[海外動向]

産業分野のAndroid/iOSを目指す、米GEがIoT基盤の外部提供を発表

2014年10月15日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

製造業をはじめ、航空運輸などのサービス業を中心に多くの企業が否応なしに対応しなければならない概念として急浮上しているIoT(Internet of Things:モノのインターネット)。そのトップランナーの1社であり、「Industrial Internet(産業機器とITの融合)」を提唱する米GE(General Electric)が2014年10月初め、Industrial Internetに関連する40の案件から2014年中に10億ドル以上の売り上げが見込めると発表。自社開発したIoT基盤「Predix」を、2015年には広く外部に提供するとも表明した。IoTが本格化する中で、日本が強みを持つはずの産業用機器分野でも米国のフォロワーになるのか、その岐路に差し掛かっている。

 「Industrial Internet(産業機器とITの融合)」は、ネットワーク接続されたセンサーやソフトウェアにより、複雑で高度な機器や設備を統合する概念である。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やM2M(Machine to Machine)、ビッグデータ、機械学習などの要素を含むが、基本はセンサーデータを収集して処理・分析し、機器や設備を監視・制御することだ。

 GEの発表によれば既に、140万の医療機器と2万8000基のジェットエンジンを含む総額1兆ドルのアセット(設備や機器)に対し、1000万のセンサーを取り付け、日々5000万件のデータを収集し、分析している。これによりアセットを効率よく安全に稼働させ、同時に予期しないダウンタイムを最少にしているという。

図1:米GEの「Predix」の概念図1:米GEの「Predix」の概念
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 その原動力は、装置産業が保有する設備や機器から最大限の価値を引き出す「APM(Asset Performance Management:アセットパフォーマンス管理)」にあるという。APMの実現に向けて、Industrial Internetのための基盤ソフトウェアとなる「Predix」を自社開発した(図1)。

IoTのためのOSとなる「Predix」とDBの「data lake」

 Predixは、プラットフォームと言うと分かりにくいが、要するにIndustrial Internetを実現するためのクラウド用コンピュータのOSである。Predix上に「data lake」と呼ぶストリームデータを収集・蓄積・分析するデータベース機能があり、その上で「Predictivity solutions」と呼ぶ用途別のアプリケーション群を稼働させる。

図2:大量のストリーミングデータを蓄積する「Data Lake」図2:大量のストリーミングデータを蓄積する「Data Lake」
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 data lakeは同社が出資する米Pivotalと共同開発したもの(関連記事)。大量のストリーミングデータを蓄積する(図2)。例えば現在、300万件のフライトデータを合計340テラバイトを蓄積。処理速度も、1カ月かかるものが20分で済むなど、従来の方法に比べ「2000倍高速で10倍安価にデータを処理できる」としている。「インサイト(洞察)を引き出すために開発した」(GE)という。

 Predictivity solutionsは、ジェットエンジンや、ガスタービン、医療機器、鉄道車両といった設備や機器別の分析アプリケーション群である。例えば、機器を監視し、異常の有無やメンテナンスの時期を知らせる機能を持つ。「航空機のジェットエンジンは埃を吸い込むし、放置すれば腐食も起きる。洗浄などメンテナンスを怠れば燃費が悪化するが、洗浄にはコストがかかる。Predictivity solutionsを使うことで、いつ洗浄すべきかが分かる」(GE)わけだ。

 冒頭で示した「10億ドル以上の売り上げ」は、これらアプリケーションの効果を積み上げたものだ。発表文には2つの事例が掲載されている。マレーシアの格安航空会社のエアアジアが、その1社。GEの「Flight Efficiency」サービスにより1000万ドルの航空燃料代を節約、2017年には3000万ドルを節約できる見込みという。「わずか1%の節約でも、積もれば巨額になる」(エアアジア)。

 もう1社が、欧州の大手エネルギー会社である独E.ON。GEの「Wind PowerUp」サービスにより、風力タービン283基の発電量を4%増加させ、年間で40ギガワット時(米国の4000世帯をまかなえる電力量)を、同じ設備で発電することに成功している。

 GEは、このPredixを2015年には、同業を含めた他社が使えるようにオープンにする計画だ。GE AviationのCTOであるDave Bartlett氏は、Predixとそのオープン化について、次のように説明する(関連記事)。

 「プラットフォームは多くが使うほど価値を持つ。つまり顧客やパートナーがアプリケーションを開発すれば成功に近づく。これがPredixを外部に提供する理由だ。GEはPredixを産業分野におけるAndroid、あるいはiOSのような存在にしたいと考えている。Industrial Internetにおける共通言語にしたいのだ。その用途に制約はない。エンジンなど意外にも、検査装置やウェアラブルデバイス、ロボティックスにも適用できる」。

 Predixを利用する企業は、自社のアセットを対象にした独自のアプリケーションをPredix上に構築・展開できる。それが進めば、世界中の様々な設備や機械がつながる時代が到来する。

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