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[市場動向]

NTTデータ、既存データセンターで使えるラックユニット型の液浸冷却システムを構築

2023年度中に自社データセンターの実環境に適用

2023年6月16日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NTTデータは2023年6月16日、「ラック型液浸冷却システム」を三菱重工業と共に構築したと発表した。サーバーなどのIT機器を液体の中で直接冷却する液浸冷却システムを、既存のデータセンターで活用可能なラック型で実現した。IT機器に合わせて小型槽をラック内に複数配置する仕組みである。実証実験では、冷却にかかるエネルギーを従来のデータセンター(PUE1.8相当)と比較して92%削減した。これらの結果を踏まえ、2023年度中に同冷却システムを自社データセンターの実環境に適用する。

 NTTデータは、「ラック型液浸冷却システム」を、三菱重工業と共に構築した。サーバーなどのIT機器を液体の中で直接冷却する液浸冷却システムを、既存のデータセンターで活用可能なラック型で実現した。IT機器に合わせて小型槽をラック内に複数配置する仕組みである(写真1)。2023年度中に、同冷却システムを自社データセンターの実環境に適用する。

写真1:液浸冷却システムをラック型で実現した「ラック型液浸冷却システム」の様子(出典:NTTデータ)
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 実機での検証は、2023年3月から5月にかけて「三鷹データセンターEAST」で実施した。この結果、冷却にかかるエネルギーを、従来のデータセンター(PUE1.8相当)と比較して92%削減した。さらに、液浸冷却では一般的な「タンク型液浸冷却システム」の課題である運用性が173%向上することを確認した。

 タンク型の液浸冷却システムは運用性が悪いことから開発した。NTTデータは2022年度にタンク型の液浸冷却システムを検証し、空冷比でエネルギーを97%削減できることを確認済み。しかし、タンク型には、格納するIT機器のメンテナンスに複数の作業員の対応が必要で、なおかつ時間がかかるという構造上の課題がある。また、既存の空冷システムの運用手順に沿わない点が多いことから、独自のオペレーションを策定する必要がある。

 新たに構築したラック型液浸冷却システムの最大の特徴は、IT機器に合わせて小型槽をラック内に複数配置するスタイルを採用していること(図1)。19インチラック単位で導入可能であり、空冷システムの運用基準におおむね準拠した形で運用を始められる。このため、タンク型液浸冷却システムに比べて、既存データセンター設備への導入適応性が高い。

図1:ラック型液浸冷却システムは、ラック全体ではなくユニット単位で運用可能。同一ラック内に、空冷システムと液浸冷却システムを混在させられる(出典:NTTデータ)

 導入時のもう1つのメリットは、冷却効果が高いため、発熱が大きい高性能な機器を選定可能になること。実証では、CPUとGPUの負荷がともに100%の場合でも、冷媒の運用温度は摂氏30度から40度付近を維持できていた(冷媒の運用温度もコントロール可能)。冷却に使うエネルギーも、従来のデータセンター(PUE1.8相当)と比較して最大92%削減できている。

 運用・保守のしやすさについては、IT機器をラック全体ではなくユニット単位で運用可能である。メンテナンス時には特別な装置(クレーンなど)を必要とせず、作業者のオペレーションが容易になる。機器の設置や取り外しにかかる時間は、1Uサイズのラックマウント型機器の場合、それぞれ5分以内で済むとしている。

 NTTデータによると、今回構築したラック型一相式の液浸冷却システムは、これまで同社が運用していた空冷でのオペレーション手順項目の約7割を、ほぼ修正することなく活用できる。これに対してタンク型の場合、従来のオペレーション手順の約8割近くの項目を修正する必要がある。このような結果から、ラック型を導入した場合、タンク型の課題である運用性が約173%向上する。

 積載の自由度も高い。同一ラック内に、空冷システムと液浸冷却システムを混在させられる。発熱性の高いサーバー機器(液浸対応)や、低負荷のネットワーク機器、ストレージ機器(液浸非対応)を同一ラックに収めるなど、ラックユニット単位で異なる冷却システムをハイブリッドに活用可能である。同一ラック内に、1U換算で最大22台程度、2U換算で最大16台程度設置できる。

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