[海外動向]

中国・深圳はイノベーション先導都市だった! 5年で1億7000万顧客のWeBankなど先鋭3社を訪問

2019年7月17日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

「電気/電子機器を非常に安価かつスピーディに製造する企業が集積する都市」、「ファーウェイやDJI、テンセント、BYDなど大手企業が本社を置くハイテクシティ」、「米国シリコンバレーに匹敵するテクノロジーの街」──。こんな形容詞で語られる巨大都市、中国・深圳(シンセン)にようやく行くことができた。滞在わずか2日に過ぎないが、日本はもとより米国にもない新たな取り組みを知ることができた。3カ所の訪問先で得た情報をレポートする。

 まず、深圳(シンセン、Shenzhen)に関する基本情報から。中国では北京、上海、広州と並ぶ4大都市の1つと位置づけられるが、北京などと異なり、40年前は漁業中心の何の変哲もない田舎町だった。それが変わったのは改革開放の下、1980年に経済特区に指定されたのがきっかけだ。外資を呼び込んで世界の工場という地位を確立し、その後、バッテリーやEVのメーカーであるBYD(比亜迪)、通信機器のファーウェイ(Huawei Technologies)、SNSで中国最大手のテンセント(Tencent)といった有力企業を輩出。今も高成長が続いている。地理的に香港に隣接し、ビジネス・人材両面で関係が強いのも深圳の強みだ。

 深圳市の面積は1953平方km。2193平方kmの東京都と変わらない。1980年代半ばに3万人ほどだった人口は1500万人と今では東京を上回る。都市としての歴史がないため、人口の多くを中国各地から集まった若い人材(労働者や起業家)が占めている。ある程度の年齢になった人は生活費の安い地域へ移住する傾向があるといい、平均年齢が28歳と若者の都市であることが特徴だ。実際、街中を歩いたり車窓から眺めたりするだけで、そのことがよく分かった。

 断片的であることを承知で移動中のバスから眺めた印象を列挙すると、新しい都市だけあって道路は広く、幹線道路では片側5車線のところもあった、20年以上前の街や建物もあるが再開発が進められている、街を走るタクシーはBYD製のEV(電気自動車)でありテスラ(Tesla)車も多く見かけた、メルセデス、BMW、アウディといった高級車の比率は東京を上回る、といったところだ。道路が整備されているとはいえ朝夕の渋滞は厳しく、今回は乗れなかったが、地下鉄が8路線あって便利だという(現地ガイドさんの話)。それとスマホ決済オンリーかと思っていたが、コンビニや商店などで問題なく現金が使えた(当たり前か)ことも付記しておきたい。

 本題に入ろう。今回の視察は総勢20人のツアー。人脈を辿ってネット専業銀行のWeBank、グループを挙げてスタートアップ支援を推進する国有企業の華潤創業、ハードウェアベンチャーのアクセラレーターである深圳バレーベンチャーズ(SVV)を訪問し、話を聞くことができた。個人だと事業所訪問くらいはできても、話を聞いたり質疑応答するのは難しい。参加してよかったと思う次第である。以下、それぞれについてレポートする。

WeBank
わずか5年で1億7000万人の顧客を獲得したネット専業銀行

 最初に訪問したのは、WeBank(微众銀行)という、中国SNS最大手のテンセントが30%出資する(残り70%は投資会社など)ネット専業銀行である。銀行免許を得てサービスを開始したのは2014年12月のこと。まだ5年も経っていないが、すでに1億7000万人もの顧客を獲得して成長を続ける。しかし社員数はわずか2000人+アウトソース1000人でしかない。

写真1:WeBankの外観
写真2:WeBankの受付。このあたりはごく普通だ

 ターゲットとする顧客は中低所得の個人や中小企業。「中国では個人が金融サービスを利用するハードルは高いのが現状です。既存の銀行に口座を持つ人は大卒が82%、ホワイトカラーが66%、都市在住者が90%です。つまり金融サービスを享受できていない人が多い。中小企業も同じで、WeBankはそうした既存の金融サービスを享受できていない人や企業にサービスを提供します」。これらのB2C、B2B以外にも、中古車販売事業者や大手小売業との協業=B2B2Cの開拓にも、力を入れている。「店舗用の口座を顧客が開設して100元をチャージしたら、店舗がいくらかをマネーバックします。店舗は再来店を期待できるし、顧客は得します。WeBankも顧客を獲得できる仕組みです」(同社)。

 収益源とするのは、無担保の個人向け融資サービスだ。「微粒貨」というサービスがそれで、貸す金額は500元(約8000円)から30万元(約500万円)。1日単位で利息が発生し、1万元(約16万円)あたり2元(約32円)から5元(約80円)。年率にすると7.3%~18.3%になるが、1日単位なので期日前に返済すれば、ペナルティなく利息を減らせる。利息に幅があるのは信用に応じて変動するからで、微粒貨ではビッグデータにより個人や企業毎に算出しているという。

 より大きな特徴は融資のスピードである。何しろ「(スマホでの)申し込みから貸すかどうかの査定まで5秒以下、入金するまでに1分以下(システム上は10秒)です。ネットの特売などで急に買いたいと思った時、10秒ほどでお金が届きます」というのだから凄まじい。スマホで完結することも含めて、事実上、お財布代わりである。これが中小企業向けになると、融資額が最高300万元(約5000万円)になり、査定の時間も長くなる。それでも申し込みからお金を届けるまで15分に過ぎない。事業形態は銀行というよりも日本の消費者金融や商工ローンに近いが、ともかく驚異的なスピードだろう。

●Next:WeBankが特に重視する“ABCD”とは?

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