[市場動向]

副業OKは当たり前となるか、ITエンジニアの共創・シェアリング時代

ITエンジニアのコミュニティ醸成に注力するIT企業の深謀遠慮を深読みする

2019年1月31日(木)佃 均(ITジャーナリスト)

世界的にデジタルトランスフォーメーション(DX)やデータドリブン経営が叫ばれても推進に二の足を踏むユーザー企業がいて、顧客のDX支援策を打ち出せていないIT企業がいる。一方で、自由で柔軟な発想の下、魅力的なアプリやサービスを次々と生み出すIT企業がいる。最近の取材で筆者が目にしたのは、ブログや勉強会などのコミュニティ活動を通じて日々発信し連携しながら、企業の壁を越えたシェアリングで価値を創出するITエンジニアの新しいワークスタイルだ。

IIJのエンジニアが業務時間外に開発したIoTシステム

 インターネットイニシアティブ(IIJ)がこの春にも、クラウドでIoTのビッグデータを一元的に管理するサービスを始める。サービスの名称は未定、開始時期も未定だが、基本となるのは「Machinist(マシニスト:機械工)」という名称のシステムだ。

 Machinistは、IIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部に所属するネットワークエンジニアの猪俣亮氏が業務外の時間を使って開発したものだ。上長(課長)の畠山宏平氏がその有用性を認め、2018年11月、同社のIoT関連事業のプラットフォーム(デバイスモニタリング)に採用された。同月末にはIIJのエンジニアブログに公開され、現在、ベータ版を無料で10メトリックまで試用することができる。

 IIJが提供するクラウド型端末管理システム「SACM」(Service Adaptor Control Manager)をベースに、そのアプリケーションとして機能する。ネットワークに接続するセンサーが収集する大量のデータをHTTPでJSON(JavaScript Object Notation)を送信すると、自動的にグラフ化する。最大の特徴は、IoTデータの収集・分析について、あらかじめ加工方法を決めておかなくてもよいことだ。

複数事業所の室温をIoTで管理

 Machinistの実用例として説明を受けたのは、ネットワークで結ばれた温度センサーのデータ管理システムである。IIJの事業所(東京、大阪、名古屋)には、フロアごとに温度センサーが設置されている。そのセンサーが感知した室温データがHTTPで自動収集され、クリック1つで時間別・フロア別・事業所別など、温度変化を示す複数のチャートが示される(画面1)。

画面1:Machinistを用いた温度センサーのデータ管理システムの画面(出典:IIJ)
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 「準備していないので……」ということで見せてもらえなかったが、実証的に東京・飯田橋のIIJ本社内にあるトイレの空き状況管理システムを作ったところ、たいへん好評だったそうだ。また自分の乗用車のセンサーからデータを収集して燃費を測るシステムを自作したITエンジニアもいるという。

 猪俣氏は、Machinistの特徴や利用メリットとして以下を挙げる。

(1)ネットで利用できる類似のサービスがない
(2)法人向けのシステムは何十万円もするので、個人が手軽に使えるツールがない。Machinistのベータ版であれば個人が無料で利用できる
(3)あらかじめデータをどのような分析を実施するか決めなくても、データを送信するだけで分析のプロトタイピングができる
(4)トライ&エラーで適切なメトリクスを探り当て、柔軟(臨機応変)に閾値を変更しながらシミュレーションを実行する。また、属性情報やタグでデータを絞り込み、設定した条件でさまざまなチャートを生成したり、ユーザーが自分流のダッシュボードを作ったりすることができる

 近年、センサーの高機能化が急速に広がり、多様なデータが容易に収集できるようになった。ところがそのデータをどのように整理し、どのように分析すればよいか、迷っている企業は少なくない。

 一方、システム開発はアジャイルやリーンの手法でトライ&エラーによる迅速な開発、デプロイが可能になっている。そのような中で、ビッグデータの収集・分析システムが旧来のウォーターフォール型で開発されていたのでは変化に対応できるわけがない。

 つまり、Machinistはビッグデータの収集・分析にアジャイル型のトライ&エラー(プロトタイピング)を可能にする。一方、IIJにとっては従来のインターネットインテグレーション事業にアプリケーションサービスを追加すると考えていい。

●次ページ:「副業OK」でITエンジニアのシェアリングが進む

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