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ANAホールディングス、JFEホールディングス、丸井グループ─「攻めのIT経営銘柄2019」3社がDXで実践したこと

攻めのIT経営銘柄2019発表会でキーパーソンが取り組みを披露

2019年5月13日(月)奥平 等(ITジャーナリスト/コンセプト・プランナー)

「2025年の崖」を目の前にして、IT企画・構築・選定力がますます自社の経営を左右するようになっている。2019年4月23日に経済産業省と東京証券取引所が発表した「攻めのIT経営銘柄2019」。そこで選ばれた29社を代表して、ANAホールディングス、JFEホールディングス、丸井グループの3社のキーパーソンが登壇し、DXの推進やイノベーション創出に向けた取り組みをみずから紹介した。

DXの障壁となる「ITを巡る不都合な現実」を指摘

●「攻めのIT経営銘柄2019」の概要・選定企業一覧はこちら関連記事2025年の崖目前、レガシーから脱却しDXに舵を切る─「攻めのIT経営銘柄2019」選定企業が発表

 「攻めのIT経営銘柄2019」および「IT経営注目企業2019」選定企業の紹介の後、攻めのIT経営委員会の委員長を務める、一橋大学 CFO教育研究センター長/一橋大学大学院 経営管理研究科特任教授の伊藤邦雄氏が登壇した(写真1)。

写真1:攻めのIT経営委員会の委員長を務める、一橋大学の伊藤邦雄氏

 伊藤氏は改めて「ガバナンス改革」の重要性を示した。それとともに、ステークホルダーの体験価値を最大化することがDXにつながることなどを、氏の「伊藤レポート2.0=持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書」に基づいて持論を解説した。

 講演の中で伊藤氏は、ROE(自己資本利益率)の向上を目指しつつ、それでも海外と比較して売上高営業利益率が低い日本企業の現状を指摘。そこにはITを巡る「不都合な現実」、すなわちITコストの約80%が運用・保守に向けられて高コスト体質を生み出していること、約70%の企業がレガシーシステムを変革の足かせと感じていることなどを示し、企業が今後取り組むべき課題を示唆した。

 また、プログラムの委員長の立場からは、上場企業を対象としたこの取り組みにおいて、今回、対象企業中1割程度にとどまったエントリー数を「5割程度まで増やしていきたい」と語った。

「攻めのIT経営銘柄」を代表してユーザー企業3社が取り組みを披露

 発表会の締めくくりとして、攻めのIT経営銘柄2019選定企業3社のキーパーソンを交えたパネルディスカッションを行った。「DXグランプリ」にも選ばれたANAホールディングス 取締役常務執行役員の三浦明彦氏、JFEホールディングス執行役員の新田哲氏、丸井グループ執行役員の海老原健氏は、それぞれが自社の取り組みを壇上から紹介。この3氏に同プログラム委員でインプレス 田口潤編集主幹が加わったパネリストによるディスカッションが、一橋大学の伊藤氏のモデレートの下で展開された。ここで語られた3社のDXへの取り組みをそれぞれ紹介しよう。

CSとESの両方に根ざしてDXを実践─ANAホールディングス

 ANAホールディングスの三浦氏は、前回紹介した役員クラスのワークショップから出発した、DX/イノベーションへの各種の取り組みを語った。DXへ向けた意識改革のほか、経営企画部門とIT部門を融合させた「イノベーション統括部門」を新設。加えて、現場の社員を兼任で同部門に登用することで、アイデア出しの活性化を促した。そのうえで、PoC(Proof of Concept:概念検証)を別予算化することでRPA、AI、IoTなどの領域での実証実験を活発化させているという。

 また、「イノベーションハニカム」と呼ぶコンセプトの下、最新技術の組み合わせによる「価値創造の連鎖」を提唱。2019年5月に3Dプリンタを装備したイノベーションラボなどにおいて、迅速なプロトタイプ化、実証実験を通じてコンセプトを具現化しようとしている。

 同時に顧客との接点となる空港内では、「シンプルでスマートな空港の実現」に向けて、機内誘導バスの無人化、顔認証を採用したOneID、ロボットによる手荷物運送などにも取り組んでいる(図1)。

図1:シンプルでスマートな空港の実現に向けた取り組み(出典:ANAホールディングス)
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 ここでの重要なポイントとして、これらが単に顧客視点を志向したものではないことだ。「従業員にやさしく、顧客に満足を」というES(Employee Satisfaction:従業員満足)の発想に立脚したCS(Customer Satisfaction:顧客満足)に立脚している点に注目したい。

 同時に、ANAグループでは、API連携と仮想データベースを用いて、デジタルサービスプラットフォームと基幹系システムを統合する「CE基盤」(Customer Experience:顧客体験基盤/顧客情報基盤)の構築プロジェクトを敢行。将来的にはトラベルシーンのあらゆるタッチポイントで「One to Oneサービス」と実現していきたいとしている(図2関連記事「企業データ基盤」はこう創る!─ANAの“顧客体験基盤”構築の要諦)。

図2:デジタルサービスプラットフォームと基幹系システムを統合してCE基盤を構築(出典:ANAホールディングス)
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 三浦氏はさらに、Society 5.0(超スマート社会)に貢献する取り組みとして、2018年3月に発表した「ANA AVATAR VISION」も紹介した。これは、「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献」というANAグループの経営理念を踏まえて、人間の分身で「時空を超えた瞬間移動を実現する手段」であるAVATAR(アバター)ロボットを通じて、「人々を繋ぎ、世界をよりよくしていくこと」を志向するビジョンである。

 AVATARは、さまざまな理由で実際にその場に行くことが困難な状況において、その力を発揮するという。例えば、災害の現場における救助や、医療機関の整備が進んでいない地域における治療、あるいは地理的・財政的な制約を受けている人たちの教育などだ。

 これらを実現させるには、センサーやネットワークに加えて、ロボティックスやVR/AR、ハプティックス(Haptics:触覚)技術など、多様なエクスポネンシャルテクノロジー(Exponential:指数関数的。つまり急成長技術)が必要となるが、現状では個々の技術が別進行で開発されており、技術融合を踏まえて実用化させるには時間を要する。

 そこでANAホールディングスは、AVATARの早期実用化を加速させるべく、国際コンテスト「ANA AVATAR X PRIZE」を開催。すでに人間の五感のうち、見る・聞く・触るの三感を使用したAVATARの実現は目途が立ちつつあるという。三浦氏は「今後は五感すべてを使える高度なAVATARへと進化させていきたい」と語った。

 同社は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けてのキーワードを「ユニバーサル」とし、そこでは、Society 5.0を導くオープンイノベーションの取り組みを開花させたい構えだ。「新たな時代の幕開けに向けて、さらなるDXを追求し、超スマート社会の実現に貢献したい」と三浦氏は結んだ。

●Next:JFEホールディングスと丸井グループの取り組み

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