるIT化案件は、それにかなっているか」を判断して下さい。最適なITを調達するのは、どの企業でもプロであるITの専門部隊がしっかり押さえるはずですので。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
デジタル戦略部 部長
河﨑 幸徳氏

※CIO賢人倶楽部が2018年11月1日に掲載した内容を転載しています。


CIO賢人倶楽部について
大手企業のCIOが参加するコミュニティ。IT投資の考え方やCEOをはじめとするステークホルダーとのコミュニケーションのあり方、情報システム戦略、ITスタッフの育成、ベンダーリレーションなどを本音ベースで議論している。経営コンサルティング会社のKPMGコンサルティングが運営・事務局を務める。

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