[市場動向]

「Azureから使えるOracle DBを“ファーストパーティ”体制で届ける」─マイクロソフトとオラクルがマルチクラウドで提携拡大

2023年3月14日(火)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

マイクロソフトとオラクル──かつてライバルのイメージが強かった、IT業界を代表する両社は近年、共創の関係にある。2019年6月にMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructure(OCI)の相互接続が始まり、2022年7月にはオラクルが「Oracle Database Service for Microsoft Azure」をリリースするなど、企業の大規模なワークロードを両社のパブリッククラウド上でシームレスに動かせるようにする取り組みが進んでいる。そして先頃、国内でもAzureからOCI上のOracle Databaseを利用可能にするサービスの提供が始まった。両社の提携拡大は、国内の顧客企業にどんなインパクトをもたらすのだろうか。

「Azureから使えるOracle DB」の特徴と提供理由

 まずは、「Oracle Database Service for Microsoft Azure」サービスのアウトラインを確認しておく(図1)。2019年から始まったMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructure(OCI)の専用線による相互接続「Oracle Interconnect for Azure」のコア機能に基づいて構築されており、AzureユーザーがOCI上で稼働するOracle Databaseサービスにアクセスして利用できるようにする。

図1:Oracle Database Service for Microsoft Azureの概要。2019年から提供するAzureとOCIの専用線相互接続をベースに、AzureユーザーがOracle DBの各種サービスをシームレスかつセキュアに利用できるようにする(出典:日本オラクル)
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 つまり、Azureユーザーは使い慣れたAzureポータルからOracle DBへのアクセスやプロビジョニングを実行できるほか、Oracle DBをオンプレミス同様の構成で利用できる「Base Database Service」、高負荷なワークロードに最適化された「Exadata Database Service」、Oracle Databaseのフルマネージドサービス「Autonomous Database」といったOCIが提供する各種データベースサービスも利用可能となる。

 AzureとOCIが専用線で相互接続されているので、ユーザーがAzure/OCI間のネットワーク設定を行う必要はなく、ユーザー連携も自動で設定される。もちろん、両IaaS間のデータ転送やポートに対して費用はかからない。また、マルチクラウド連携ではレイテンシー(遅延)が大きな懸念事項となるが、両IaaS間ではレイテンシー2ミリ秒以下を達成している。

写真1:日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏

 日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏(写真1)によると、2019年の提携以来、すでにグローバル12リージョンで300社以上の大規模ユーザーが両社のマルチクラウド環境を利用しているという。「特に基幹システムのリフト案件が多いが、十分にそのニーズに対応できていると思う」(竹爪氏)と両社のマルチクラウド連携によってもたらされた功績を強調する。今回のデータベースサービスの提供拡大に伴い、顧客のマルチクラウド環境におけるコスト削減とアジリティの拡大(迅速な環境構築)に大きく貢献できる──というのがオラクルの狙いだ(図2図3)。

図2:2019年の専用線相互接続の開始以来、グローバルで12リージョン/300社以上のユーザー企業が利用している。マルチクラウド間のレイテンシーは2ミリ秒以下という(出典:日本オラクル)
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図3:AzureとOCIの連携は、マルチクラウドにおける「コスト削減」と「アジリティ拡大」に大きな効果があると日本オラクルの竹爪氏は強調する。顧客からは両社のサポートが統合されて見える“ファーストパーティ”体制も強みとなるという(出典:日本オラクル)
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 今回の提携拡大でもう1つ注目したいのはサポートの提供体制だ。竹爪氏は日本の顧客に対しては「日本マイクロソフトおよび日本オラクルのどちらもが“ファーストパーティ”としてサポートにあたる」と話す。つまり、顧客が両社あるいはパートナー企業のいずれかにサポートを依頼しても、協業サポートモデルに従って両社で問題を切り分け、速やかに解決にあたっていくことを約束するという。

写真2:日本マイクロソフト 執行役員 乗務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏

 マルチクラウドの活用にあたってはサポート体制が課題となることも多いが、同サービスではユーザー側が問題の特定やサポート範囲の切り分けに要する手間と時間を削減できる点もメリットとなっている。「両社には共通の顧客も多い。AzureやOracle DBの高いスキルを持つエンジニアをワンストップで活用できることは、他社クラウドとの連携にはない強みとなる」(日本マイクロソフト 執行役員 乗務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏、写真2

 竹爪氏は、Oracle Database Service for Microsoft Azureにより、AzureとOCIのメリットを生かした事例/ユースケースが日本でも数多く生まれることを期待している。特に、Microsoft Power BIなどのデータサービスとOracle DBの組み合わせで大量のデータからインサイトを迅速に獲得する情報系の事例に期待をかけている。「また、オンプレミスからのリフト&シフトのユースケースもさらに強化できると考えており、Azure上でアプリを動かしながらOracle DBを使いたいという顧客のニーズを広範にカバーする」(竹爪氏、図4

図4:Oracle Database Service for Microsoft Azureでは、Power BIなどAzureのデータサービスとOracle DBの組み合わせや、オンプレミスのOracle DBのAzure移行などのユースケースが期待されている(出典:日本オラクル)
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●Next:マイクロソフトとオラクルの“ハイパースケーラー連合”は、ユーザーにどんな価値を提供する?

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