[新製品・サービス]

IoTとERPを連携させるソリューション、スウェーデンIFSがAzureベースで提供へ

2016年10月27日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

ERPシステムをIoTと直結し、ユーザー企業のデジタル変革(トランスフォーメーション)を加速させる−−。製造業向けのERPパッケージを主力にするスウェーデンのソフトベンダーであるIFSが、機器や装置に取り付けたセンサーやコントローラーなどのエッジデバイスと基幹業務を担うERPシステムを連携させるための製品「IFS IoT Business Connector」を発表した。IoTが現在の注目トレンドとはいえ、ERPと連携させるソリューションは珍しい。はたして、どんな機能、構成の製品であり、何を可能にするのだろうか?もう1つの注目すべきソリューションである「IFS Enterprise Operation Intelligence」と、エミレーツ航空の事例を併せてレポートする。

 IFSが新製品発表の場に選んだのは、本拠地スウェーデンの第2の都市であるイエーテボリで開催中のユーザーカンファレンス「IFS World Conference2016」。基調講演や各種セッション、展示会場も含めて今回はIoT関連の話題が多く、特に欧州の企業において、IoTが調査や概念実証から実践の段階に移りつつあることを印象付けるカンファレンスになっている。

 IFS World Conference2016全体の報告は後に譲ることにして、ここでは新製品の「IFS IoT Business Connector(IoT BC)」に焦点を合わせよう。日本では100社強でしかないIFSユーザー企業に限られてしまうのが残念だが、ERPとエッジデバイスを連携させることや、連携させて何を実行するか、あるいはそのためにどんな仕組みにしたのかといった点で、当然だが、よく考えられている。IFSユーザー以外の企業にとっても参考になると考えられる。

 図1を見ていただきたい。図の紫色の要素がIoT BCである。「IFS IoT Manager」「同Gateway」「同Controller」の3つのサブコンポーネントからなる。それ以上に特徴的なのはクラウド上のIoTサービスである「Microsoft Azure IoT Suite」を利用することだろう。AzureのIoT Hub経由で収集する大量のIoTデータをBIツールの「Power BI」で分析したり、「Stream Analytics」でフィルタリング処理したり、あるいは機械学習の「Machine Learning」に入力したりできる。

図1:「IFS IoT Business Connector」の構成。Microsoft Azure IoT Suiteを利用するのが基本である図1:「IFS IoT Business Connector」の構成。Microsoft Azure IoT Suiteを利用するのが基本である
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 IoT BCの主要コンポーネントのうち、Azure上の分析や処理を管理・監視できるようにするのがManagerの役割だ。GatewayはAzure上で分析したデータや基幹業務システム側に送る必要がある情報をセキュアに伝送する。それを受けたControllerは、データや情報の内容に応じて採るべき措置を決定し、適切なERPシステムのモジュールにデータや情報を引き渡す。

IoTと基幹業務融合のユースケース

 図1の一番右側にある黒っぽいボックスがERPのモジュール。設備資産管理(EAM)や生産管理(Mfg、Service)といったERPの中核機能のほか、遠隔地の設備保全・保守(Field Service)、複雑・多様な条件を考慮しなければならない意思決定支援(EOI:Enterprise Operation Intelligence)などがある。

 例えば、Field Serviceとの連携では、生産設備に何らかの異常が発生すれば、生産管理システム側で段取りを変更するといった対処が可能になる。顧客の施設や工場に設置した設備に異常発生の兆しがあれば、保守要員の確保・派遣や部品を手当てし、予防保全や修理を実行できる。このあたりがIoTとERPが連携してできる業務のユースケースだ。

 当然、そうした相対的に単純な処理で済む業務や仕事ばかりとは限らない。航空会社を例に取れば、旅客機に故障が見つかると、確認すべきこと、なすべきことが連鎖的に多数発生する。代替機の手配や機材繰り、異なる機体を使う場合には免許を持つパイロットの手配や搭乗ゲートの変更、乗客への案内などだ。これらの複雑なオペレーション(業務遂行)をサポートするツールがEOIである(詳細は後述)。

 いかがだろうか。EOIによる複雑なオペレーションを含め、IoTとERPを連携させるユースケースとして分かりやすいストーリーだし、エッジデバイスからの大量情報の収集や分析機能をAzure IoT Suiteに委ねる仕組みは合理的だろう。 IFSにとってはビッグデータ基盤や機械学習の開発負担がなくなるうえ、将来の機能強化の面でもMicrosoftのソリューションを使う方が有利である。

 これらの点はユーザー企業にとっても安心感があるはずだ。加えてMicrosoft Azure IoT Suite以外のIoTソリューション、例えば「Amazon Kinesis」を使うためのAPIも用意される。こうしたパブリッククラウドを利用する構成は、IFSユーザー以外の企業にとっても参考になるだろう。

 IFSによると、IoT BCには既に複数の初期導入ユーザー企業がある。国際的な原油掘削サービス企業のSonga Offshore、工場メンテナンスとITマネージドサービスを提供する米ATS、スウェーデンに本拠を置く害虫駆除のグローバル企業であるAnticimex、北米を拠点に金や銀など貴金属の採掘事業者を展開するHecla Miningの4社である。

 いずれも日本では知名度が低いが、欧米では相当の知名度がある中堅どころの企業だという。つまり欧米では米GE(General Electric)や独Siemens、仏Michelinなどのグローバル大企業だけでなく、中堅企業でもIoTの実用化が始まっている。それも新規事業や新規サービスといったことではなく、既存ビジネスの自動化や高度化が目的だ。もちろん目的とする成果を明確にしないまま拙速に取り組むのは問題であるにせよ、日本企業も取り組みを加速させる必要があるだろう。

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