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マスターデータ標準化で全データを利用した管理会計を実現─三井住友銀行のデータ管理基盤刷新

2020年3月5日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

三井住友銀行が経営情報システム(MIS)を強化した。データドリブン経営の実現に向かう取り組みの中、マスターデータの品質向上が必須と判断。その仕組みを刷新した。2020年3月5日、JDMC主催の「データマネジメント2020」のセッションに登壇した同行 データマネジメント部 部長の宇賀神清徳氏が取り組みの詳細を説明した。

 三井住友銀行は、MIS(経営情報システム)を刷新した。マスターデータ管理を刷新し、マスターデータの品質を高め、経営情報として活用できるようにした。ある計数が、どの国のどんな事務から発生したのかを遡って辿れるようにした。これらを実現するため、計数データの品質を高める「計数標準化」と、顧客のビジネスを見える化する「顧客軸での情報管理」に取り組んだ。

写真1:三井住友銀行 データマネジメント部 部長 宇賀神清徳氏

 データマネジメント部の宇賀神氏(写真1)は、講演の冒頭、MISを刷新した背景を説明した。従来の銀行は、高金利が法律で保護されていたため、預金を集めることが経営だった。1980年代に預金利の時代から収益の時代に変わり、貸出金を増強することが収益を増やす手段になった。これを支えるのがMISだった。

 その後、金融危機を経て、信用リスクを計測するシステムが経営情報として必須となり、それまでのMISが陳腐化した。銀行の計数担当者は、手作業による計数集計に追われることとなった。EUC(エンドユーザーコンピューティング)も拡大し、マスターデータが各システムに分散することとなった。

 こうした経緯から、新しいMISが必要になった。信用リスクや海外業務計数などの全データを収集し、データの品質を維持し、これらのデータを経営情報として活用できるシステムが必要になった。

銀行のバランスシートを見える化する

 三井住友銀行が抱える拠点は、国内約2070カ所、海外約45カ所に及ぶ。管理計数として、預貸金が約192兆円、業務粗利益は約1兆4000億円、信用リスク資本は約2兆9000億円に及ぶ。

 預金や貸出金という取引の1つ1つが、そのまま銀行のバランスシートに蓄積されていく。銀行のバランスシートを見える化するということは、顧客の取引1つ1つを見える化することと同じである。

 また、経営情報である管理会計の見える化は、顧客の見える化である。顧客の見える化は、顧客のグローバルなリレーションの見える化である。ビジネスリレーションの見える化は、そこで働く従業員の見える化である。これを経営陣に伝えることが新たなMISの意義だと宇賀神氏は説く。

 経営環境が変化する中、管理会計を見える化するため、メガバンク3行はデータ管理部門を設置した。三井住友銀行は、2016年にデータマネジメント部を設立し、新MISに取り組み、現在に至っている。

計数標準化と顧客軸情報で管理会計を見える化

 管理会計を見える化するための解決策は、大きく2つあると宇賀神氏は指摘する。1つは、計数標準化(計数データの品質を高める)である。もう1つは、顧客軸情報(顧客のビジネスリレーションを見える化)である。

 計数標準化とは、個々の事業部門やプロダクトごとに管理・最適化されている計数情報を全社的に集約し、標準的な体系の下に整理し直すことを指す。経営情報システムで利用可能なデータとしての品質を維持し、これを提供する。

 三井住友銀行は、勘定系システムが3系統(国内、アジア、欧米)、業務系システムは約970ある。プロダクトや地域など様々なマスターデータが分散して存在しており、データの基準は統一されていない。こうした中、「これを見ればよい」というデータベースを作ることが、経営管理にとって重要だった(図1)。

図1:プロダクトや地域など様々なマスターデータが分散して存在しており、データの基準は統一されていない。こうした中、「これを見ればよい」というデータベースを作ることが、経営管理にとって重要だった(出典:三井住友銀行)図1:プロダクトや地域など様々なマスターデータが分散して存在しており、データの基準は統一されていない。こうした中、「これを見ればよい」というデータベースを作ることが、経営管理にとって重要だった(出典:三井住友銀行)
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