[市場動向]

「量子暗号ネットワークテストベッド」を試験運用、企業間でデータを安全に送受信─NICTなど5社

NICTの量子鍵配送網「東京QKDネットワーク」上に構築

2023年12月19日(火)IT Leaders編集部

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、野村ホールディングス、TOPPANデジタル、大和証券グループ本社、みずほフィナンシャルグループは2023年12月18日、NICTの量子鍵配送ネットワーク「東京QKDネットワーク」上に構築した「企業間量子暗号ネットワークテストベッド」の運用試験を開始すると発表した。データの送受信やバックアップ保管などの安全な運用を検証する。運用試験を通じて、量子暗号ネットワークを共通基盤として活用する際の課題を抽出し、金融・医療などにおける量子暗号技術の効果的な活用・運用の知見を獲得する。テストベッドを容易に利用できるように改良しながら利用者の拡大を目指す。

 情報通信研究機構(NICT)、野村ホールディングス、TOPPANデジタル、大和証券グループ本社、みずほフィナンシャルグループの5組織は、NICTの量子鍵配送ネットワーク「東京QKDネットワーク」上に構築した「企業間量子暗号ネットワークテストベッド」の運用試験を開始する(図1)。

図1:企業間量子暗号ネットワークテストベッドの構成(出典:情報通信研究機構、野村ホールディングス、TOPPANデジタル、大和証券グループ本社、みずほフィナンシャルグループ)
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 データの送受信やバックアップ保管などの安全な運用を検証する。運用試験を通じて、量子暗号ネットワークを共通基盤として活用する際の課題を抽出し、金融・医療などにおける量子暗号技術の効果的な活用・運用の知見を獲得する。テストベッドを容易に利用できるように改良しながら利用者の拡大を目指す。

 取り組みの背景について次のように説明している。「重要情報がデジタル化されてデータセンターなどに半永久的に保存され続ける時代になり、これらの情報がサイバー攻撃の対象になっている。現時点で被害に至らなくても、攻撃者が一部のデータを窃取・保存し、将来、高度な演算技術が実現されたときに過去に遡って全データを解読するような脅威が現実のものになっている。また、予期せぬ災害で重要情報が消失する事案もある」(5組織)

 NICTらは、暗号解読技術が年々高度化する一方で、秘匿すべきデータであっても複数の企業や組織間で共有し、新技術の開発やビジネス創出につなげる動きが加速していると指摘。「将来の解読に脅かされることのない安全性を備え、かつデータ消失の危険も少なく、安心してデータを流通・保管・共有・活用できるセキュリティシステムが求められている」という。

 こうした状況を受けてNICTは、2010年に安全な鍵供給が可能な量子鍵配送ネットワークとして東京QKDネットワークを構築。加えて、重要情報を安全に長期保管して活用する仕組みとして、同ネットワーク上に秘密分散技術を採用した「量子セキュアクラウド」を開発し運用している。

 今回、複数の企業拠点を結んで東京QKDネットワークを拡張すると共に、量子着想型コンピュータを採用して「企業間量子暗号ネットワークテストベッド」を整備。運用試験で複数の企業で連携・活用する際の課題を抽出する。その際、既存のインフラとの親和性や責任分界点のバランスなどの設計も検証する。

 運用試験を通じて、金融・医療など民生領域における量子暗号技術、量子セキュアクラウド技術の効果的な活用・運用に関する知見を獲得・蓄積していくと同時に、テストベッドを容易に利用できるように改良しながら利用者の拡大を目指す。

 将来的には、高いセキュリティレベルを確保したデータセンターネットワーク技術に発展させ、各企業・組織がセキュリティコストを抑制しながら、長期秘匿化が必要な重要情報・データを安全に活用できる環境の実現を目指している。

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