[知っておいて損はない気になるキーワード解説]

パーソナルデータが資産に?「情報銀行」の仕組みとビジネス環境(前編)

2019年10月10日(木)清水 響子

マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP……。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャ、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で分解してみたいと思います。今回は、認定制度や民間事業者によるサービスが始まった「情報銀行」を取り上げます。

【用語】情報銀行

 個々人のライフログや購買、Web閲覧などのデータを、データ生成者から自らの意志で信託され、本人同意の下で活用したい企業等の第三者へ提供する──それが「情報銀行」のビジネスモデル。ユーザーに報酬や信用スコアといった直接的な対価、あるいはデータ活用による社会的課題の解決といった間接的な対価を還元し、データ提供のモチベーションを担保する仕組みで成り立つものです。

 2019年6月、総務省と経済産業省が共催する「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」が公表した「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0(案)」(以下、指針)を基準に、日本IT団体連盟の情報銀行推進委員会がお墨付きを与える制度も始まり、6月21日に三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティングが第1弾として「情報銀行」認定マークを取得しました。

 指針では、「情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS(Personal Data Store)等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業」と定義されています。

 GAFAによるデータ寡占や「リクナビDMPフォロー」問題など、個人データの取り扱いに関する一般ユーザーの不安が募る昨今ですが、データ流通、活用環境の整備は日本国にとって喫緊の課題。政府第4次産業革命ビジョン「Society 5.0」の中核と位置づけられる「パーソナルデータの活用」の基盤として、情報銀行およびデータ取引市場の整備が進んでいます。

 個人へ自らのデータコントロール権(コントローラビリティ)を還元したうえで企業と個人に横たわる情報の非対称性を縮め、相互信頼のもとで消費者と企業が安全・安心にデータを共有・活用するデータ流通市場を育み、新規事業創造やAI潜在能力の向上を図ります。

図1:情報銀行のイメージ(出典:総務省・経済産業省「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」(案))
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【イノベーション】
ネット上のデジタル資産を「通帳」として個人が管理

 情報銀行の思想は、従来企業がユーザーにわかりやすいとはいえないかたちで取得し活用してきたCRMなどのデータを、個人情報及び創造されたパーソナルデータの主体である本人の資産として、個人の意思の下でフルコントロールできるようにするものです。データ権利の所在を個人と明確化し、データ活用の意思決定における本人の関与を強化します。

 金融資産の預託によって利息が還元される銀行のしくみをメタファーに、現代の資産であるデータを預かってユーザーによる管理を支援する通帳の機能を提供します。個別あるいは包括合意のもとで適切なデータ投資先(データ提供先)を提案し、運用益を個人に配当。運用状況の可視化やより有益な運用方法を助言するFP(ファイナンシャルプランナー)のような機能を提供する場合もあります。ユーザーはお金と同様に、口座を自由に移したり、複数の銀行で分散管理したり、投資先を変更したりできます。個人情報自体を預託し直接対価やサービスを得る方法が主流になりそうですが、個人の属性に関する情報や匿名加工を経て統計化されたデータを提供して対価が支払われる、ファンド型のデータ運用もあります。

 パーソナルデータの流通・活用に関する国民の不安や企業の躊躇を払拭する目的に沿い、情報銀行にはデータのトレーサビリティ、ポータビリティと削除といった機能が求められます(図2)。

図2:従来のデータ活用とのちがい
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 個人から見た便益は、購買履歴に基づく売上貢献度に応じた顧客優遇プログラム(Frequent Shopper Program : FSP)をはじめとする企業都合のサービスや提案から、ライフログや購買行動の提供という自らの主体的アクションへの対価、そして提供したデータに基づく信用スコア取得などのサービス価値への転換を意味します。

図3:CRMとの比較イメージ。企業主体で個人データを収集・活用するCRM(上)から、個人が管理するデータ提供条件に同意した企業が利用を許諾されるVRM(下)へ
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●Next:お金だと金融市場全体にあたる仲介市場は?

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