[ユーザー事例]

欧州で沸騰するプロセスマイニング─BMW、Siemens、Lufthansaなど欧州企業はここまで来ている!

独Celonisが初のユーザーコンファレンスを開催──Celosphere 2019[事例編]

2019年4月17日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

2019年、最もホットなトピックになると見られるのが「プロセスマイニング」だ。本誌はこの技術のリーディングベンダーである独セロニス(Celonis)がミュンヘンで開催した同社初のユーザーコンファレンス「Celosphere 2019」を取材した。今回はBMWやシーメンス、ABB、ルフトハンザドイツ航空といった欧州有力企業の業務プロセス変革への取り組みを紹介する。企業の”基礎体力”を強化する動きであり、少なくとも日本の5年先を行く実態が明らかになった。

 どんなにすぐれたWebサイトやアプリケーションを構築したとしても、当然それだけではビジネスは完結しない。モノやサービス、お金のやり取りがある以上は出荷指示や配送、請求、入金といった処理が必ず伴う。製造業の場合には、資材や部品の調達、要員の手配、生産指示、生産管理、完成品検査あるいは保守サービス……。これでもごく一部であり、多種多様な業務を一連のプロセスとして、迅速かつ適切に遂行することで、ようやくビジネスが成立する。

 一見、華やかで機動的に行動するかに見えるネット企業も事情は同じ。モノを扱う企業は膨大なバックオフィス業務をこなす必要があるし、サービスのみの企業でも開発やサポート業務がある。水面上に見えるWebやアプリの裏側ではさまざまな組織や部門が連携し、多くの業務プロセス(ビジネスプロセス)を日々こなしているのだ(図1)。

図1:見えにくく派手さもない業務プロセスこそ重要
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プロセスマイニングの凄み

 ここからが本題である。業務プロセス変革に関して筆者は、2018年6月に「RPAの次に来る"大波"「プロセスマイニング」は何が凄いか──膨大なイベントログを採掘して業務プロセスを可視化/分析可能に」という記事を書いている。ここで取り上げた独セロニス(Celonis)から、「初のユーザーコンファレンスを開催するので取材に来ませんか」との誘いを受けた。

 話を聞くとシーメンス(Siemens)やBMW、ルフトハンザドイツ航空(Deutsche Lufthansa AG)などドイツ勢に、仏・蘭エアバス(Airbus)や英ボーダフォン(Vodafone)なども加わった欧州の大手グローバル企業が、業務プロセス改革の取り組みを講演するという。否も応もない──。そんなわけで2019年4月2日~4日の会期で、独ミュンヘンで開かれた「Celosphere 2019」に参加してきた(初日はパートナーデーだったので実質は2日間)。以下、その模様を報告する。

 なお年次コンファレンスであることを示す「2019」を銘打っているが、Celonisにとって初のユーザーコンファレンスであり、参加者数は合計1100人(ユーザー700人、パートナー300人、社員100人)。米国の大手ベンダーのコンファレンスとは違った、手作り感の強いこじんまりとした会場が好印象だった(写真1)。

写真1:Celosphere 2019の会場はミュンヘン郊外。こじんまりとした雰囲気・場所である。隣にはアマゾン・ドットコムの物流センターがあった

 なお、プロセスマイニングについては上記の記事を参照していただきたい。この手法に絡めて比喩的に言うなら、「航空機のフライトレコーダーのようなものです。外部からの観察や当事者へのヒアリングでは起きたことの断片的な情報しか掴めませんし、確たる証拠にもなりません。イベントデータなら詳細に何がどのように進行したかを把握できます」(プロセスマイニングに詳しい、三菱総合研究所 コンサルティング ディレクターの百瀬公朗氏)である。

プロセス変革の取り組みで日本は欧州の5年遅れ?

 結論を先にまとめると、欧州、特にドイツの大手は業務プロセスを可視化し、実行状況をモニタリングし、問題を分析し、変更・拡張する業務プロセス変革に、熱心に取り組んでいることが浮かび上がった。単なる合理化や省力化が目的ではない。変化するビジネス環境に俊敏に対応できるようにするためであり、人(従業員)の創意工夫やモチベーションを引き出すためである。上記の図1で言えば、水面下にある部分を強靱にする狙いだ。

 欧州で取り組みが本格化したのは2015年前後であり、日本ではまだ聞かないテーマなので少なくとも5年の差があることになる。とはいえ、今のところは日欧間に目に見える差が生じているわけではない。欧州でも大手が先進的に取り組んでいるだけだろうし、何よりも日本の“現場力”の強さには定評があるからだ。ただ日本で現場力と言えば、製造現場や物流現場のこと。業務プロセスの大半を占めるホワイトカラーの現場では、ベテランのがんばりや、若手の献身的な努力に委ねてしまっているケースが多いのではないか。

 Celosphere 2019で見た欧州企業はそこにメスを入れ、多様な人材が、業務が変化しても問題なくプロセスを遂行できるようにしようとしている。そこに日本の遅れを感じるし、今回のコンファレンスで知った概念、「Superfluid Enterprise(超流動企業)」や「Digital Twin of Organization(DTO:企業組織のデジタルツイン)」について、日本ではほぼ聞かないことも問題だ。AIのように分かりやすくなく、むしろ地道で時間がかかる取り組みだけに、数年後には大差がつきかねないと危惧する次第である。ともあれ、以下ではCelosphere 2019の講演から欧州企業の取り組み事例を見ていこう。

 なお、本稿文末の表1に、同コンファレンスで発表のあったユーザー企業の事例を一覧にまとめているので併せて参照されたい。

●Next:欧州企業のプロセスマイニングへの取り組みと得られた効果を一挙紹介

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