[調査・レポート]

DX推進指標の2021年版分析結果を公開、前年より平均値が微増し、DX未着手の企業は2割─IPA

2022年8月22日(月)神 幸葉(IT Leaders編集部)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2022年8月17日、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」の2021年版を公開した。調査結果からは、小規模企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が本格化するなど企業規模を問わず、DX推進が進む企業が増加傾向にある一方で、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上、DX推進未着手の企業は2割存在していることが明らかになった。

2021年はDX推進指標に486社が参加、前年を大きく上回る

 情報処理推進機構(IPA)が、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」の2021年版を公開した。2019年からスタートし、今回が3回目となる。2021年の有効な診断企業数は486社(うち個人事業主6件)で、2020年の305社を大きく上回った。(関連記事DXへの取り組みは経営層の危機感が左右する? ─IPAがDX推進指標の分析結果を公開)。

 DX推進指標は、経済産業省とIPAが実施しているデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの進捗や成熟度を測るための指標で、企業が、自社の領域ごとの取り組みの状況や全体のレベルを自己診断型で把握することができる(表1)。

表1:成熟度レベルの基本的な考え方(出典:情報処理推進機構「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート2021年版」)
拡大画像表示

 同指標は、DXを推進する際に企業が押さえるべき事項から、下記の2つの視点から構成されている。

●経営視点指標:DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
●IT視点指標:DXを実現の上で基盤となるITシステム構築に関する指標

 両指標とも定点・定性指標で示されている。定性指標においては、DX推進の成熟度が0から5の6段階で評価。成熟度の大まかな目安は、レベル0「未着手」、レベル1「一部での散発的実施」、レベル2「一部での戦略的実施」、レベル3「全社戦略に基づく部門横断的推進」、レベル4「全社戦略に基づく持続的実施」、レベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」である。

 2021年の結果を見てみると、全企業における成熟度の平均値は1.95で、2020年の1.60から0.35ポイントの微増となった。DX推進指標では、成熟度の平均値が3以上の企業を「先行企業」としており、今回の調査では486社中86社(17.7%)が当てはまった。この割合は、2020年の8.5%から2倍、2019年の4.4%から4倍である。

一方で、レベル3未満の企業は400社あり、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上存在していることを示している。DX未着手の企業も前年度よりも減少したものの2割を占める結果となった(表2)。

表2: 経年における現在値の平均と企業数、割合(出典:情報処理推進機構)
拡大画像表示

経営面とIT面、それぞれの取り組みの進捗

 全企業における現在値の平均は、前年同様、経営視点指標(定性)よりもIT視点指標(定性)の方が高い結果となっている。

 図1は経営視点/IT視点指標の現在値上位を示したものである。経営視点では、「危機感とビジョン実現の必要性の共有」は全指標で2番目に現在値の成熟度レベルが高い。一方で、「評価」は、キークエスチョンである「マインドセット、企業文化」や他のサブクエスチョンの指標と比較して成熟度レベルが低く、「DXによる成果の評価に関する戦略の整備が不十分の可能性がある」とIPAは分析している。

また、人材に関する項目では現状の課題が浮き彫りとなった。「技術を支える人材」の現在値1.63に対し、「人材確保」の現在値は2.24。この結果についてIPAは、「IT部門は設置されているものの、人材のプロファイルや数値目標の整備が追いつかない、もしくはそれらの定義が難しいことを示唆している」とした。

 一方で、IT視点指標(定性)の傾向は、「IT資産の分析・評価」の現在値の成熟度が2.20であり、「ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築」および、そのサブクエスチョンの指標の中で最も高かった。IPAは、「診断企業を平均的に見るとITシステムの全体像の把握は比較的進んでいる状況」としている。また、「プライバシー、データセキュリティ」は他の指標と比べて現在値の平均が高く、それらの重要性から他の指標よりも優先的に取り組まれている」とIPAは見ている。

図1:経営視点/IT視点指標の全体的な傾向(出典:情報処理推進機構)
拡大画像表示

小規模企業でも本格的なDX推進の兆し

 図2は、各指標の現在値の平均を企業規模別に示したものだ。大規模企業(従業員数1000人以上)は、ほぼ全指標の現在値で有意差があり、中規模企業(同100人以上1000人未満)や小規模企業(同100人未満)とは異なる傾向となった。

 中規模企業と小規模企業の比較では、例年は、中規模企業が全指標の成熟度が高い傾向があったが、今回の調査では有意差は認められず、小規模企業の成熟度のほうが高い指標も一部ある。このことをIPAは、「小規模企業がDXに向けて本格的に取り組み始めた状況」と見て、以下のように分析している。「DX を進めるためには経営者の意識や行動が重要であるが、従業員数が少ない企業では経営者と事業の距離が比較的近く、企業の仕組みも比較的変えやすいため、DXも比較的進めやすいと思われる」。

 ただし、小規模企業は「評価」「バリューチェーンワイド」などの現在値が低い。IPAは、「小規模企業にとってプロジェクト評価、人事評価、ビジネスモデル策定は難しいまたは必要性が低いと認識している可能性がある」としている。

 企業規模を問わず現在値が低いのが「事業部門における人材」の指標だ。IPAは、「事業部門におけるDX人材のプロファイルや数値目標などの戦略整備に遅れが見られる。同部門にはITや経営も理解した人材が重要であり、DX人材の獲得や育成をすることが望まれる」と人材面での強化を促している。

図2:企業規模別における現在値の平均(出典:情報処理推進機構)
拡大画像表示

●Next:中小企業、先行企業、DX認定企業のDX推進状況は

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

IPA / DX推進指標 / デジタルトランスフォーメーション / 組織変革 / 新型コロナウイルス / DX認定制度

関連記事

トピックス

[Sponsored]

DX推進指標の2021年版分析結果を公開、前年より平均値が微増し、DX未着手の企業は2割─IPA独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2022年8月17日、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」の2021年版を公開した。調査結果からは、小規模企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が本格化するなど企業規模を問わず、DX推進が進む企業が増加傾向にある一方で、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上、DX推進未着手の企業は2割存在していることが明らかになった。

PAGE TOP