[クラウド分解辞典−Microsoft Azureの実像に迫る]

Microsoft Azureをより良く知るための基礎知識:第1回

PaaSからスタートした企業向けクラウド

2016年5月9日(月)正木 佑典(アバナード クラウドマーケットユニット マネージャー)

「Microsoft Azure」は米Microsoftが開発し提供するクラウドサービスである。これまで、WindowsやWindows Serverなどオンプレミスで利用するOSやミドルウェアを開発してきたMicrosoftも今や「モバイルファースト」「クラウドファースト」の方針を掲げており、Azureはその戦略の中核をなしている。本連載では、Azureの全体像に迫っていく。第1回は、Azureの概要を紹介する。

 「Microsoft Azure」(以下、Azure)は、米Microsoftが各種の企業向け製品の開発・販売で得た経験やノウハウを元に開発されたクラウドサービスである。2008年10月の同社デベロッパーカンファレンスで発表され、2010年10 月に「Windows Azure」としてサービス提供を開始した。当時は、WebロールやSQL AzureなどPaaS(Platform as a Service)としてのサービスをだけを提供していた。

 その後、仮想マシンや仮想ネットワークなどのIaaS(Infrastructure as a Service)サービスの提供を開始し、2014年にはサービス名称を「Microsoft Azure」に変更した。2015年12月には管理ポータルを新しいポータル画面に変更すると同時に、クラウドOSの基盤を第一世代の「ASM(Azure Service Manager)」から第2世代になる「ARM(Azure Resource Manager)」に変更している。

 Azureの大きな特徴の1つが、企業が利用することを前提に考えられているクラウドサービスだということだ。課金体系や、請求方法、既存システムとの連携やセキュリティなどで、企業としての使い勝手が高い。結果、2016年3月末時点で「Fortune 500企業」の66%が利用している。

 企業利用を前提とした取り組みの一例が、リージョン(複数のデータセンターで構成されるサービス提供の単位)の展開方針である。Azureでは、全世界にサービスを提供しつつ各地のニーズに対応するため、世界中に22カ所(2015年12月時点)のリージョンを展開し、さらに6カ所の新リージョンの展開を発表済みだ。日本国内にも2つのリージョン(東日本と西日本)を展開しており、日本国内のみで災害対策サイトを構築できる(図1)。

図1:Microsoft Azureのサービスを支える全世界のデータセンター(出所:日本マイクロソフト)図1:Microsoft Azureのサービスを支える全世界のデータセンター(出所:日本マイクロソフト)
拡大画像表示

 外資系企業が提供するクラウドサービスあるいはデータセンターは、テロ対策として発効した米国自由法(前パトリオット法)の対象になる。Azureも同様だ。だが、Azureでは国内に2つのリージョンがあり、災害対策要件でも海外のデータセンターを使う必然性がなく懸念は少なく済む。そもそもAzureを国内で契約した場合は国内法が適応され、管轄裁判所も東京地方裁判所が利用できる。こうした点も、企業がクラウドを選択するうえでは大きな要素になる。

IaaSとPaaSを包含したクラウドサービス

 クラウドサービスは大きく、(1)IT基盤の要素となる仮想マシンやOS、仮想ネットワークなどを提供するIaaS、(2)データベースやWebサービスなどのミドルウェアおよびランタイムなどを提供するPaaS、(3)アプリケーションを提供するSaaS(Software as a Service)に分類される。各レイヤーのサービスを各社が提供している。

 Azureは先に説明したように当初、PaaSを提供するクラウドとしてスタートし、その後に仮想マシンや仮想ネットワークなどのIaaSを追加している。現在では世界中に展開するリージョンからIaaSとPaaSの両方のサービスを提供している(図2)。ただ提供されるサービスはリージョンごとに異なっている。利用するサービスによってはリージョンの選択には注意が必要である(参考資料『リージョン毎の提供サービス』)

図2:Microsoft Azureサービスの一覧(出所:日本マイクロソフト)図2:Microsoft Azureサービスの一覧(出所:日本マイクロソフト)
拡大画像表示
この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
  • 3
バックナンバー
クラウド分解辞典−Microsoft Azureの実像に迫る一覧へ
関連キーワード

Azure / Microsoft / クラウド移行 / Avanade / PaaS

関連記事

トピックス

[Sponsored]

Microsoft Azureをより良く知るための基礎知識:第1回「Microsoft Azure」は米Microsoftが開発し提供するクラウドサービスである。これまで、WindowsやWindows Serverなどオンプレミスで利用するOSやミドルウェアを開発してきたMicrosoftも今や「モバイルファースト」「クラウドファースト」の方針を掲げており、Azureはその戦略の中核をなしている。本連載では、Azureの全体像に迫っていく。第1回は、Azureの概要を紹介する。

PAGE TOP