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浜松市役所、支出業務におけるAIの有効性を検証、年間で約1597時間を削減可能

2020年2月21日(金)IT Leaders編集部

静岡県浜松市は、年間約30万件におよぶ支出命令伝票を確認する支出業務の決裁・審査にAIを活用する実証実験を、2019年6月から12月まで実施した。支出業務に関わる市役所業務の全体で、年間最大約1597時間の削減が見込めることを確認した。構築を支援した富士通が同年2月20日に発表した。

 浜松市役所が行った業務効率化の実証実験では、ディープラーニング(深層学習)を用いて印鑑の印影を自動検出する富士通総研の物体検出技術と、帳票内の情報を自動検出するPFUのAI-OCR(光学的文字認識)技術を組み合わせた。

 これにより、伝票や請求書の確認項目と不備を、審査部門が確認する前にAIが検出できるようにした。検出結果に応じて、システム上で即座に起案者や決裁者に通知する。これにより、決裁と審査の効率化を図っている(図1)。

図1:支出業務における決裁・審査業務の流れと内容不備を検知するAI機能(出典:富士通)図1:浜松市の支出業務における決裁・審査業務の流れと内容不備を検知するAI機能(出典:富士通)
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 地方自治体では昨今、行政改革や団塊世代の退職によって、職員が減少している。一方で、内部統制の強化や少子高齢化、災害対策への対応など、業務の幅は拡大しており、既存業務の効率化が求められている。

 浜松市は、事務執行に必要な現金の支払前に金額や内容をチェックする支出業務の審査で、年間1万件を超える命令の差し戻しが発生していることを確認している。この作業負荷が課題となっていた。

 こうした課題を解決するため、富士通と共同で、富士通総研とPFUの協力の下、AIを活用する仕組みを構築した。浜松市の過去の支出命令伝票をAIに学習させることで、AIが請求書の検出や内容分析を行い、確認項目と不備を自動で検出する仕組みを開発した。

 実証実験は、浜松市役所において、2019年6月5日から2019年12月31日まで実施した。実験の結果、起票伝票と請求書の確認対象項目を、90%以上の精度で自動で検知できた。伝票起票部門での再起票や再決裁の業務が不要になるため、年間で約726時間の業務削減を見込める。

 これにより、会計課の出納審査グループの出納審査業務においても、年間で約4600件の不備伝票への対応が不要になる。年間約871時間の削減が見込めるため、支出業務に関わる市役所業務全体で見ると、合計で年間最大約1597時間の業務時間の削減につながる。

 浜松市は今後、検証環境で試験運用を行い、費用対効果を確認したうえで、導入を検討する。AIの活用によって、市民サービスの向上、職員の生産性向上を図っていく考えである。

 一方、富士通は、2020年度中に、公共団体向けソフトウェア「FUJITSU 自治体ソリューション IPKNOWLEDGE」に同機能を搭載する予定である。これにより、自治体業務の電子化運用の促進を支援する。

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