[海外動向]

米Dellが米EMCを約8兆円で買収、巨大な非公開企業の誕生へ

2015年10月13日(火)志度 昌宏(IT Leaders編集部)

米Dellが2015年10月12日(米国時間)に、米EMCを買収することで基本合意に達したと発表した。買収金額は1株当たり約33.15ドル、総額は約670億円(約8兆円)に上りIT業界では過去最大規模になる。非公開企業であるDellによる買収により両、サーバーからクライアントまでハード/ソフトをエンドツーエンドで提供する巨大企業が誕生することになる。

図:Dellによる買収を告げるEMCジャパンのWebサイト図:Dellによる買収を告げるEMCジャパンのWebサイト
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 米EMCを買収するのは、米Dellと、同社の創業者であり現在の会長兼CEOのMichel Dell(マイケル・デル)氏、およびMSD PartnersとSilverLakeの両投資会社の企業連合。1株あたり約33.15ドルで買収する。24.05ドルの現金と、EMCの子会社である米VMwareのTracking Stock(業績連動株)で支払われ、総額は約670億ドル(約8兆円)になると見込まれる。ただし、EMCは今後60日間、他社から、これを上回る条件の買収提案を募る。

 買収完了はDellの2016年度(3月期)第2四半期または第3四半期を予定する。新会社のトップにはDell氏が就任する。買収完了まではEMCの会長兼CEOのJoe Tucci(ジョー・トゥッチー)氏が現職を務める。EMC傘下のVMwareやPivotal、RSA、VCEなども基本、現経営陣が牽引するとしており、VMwareは株式公開企業として運営する。

 買収に参加するSilverLakeは、Dell氏がDellを250億ドルでMBO(Management Buy out:経営陣が参加する買収)し非公開化した際の投資会社でもある。DellがEMCを買収することで、ハードウェアではサーバーからストレージ、PC/タブレットまで、ソフトウェアではPaaS(Platform as a Service)/IaaS(Infrastructure as a Service)からストレージ管理、セキュリティーまで、エンドツーエンドをカバーする巨大な非公開のIT企業が誕生する。

 非公開企業であることのメリットについてDell氏は、発表に併せて公開した顧客向け書簡の中で、「将来への投資、一貫した技術戦略の追求、イノベーションの加速、意思決定の合理化と面倒なプロセスの排除のそれぞれに自由がある。そして100%顧客指向であり、それこそが我々のモチベーションとなるための自由がある」としている。

 一方のTucci氏は、「今回の発表は苦くて甘いもの」としたうえで「ストレージベンチャーとしての起業から7万人以上を擁する企業にまで成長した。この25年間は素晴らしい時期だった。しかし、現在のIT業界は破壊的な時期にあり、今後の成長に向けては大きく変わらなければならない。DellとEMCにより生まれる新会社は、今後の成長分野におけるリーダーになる」とコメントしている。

ソフトウェア定義が業界を揺るがし両者をつなげた?!

 上述したように、両者の事業統合により、まずハードウェアでは、サーバーからストレージ、PC/タブレットまでを、ソフトウェアではPaaS(Platform as a Service)/IaaS(Infrastructure as a Service)を構築するためのソフトウェア群からストレージ管理、セキュリティーまでを総合的にカバーすることになる。米IBMがx86系のハードウェア事業を分離したり、米ヒューレット・パッカードが法人向けとPCを含む個人向けで分社したりする動きとは対照的だ。

 これらの製品群を持って新会社は、IT各社が強調する「デジタル化」を含め、Software defined Data Center(SDDC)やハイブリッドクラウド、コンバージドインフラストラクチャー(垂直統合機)、モバイル、セキュリティーのためのソリューションを展開するという。

 これまでもDellは、サーバー/PCだけでなく、ストレージなどのハードウェア製品だけでなく、Dell Softwareを抱えソフトウェア事業にも積極的に進出してきた。

 一方のEMCは、仮想化のVMwareやPaaSとビッグデータ処理のPivotalなど、成長分野にグループ会社を展開してきたが、ここに来て「フェデレーション(連邦型)」を強調し、ストレージ管理ソフトウェアのOSS(Open Source Software)化に踏み切るなど、ストレージ製品におけるハードウェア離れとも取れる動きを見せていた(関連記事『【EMC World 2015】Software Definedの進展でOSSコミュニティへの参画が不可避に』。

 これらの動きの背景にあるのは、IT 全体に広がってきたSoftware Defined(ソフトウェア定義型)の波であることは間違いないだろう。Software Definedは当初、コスト削減に向け安価な汎用サーバーを使って必要な機能を実現するための仕組みの色合いが強かった。

 だが、それも最近では、Software Definedの対象がサーバー、ストレージ、ネットワークのすべてに広がることで、“サービス”に昇華された機能を組み合わせて利用する「API(Application Programming Interface)エコノミー」を成立させると同時に、ソフトウェアによる機能の高速化を図るためにハードウェア強化の回帰も始まっている。

 加えて、OSSの勢力拡大も見逃せない。クラウド化の進展に伴い、そのインフラを実現するためのソフトウェアの主流は完全にOSS主導に変わってきた。さらにクラウドを使った新しいビジネスが登場することで、ストレージやデータベースのアーキテクチャーも変革期を迎えている。非構造データを大量管理するHadoopや、高速なインタラクション処理を実現するCassandraなどだ。

 大手ITベンダー各社は既存のミドルウェア製品をIaaS上に移植し、PaaSとしての差異化を図っているものの、今求められているのは、これまでのミドルウェアでは未対応の機能。具体的には、基幹系と連携したモバイルアプリケーションやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)におけるストリーミングデータ対応などである。それらは新たなミドルウェアの開発を必要とする。

 結果、パブリッククラウド環境でOSSによる最新クラウドが形成され、それをプライベートでも実現するためにコンバージドシステム(垂直統合環境)が組み上げられているのが現状だろう。今後も、Software Definedのためのソフトウェア開発競争が激しさを増すと同時に、それを支えるハードウェアを組み合わせる力が問われることは想像に難くない。DellによるEMC買収は、ハードだけ、ソフトだけによる競争が終わろうとしていることの表れといえそうだ。

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