[インタビュー]

「サプライチェーンを見渡せない企業は市場で生き残れない」─SCM専業のKinaxis

次世代SCM/S&OPを目指した“自己修復型サプライチェーン”

2018年11月21日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

変化の激しい時代、企業のサプライチェーンにも変革が迫られている。SCM(Supply Chain Management)は、大手製造業を中心に古くから定着するマネジメント手段だが、この分野の専業であるカナダのキナクシス(Kinaxis)は、古い設計のSCMでは市場競争力が低下するばかりだと警告する。同社のCRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)、ポール・キャレイド(Paul Carreiro)氏に、SCMに関して企業が今抱える諸課題と、それらにこたえるべくSCMの進化に取り組む同社の戦略を聞いた。

1984年設立時点でインメモリデータベースを独自開発

──キナクシスの業容を簡単に紹介してください。

 キナクシス(Kinaxis)は1984年にカナダで設立され、クラウドベースのSCM(Supply Chain Management)/S&OP(Sales & Operations Planning:販売・業務遂行計画)を専業で行うソフトウェアベンダーである。年間の売上高は1億3500万ドル(約153億円)で、会社自体の規模としてはSMBに区分されるだろう。だが我々はこの30年間で常に成長を続け、SCMの技術革新を牽引してきたという自負がある。

写真1:キナクシスのCRO(最高収益責任者)、ポール・キャレイド氏

 経営的なマイルストーンとしては2014年にカナダ・トロント市場に株式上場したことが挙げられる。技術革新については設立時から始まっていて、このときすでに独自のインメモリデータベースを発表している。これはかつて製造業で広まったMRP(Material Requirement Planning:資材所要量計画)を高速に回す目的で開発したものだ。ちょうどERPの概念が出てきた頃で、ERPアプリケーションでMRPを回そうとする延々と時間がかかってしまうのが課題だったが、インメモリデータベースを採用してそれを100倍高速にした実績がある。

──今でこそインメモリデータベースはメインストリームのテクノロジーですが、その草分けの1社であると。あと、大企業の顧客が多いというイメージがあります。

 我々のSCMプラットフォーム「RapidResponse」は、ハネウェル(Honeywell)、BASF、ユニリーバ(Unilever)、マクドナルド、AMDといった世界中の大企業の経営において重要な部分を担っている。日本でもトヨタ自動車、日産自動車、参天製薬、カシオ計算機、コニカミノルタ、アシックス、LIXILなどで採用されており、こうした有名企業をサポートできることを大変嬉しく思う。当社のクラウドサービス提供基盤となるデータセンターを東京と大阪に開設するのも、我々の日本市場に対するコミットメント、継続投資の一例であり、この市場に非常に注力していることの現れである。

 産業別では、ハイテク/電子機器、重工/航空、産業機器、製薬/医療機器、自動車、消費財の6つにフォーカスしている。これらの産業はいずれもサプライチェーンが複雑だからだ。そして、企業規模が大きいほど抱えている問題も大きい。

 大企業の顧客のほとんどが、RapidResponseとSAPのERPシステムを連携させている。最新のS/4HANAでも、ECC(従来のSAP R/3)でも、SAP認定ソリューションということでサポートし、基幹業務システムとのリアルタイムなデータ連携を可能にしている。我々はクローズドループ(Closed-Loop)と呼んでいるが、RapidResponseで計画を立てて確定すると、それが即座にERPと連携、反映される。こうして既存のSAPユーザーは、SAPを基盤にし続けながら、RapidResponseを導入して高度なSCMを実行できるようになる。

──提供形態はクラウドサービス(SaaS)ですね。

 かつてはパッケージとSaaSの両方を提供していたが、現在、新規の顧客にはSaaSのみの提供となる。SaaSを提供し始めたのは2004年で、クラウドがブームになる以前からSaaS化に取り組んでいた。

 クラウドに舵を切った大きな理由として、システム基盤の運用は顧客企業のコアコンピテンスではないということがある。SCM専業のクラウドサービスベンダーとして、10年以上培った我々の豊富な経験が、多くの大企業に支持される根拠となっていると思う。

プロセスの複雑化でサプライチェーンの視界が悪化

──SCMやS&OPは、大手製造業の間で定着した製品分野ですが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流は、この分野にどんな影響を与えていますか。

 DXは、SCMに携わる組織や担当者にとって大きな関心事となっている。今、多くの企業では、サプライチェーンにまつわるプロセスやフローの複雑さが極まり、結果、自社のビジネスの根幹であるサプライチェーンがうまく見渡せなくなっている。これはDXを推進する過程での多様な取り組みも大きく影響している。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
  • 3
関連キーワード

Kinaxis / SCM / S&OP / サプライチェーン / 製造

関連記事

トピックス

[Sponsored]

「サプライチェーンを見渡せない企業は市場で生き残れない」─SCM専業のKinaxis変化の激しい時代、企業のサプライチェーンにも変革が迫られている。SCM(Supply Chain Management)は、大手製造業を中心に古くから定着するマネジメント手段だが、この分野の専業であるカナダのキナクシス(Kinaxis)は、古い設計のSCMでは市場競争力が低下するばかりだと警告する。同社のCRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)、ポール・キャレイド(Paul Carreiro)氏に、SCMに関して企業が今抱える諸課題と、それらにこたえるべくSCMの進化に取り組む同社の戦略を聞いた。

PAGE TOP