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[市場動向]

IT戦略を投資家に開示せよ!経産省が「攻めのIT」加速に向け新施策

2014年10月7日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

攻めのIT投資を増やすには、経営トップの認識や理解が欠かせない。そこで投資家への情報開示を通じて、経営者の意思改革を促す−−。経済産業省がこんな施策を推進中だ。2015年度初めには、「IT銘柄」を選定し公表する計画である。

写真:セミナーが2014年10月初めに都内で開催された写真:セミナーが2014年10月初めに都内で開催された
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 IT活用やIT投資を促進するには、経営層や事業部門トップのITに対する認識や理解が必要だ。そのためには、何をすればいいか−−。こうした、多くのCIO(Chief Information Officer)やIT部門にとって共通の問題(悩み)に対し、経済産業省が新たな施策を打ち出そうとしている。2014年10月初めに都内で開催したセミナーで明らかにした(写真)。

 施策の骨子は、IT戦略やIT活用状況をIRなどで開示するよう、企業を仕向けること。投資家や株主による企業評価の一端にIT戦略を加えれば、経営層も意識せざるを得なくなる。つまり市場を通じて意識改革を促す作戦である。

 「今求められる攻めのITは、投資対効果(ROI)を算定しにくいチャレンジングなもの。それだけに投資を躊躇しがちだ。だが逆に企業が攻めのITについて対外的に情報発信し、投資家が評価するようになれば企業価値が高まる。企業にとってもメリットがある」。施策を主導する経産省情報処理振興課の野口悟課長は、施策の趣旨をこう話す。

 実のところ、これには先例がある。経産省が東京証券取引所と組んで実施する「なでしこ銘柄」だ。2012年から両者は、女性が働き続けるための環境整備や女性の登用に積極的な企業を選定し、公表している。選ばれた企業をなでしこ銘柄と呼び、投資家に投資先を選ぶ際の材料の1つにしてもらう。結果、経営層は女性活用を意識せざるを得ない仕組みである。

 今回の施策はそれに倣って「IT銘柄」を選定し、株式市場などの評価を通じて経営層のITへの関心を高めることを目指す。必要性や論理を説いて経営層の理解を得るのが王道とすれば、かなりの変化球である。しかし、ある製造業のシステム部長は、「財務や人事、製品、顧客などカバレッジが非常に広い経営層にとって、難解なITは敬遠されがち。関心を持ってもらうきっかけとしては、そういうやり方もある」と、この施策を評価する。

 IT銘柄を評価するため指標は、日本情報システムユーザー協会(JUAS)内に設けられた「攻めのIT投資評価指標」策定委員会が策定中。委員長である伊藤邦雄 一橋大学大学院商学研究科教授は講演で、「来年度初めには指標に基づいて攻めのIT企業30社程度を選定し、公開したい」と語った。

 なお、この取り組みの背景にある問題意識は、IT投資を増やしたいとか、株式市場を活性化させたいといった、そんな単純なものではないという。伊藤教授は講演の中で、自らとりまとめた「伊藤レポート」」に言及し、次のように述べている。

 「日本企業の生産性や収益力が世界の中でも低いことは数字が示している。持続的成長に向けた競争力確保の観点から、攻めのIT投資が必要だ。ただしITが肝心なのではない。セブン&アイなどはIT経営ではなく、”究極の接客”と言っている」

評価指標はまだ改良の余地あり?

 では「攻めのIT投資」の定義や「評価指標」とは、どんなものか。前者については、新規事業の進出時に新たな価値を創出するIT投資と、既存ビジネスの強化により利益を拡大するIT投資の2つを例として挙げる(図1)。

図1:攻めのIT投資の定義図1:攻めのIT投資の定義
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 読者は、これをどう見るだろうか?筆者は「一定の納得感はあるものの、まだ弱い」と感じた。例えば、米GE(General Electric)は発電機やエンジンの販売という「モノ売り」から、それらのサービスとして提供する「コト売り」へと転換する策を推進している。GEは稼働監視から故障予知や修理を担うことで、機器の稼働というサービスを提供する。これは「既存ビジネスの強化」や「新規事業の進出時の価値創出」ではなく、「既存ビジネスの変革」だと考えられる。

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