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モバイル時代の企業ITは、BPMとルールベース、SOAが鍵を握る

2013年5月7日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

米IBMのWebSphere事業部門が「モバイル最優先」を訴えるカンファレンスを開催した。といっても、単にモバイルデバイスの活用を提唱したわけではない。モバイル時代の企業情報システムのアーキテクチャや、システムの構成要素をあの手この手で伝えようと意図していた点で意義深い内容だった。

M2MあるいはIOT(Internet of Things)を含めたモバイルの浸透・広がりは、企業の情報システムやビジネスプロセス、そして事業の成否に大きな影響を及ぼす──。4月末から5月はじめに米国ラスベガスで開催した「Impact2013」において、IBMはこの事実を同社流のセオリーとともに様々な事例や製品を通じて示した。

同社は今年2月に「IBM MobileFirst」というコンセプトを提唱。開発から管理、セキュリティ、データ分析までを含めた「IBM MobileFirst Platform」と呼ぶソリューションの提供を開始した。Impact2013ではさらに深掘りし、”モバイルファースト”を具現化する企業情報システムのアーキテクチャや、必要なミドルウェア製品群を提示した。

Impact2013のテーマは「Business. In Motion.」。「ビジネス(経営、事業)を駆動する」、もしくは「ビジネスに機動力をもたらす」といった意味だが、モバイルという言葉を直接的に使っていないところにIBMのこだわりが見て取れる。モバイルそのものの重要性はさておき、企業としてモバイル時代に適応し、情報システムを進化させようといったニュアンスを汲み取れるのだ。

ではIBMがいう「モバイル時代の企業システム」は、どんなアーキテクチャなのか。Impact2013における初日、2日目の基調講演から、それを紐解いてみる。

1日目の基調講演、「車は走るデータセンターである」

初日の基調講演の冒頭を飾ったのは、IBMの事業責任者やゲストスピーカーではなく、フォード製の自動車「フュージョン(モンデオ)」だった(写真1)。

写真1:フォード製の自動車「フュージョン(モンデオ)」

その車の前で、フォード社のアプリケーション開発ディレクタであるビジェイ・サンカラン氏とIBMの上級副社長であるロバート・ルブラン氏が対談(写真2)。

写真2:フォードのビジェイ・サンカラン氏(左)とIBMのロバート・ルブラン氏

「車は今や走るデータセンターだ。1600万行のコードと70のプロセサ、多数のセンサーを搭載している。我々は車のR&Dのやり方を、再考する必要があった」(サンカラン氏)、「同意する。自動車業界に限らず、我々は目まぐるしく変化する消費者の期待に応えるために、製品の特徴や機能を(ソフトウェアを使って)再発明(Reinvent)しなければならない」などと、語り合った。

 

車がデータセンター、つまりインテリジェントなモバイルデバイスになる中で、フォードが再検討したのは車のR&Dだけではない。どんなサービスをどう提供するかの鍵を握るバックエンドのアプリケーションが重要だったという。「半分冗談だが、金融関係者なら運転中に株を買いたいと思うかも知れない。都市交通とつなげ、渋滞あれば適切な駐車場をガイドし、電車に乗り換えるような体験も求められるかも知れない。そのためには車というデバイスを前提に、アプリケーションを構成しなければならない」(サンカラン氏)。

モバイルファーストなど5つの原則

 

対談後、ルブラン氏は「劇的な変化が今、進行している。日々2500兆バイトのデータが生成され、若者の83%がソーシャルを使っている。世界では96億台のデバイスがネットに接続され、2020年には200億台を超える。それが企業のエコシステムに、どんな影響を与えるのかを考える必要がある」と力説。その上で、モバイル時代の情報システムを写真3のように「システム・オブ・インタラクション」と定義した。

①ソーシャルやモバイルから成るシステム・オブ・エンゲージメント(結びつけるためのシステム)、②CRMやERPなどで構成されるシステム・オブ・レコード(情報の処理と管理のシステム=既存の情報システム)、③IOT(Internet of Things)を構成要素とする。

写真3:今後、求められるであろう新しいタイプの企業IT

いささか分かりにくいが、同氏は「財務システムだろうと、自動車のようなデバイスだろうと、保険のシステムだろうと、最終的には顧客とのエンゲージメントを目指す必要がある。だから記録中心の伝統的なシステムを生かしながらも、我々はこれまでとは全く違うシステムを創ることになる」と補足した。

必然的に既存システムの見直し・刷新が必要になるという。「モバイルのユーザーは一貫した使い勝手のいいアプリを求める。待たせずに、かつ入力を最小限にしながら、エンドツーエンドでインタラクションできるアプリケーションが必要だ」(同)。それを実現するにはモバイル側ではなく、例えば銀行なら勘定系システムで対応しなければならない。モバイル時代にはトランザクション量が大幅に増加し、サービス(稼働)の24時間対応も必要になるという。

その上で、システム・オブ・インタラクションを具現化するのに欠かせない、5つの原則を挙げた(写真4)。ちなみにこの5原則は、初日の基調講演のスケルトン(骨格)でもある。

写真4:システム・オブ・インタラクションを具現化する5つの法則
  • ①モバイルを(情報システム戦略の)最優先に位置づける
  • ②顧客中心でビジネスを設計し、プロセスを作り直す
  • ③社外(モバイル)と社内(バックエンド)を柔軟かつセキュアに統合する
  • ④データによる洞察とデータ駆動を重視する(アナリティックスやルール)
  • ⑤変化に対応するためにオープン・アーキテクチャを採用する

言うまでもなく、①は顧客や消費者はもちろん社員やパートナーを含み、②はモバイルやソーシャルを前提にプロセスを設計すべきことを意味する。③はその手段だが、統合すること以上に「エンドツーエンドで、社外と社内で利用できるシステムを区別しないことが求められる」(ルブラン氏)という。④は共通認識となりつつある「データが価値を生むという事実をしっかり認識すべき」という主張だ。⑤に関してルブラン氏は「オープン・アーキテクチャ、特にオープンクラウド・アーキテクチャを重視しなければならない」と語っていることから、Amazon Web Servicesやsalesforce.com、Googleなどプロプライタリ色のあるクラウドサービスを牽制したものと考えられる。

モバイル時代の企業ITは、BPMとルールベース、SOAが鍵を握る米IBMのWebSphere事業部門が「モバイル最優先」を訴えるカンファレンスを開催した。といっても、単にモバイルデバイスの活用を提唱したわけではない。モバイル時代の企業情報システムのアーキテクチャや、システムの構成要素をあの手この手で伝えようと意図していた点で意義深い内容だった。

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