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堺市とトヨタ、119番通報からの消防対応に現場付近の車載映像を活用する「消防ドラレコ」を検証

2024年4月5日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)

トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市)と大阪府堺市は、交通事故などの緊急を要する事案に対し、現場付近を走行する車両のドライブレコーダー映像を活用して現場の状況を把握する実証実験を行っている。AWS上に「消防向けドラレコ映像活用システム(消防ドラレコ)」をトヨタが開発した。アマゾン ウェブ サービス ジャパンが2024年4月5日、同社のブログで発表した。

 トヨタ自動車と大阪府堺市は、交通事故などの緊急を要する事案において、現場状況を正しく把握するため、現場付近を走行する車両のドライブレコーダー映像を活用する実証実験に取り組んでいる。現在、堺市消防局管内を走るバスやトラックなど約400台に搭載したドライブレコーダーの映像を活用している。

 取り組みの背景を次のように説明している。「119番通報は、災害現場に直面して心理的に余裕がない人からの通報も多く、通報からは現場の状況を正しく把握できないことがある。この結果、消防隊が現場に到着してから、緊急車両を追加で出動したり、装備を見直したりするケースも発生する」。

図1:消防向けドラレコ映像活用システムにおける業務の流れ(出典:トヨタ自動車)
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 実証実験では、トヨタが開発した「消防向けドラレコ映像活用システム(消防ドラレコ)」を、Amazon Web Services(AWS)上に構築して運用している。消防指令センターのオペレーターは、119番通報だけでは現場状況の把握が難しい場合、付近を走る車両のドラレコ映像を活用する。実際の業務の流れは、図1のとおりである。

  1. 119番の通報内容から消防指令センターのオペレーターが事故などの発生場所を特定
  2. 消防指令センターのオペレーターが現場の映像を必要とする事案かどうかを判断
  3. 現場の映像が必要と判断した場合、システムを使って事案発生地点を検索
  4. GPS情報を利用し、付近を走行するドライブレコーダー装着車両を選定
  5. 対象車両のドライブレコーダー映像を取得
  6. 消防指令センターでドライブレコーダー映像を確認し、迅速で適切な対応につなげる

 システムの開発プロセスは、短い期間でMVP(Minimum Viable Product:最小限の実装)を開発した後、頻繁にシステムの改修を行いユーザーからのフィードバックを得るリーン開発で進めたという。

 システムアーキテクチャは、機能改修のリードタイムを短縮するため、サーバーレスを採用。コンピュートにAWS Lambda、データベースにAmazon DynamoDBを利用する。バックアップなどの非機能要件については、AWSの各種マネージドサービスを活用している。エラーや障害についても、Amazon CloudWatchとAWS Chatbotを使って社内のチャットツールに通知している(図2)。

図2:消防向けドラレコ映像活用システムのアーキテクチャ(出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 映像データにおける情報プライバシーへの配慮として、映像データを暗号化してAmazon S3に保管し、Amazon S3のライフサイクルルールを活用して保管期限が過ぎたら自動的に削除する仕組みを構築。DynamoDBでは、保管期限が過ぎた項目を自動的に削除する有効期限(TTL: Time to Live)を設定している。

 運用面では、堺市消防局は映像を保存せず、専用端末から一時的に閲覧する形にしている。また、消防局から閲覧要望のあった地点・時間のドラレコ映像のみを提供するほか、映像に映り込んだ人物や車両への個別の追跡や、その行動・移動の傾向などの分析を禁止している。

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