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[市場動向]

“部分最適の集合体”から“全体最適+個別最適”へ─2025年の崖は「IT部門自身の変革」の絶好機

「データ連携基盤の常設」から始めるデータドリブンなIT部門へのシフト

2020年4月27日(月)ユニリタ Waha! Transformerチーム

2018年に経済産業省の「DXレポート」で示された「2025年の崖」。政府機関としてのPEST分析(政治・経済・社会・技術の4側面からのマクロ環境分析)による問題提起と言われていますが、ミクロ環境にあるビジネス現場ではまだ具体的なアクションにつなげられた動きが見えてきていません。経営資源のヒト・モノ・カネに情報が加わってから数十年、日本のCIOや情報システム部門の使命・ミッションに基づいて「今なすべきことは何か?」のアプローチで考察してみます。
 

※本稿は、ユニリタ Waha! Transformerチームが執筆・公開している「CIO・情報システム部門にとって『2025年の崖』は、部分最適の集合体から全体最適・個別最適に変革する絶好の機会」の編集・転載許諾を得て掲載しています。

手段の目的化─DXレポートも示した、日本のIT業界が慢性的に抱える課題

 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の報告書「DXレポート」を読もうとすると、冒頭、「1.検討の背景と議論のスコープ」にいきなり違和感のある1文が現れます。

各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている。

 このDXレポートから得られる知見とは何でしょうか? 私たちはそれを「2025年の崖」の章で出てくる「データ活用」ととらえました(図1)。

図1:2025年の崖(出典:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会「DXレポート」)
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 この図で問題視されているのは「データ活用できない」ことであり、そのために合理的な経営判断や意思決定が下せないのであれば、データ活用のための基盤を担うCIOや情報システム部門(IT部門)は、問題解決以前にその存在価値を問われていると読み取ることができるのではないでしょうか?

そもそも、CIO/情報システム部門のミッションとは?

 「データ活用できない」という大問題への対策を考える上での共通認識として、CIOや情報システム部門に共通するであろう使命・ミッションを定義づけてみます。

正確な“情報”とその流通手段を迅速かつローコストでセキュアに提供すること

 これをかみ砕いて並べると以下のようになります。

▽組織内外の人々が
▽付与された権限に応じて
▽最新の情報も過去の情報も
▽いつでもどこでも簡単に
▽アクセスできる状態を
▽ローコストで提供し続けること

 DXレポートが提言してくれたのは、このようなミッションの遂行を阻害する要因やその対策でしたが、見方によってはその内容が末端の戦術論に寄っていることで、戦略的な視点がおざなりになってしまっているという評価を聞くことが少なくありません。

「全体最適に基づいた個別最適」はあっても「部分最適やサイロ」は許されない

 経産省のDXレポートに対して、ある経営者は辛辣な見解を述べています。

 「IT業界や情報システム部門は本当にモグラたたきが好きだよね。毎年、毎年新しいキーワードをひねり出してはお金を使わせようとするんだけど、いつも主観的で効果検証できないようなことばかりで、全然データドリブンではないし、結果的に部分最適で目先の作業をこなしているだけという印象を持ってしまう」

 この方の見解を要約すると、こんな図になると思います(図2)。

図2:DXは目的でもないし手段でもない(出典:ユニリタ)
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 合わせて思い出したのが、2000年代中頃に拝聴した、あるグローバル製造業の幹部の方による「経営ガバナンス」に関する講演でした。そこで紹介されていた経営ガバナンスの考え方は、グローバルHQ(本部)としての経営戦略(全体最適)に対し、経営資源ごと(個別最適)の財務戦略、人材戦略、マーケティング戦略、情報戦略があり、さらにそれが地域・国ごとのリージョンHQ/ローカルHQに受け継がれ、バックエンドからフロントエンドに対して戦略~戦術が繰り返される形で統治されているというものです(図3)。

図3:あるグローバル製造業の経営ガバナンス(出典:ユニリタ)
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 まるでMBAカリキュラムのケーススタディを見ているかのような統治機構図ですが、このように、普遍性のありそうな戦略論であっても競争優位を維持し続けられる理由として、その経営幹部の方は、「部分最適やサイロはどの組織にもあるが、それを受け入れない、あったとしても排除できる文化・風土が継続的な強さの源泉」と強調されていました。

 DXレポートで言及されているように、メインフレーム主体のスクラッチ開発にせよ、クラウド主体のアジャイル開発にせよ、あくまでも戦法論なのであって、それぞれで部分最適を作り続けることのほうが悪であり、断ち切らなくてはならない──そうとらえることができます。

 ほかにもその講演では、聴講者から「なぜこのようにシンプルな統治機構で収益を上げ続けられるのか?」という質問が出ました。それに対する回答は、「世界地図全体を網羅するようなリージョンそれぞれの地域性に配慮したグローカルやダイバーシティが企業文化として根付いているのでスキルの高い人材が各地からどんどん現れると共に、産業財と消費財というまったく異なる顧客層それぞれとの効果的なコミュニケーションなど、市場のとらえ方が複雑であればあるほど、経営ガバナンスはシンプルな方が浸透しやすいという考え方がある」とのことでした。

 さらに経営幹部の方は、「この統治機構は何かに似ていると思いませんか? 素人目に見ても、米国の連邦政府と州政府もこれに似たような統治機構になっているのではないでしょうか」と指摘。このコメントに会場が大きくどよめいていました。

●Next:今、なぜデータ連携基盤が欠かせないのか?

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※本稿は、ユニリタ Waha! Transformerチームが執筆・公開している「CIO・情報システム部門にとって『2025年の崖』は、部分最適の集合体から全体最適・個別最適に変革する絶好の機会」の編集・転載許諾を得て掲載しています。

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