[技術解説]

インテル、「Optane DC Persistent Memory」を発表─“ポストムーア”の新メモリアーキテクチャ

プロセッサセントリックからメモリ/データセントリックへ、既存の企業IT環境へのインパクトは?

2019年4月4日(木)渡邉 利和

ムーアの法則が終焉に近づき、プロセッサセントリックからメモリ/データセントリックの時代へ──米インテルは2019年4月2日(米国現地時間)、企業のデータセンター/サーバールーム向け新製品を多数発表した。その中に含まれているのが、2018年頃から段階的に情報発信して、登場を予告していた新しいアーキテクチャを採用した不揮発性メモリ「Optane DC Persistent Memory」だ。ここでは、先月米国で開かれたプレブリーフィングなどで得られた情報に基づき、同メモリの特徴をお伝えする。

メモリセントリック時代の到来

 「データ爆発(Data Explosion)」という言葉がIT業界で盛んに語られたのはおよそ20年近く前の話だ。しかしその事象自体は過去の問題になるどころか、年々その増加ペースを高めている。現在ではIoTやコネクテッドデバイスなどが示すように、現実世界のありとあらゆるモノがデジタルデータを生成し続ける状況が現実化している。

 また、データ処理手法の分野では、マシンラーニング(機械学習)やディープラーニング(深層学習)といった、いわゆるAI技術が急速に実用段階に入った。このことで、「大量のデータを学習させることで、より高精度な予測が可能になる」という認識が広がり、これがさらに多くのデータを集めたいというニーズを生み出している。

 データ処理を担うプロセッサの側はどうだろうか。ムーアの法則(Moore's law)に沿った性能向上はついに実現困難な段階に至っており、データ量が増え続け、かつデータ処理手法が高度化することでより高い演算性能が求められるようになっている。にもかかわらず、プロセッサの性能向上ペースは鈍化しているというミスマッチが起こっている。そのため、例えばヒューレット・パッカード(HPE)の「The Machine」のように、従来のプロセッサとメモリの主従関係を逆転させた、メモリセントリックなコンピューティングアーキテクチャの実装も始まっている(関連記事デジタル変革期に注目すべきテクノロジーとクラウド/データセンターの「進化の方向」)。

 米インテル(Intel)が2019年4月2日に発表した「Optane DC Persistent Memory」(写真1)も、ポストムーア時代の新たなアーキテクチャを模索する取り組みの1つと位置づけられる。プロセッサとメモリの主従逆転のようなドラスティックな変革ではないものの、ムーアの法則の下、みずから推進してきたこれまでのプロセッサセントリックからの転換を図ってコンピューティングモデルを大きく変える力がありそうだ。

写真1:プレブリーフィング会場で展示されたOptane DC Persistent Memoryの表裏。放熱板で覆われているので、チップそのものはほとんど見えないが、チップの厚みも一般的なDRAMと特に違いはないとのことだ
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Optane DC Non-volatile Memoryとは

 Optane DCは、「フラッシュメモリより高速、DRAM(Dynamic Random Access Memory)より安価で大容量」という特徴を持つ、新たなメモリデバイスだ。また、名称に「Persistent(永続性)」という語を含むことからも分かるとおり、電源を切ってもデータが失われない不揮発性メモリ(Non-volatile Memory)である(図1)。

図1:Optane DCのハードウェア面での特徴。モジュール側に暗号化機能やRAS機能などを実装しており、インテリジェントなモジュールとなっている(出典:米インテル)
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 プレブリーフィングでは、Optane DCの開発者がみずから説明を行った。米インテルのデータセンター事業部不揮発性メモリグループバイスプレジデント/ゼネラルマネジャーのAlper Ilkbahar氏だ(写真2)。

写真2:Optane DC Persistent Memoryの実物を持って見せるAlper Ilkbahar氏

 もともとインテルのプロセッサ設計者だったが、約10年前に3D XPoint Memoryの技術に取り組むために同社を離れ、2016年にOptane DCの担当者として復帰したという経歴の持ち主だ。プロセッサからメモリへと関心領域を移したIlkbahar氏自身が、プロセッサセントリックからメモリセントリックへというコンピューティングアーキテクチャの変化を象徴していると見ることもできそうだ。同氏は新メモリについて、「コンピューティングアーキテクチャの革新であり、新たな階層(Tier)/新たなパラダイムを持ち込むものだ」と語った。

 Optane DCの設計に際しては、「従来のDRAM DIMMと物理的にも電気的にも互換性を保つことが前提だった」(Ilkbahar氏)という。言い換えれば、広く普及した従来のDIMMと単純に差し替えて利用可能なモジュールとするということだ。

 実際、Optane DCはDRAM DIMMと同様に扱え、DRAMとの混在利用が可能だ。現時点では、128GB、256GB、512GBの各容量のモジュールが実現されており、価格はDRAMよりも安価だという。具体的な価格は明かされなかったが、現在、サーバーベンダーがオプションとして用意しているDRAM DIMMの価格は64GBでおおよそ100万円超という水準で、最大容量は価格に目をつぶれば384GBに達する。

 このDRAM DIMMをOptane DCに交換することで、これまで以上の容量のメモリをサーバーに搭載できることになる。例えば、インメモリ(オンメモリ)データベースなどを運用する場合に、搭載可能な物理メモリ容量がデータベースの規模を直接制約する要因となるため、こうした用途には特に効果的だと考えられる。

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