[市場動向]

「日本企業のニーズに合致したマルチクラウド環境を提供する」─Cross-Cloud戦略のアクセルを踏むヴイエムウェア

2017年2月28日(火)藤本 京子

ヴイエムウェアは2017年2月24日、東京都内で2017年の事業戦略に関する説明会を開いた。同社代表取締役社長のジョン・ロバートソン(Jon Robertson)氏は、国内市場でのビジネスの好調ぶりをアピールしながら、マルチクラウド環境の推進をはじめとする2017年の注力分野について説明した。

日本市場での売上げは米国に次いで2位

写真1:ヴイエムウェア代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏

 説明会の冒頭、ロバートソン氏(写真1)は、2016年のヴイエムウェアの業績を振り返った。スライドには、ワールドワイドで売上げが前年比7%増の70億9000万ドル、従業数は2万人、顧客数が50万以上、パートナー数が7万5000以上といった数値が映し出された。国内の数値は公表できないとしたが、「グローバルを上回る成長率で、米国に次ぐ売上高を達成した」(同氏)という。

 日本でのビジネスが好調な要因としてロバートソン氏は、ネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」や、サービス事業者向けのサブスクリプションプログラム「VMware vCloud Air Network」、VDI(デスクトップ仮想化)などクライアント環境向けソフトウェア群「VMware End User Computing(EUC)」、Software Defined Storageのためのストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN(Virtual SAN)」など、VMware vSphereサーバー仮想化プラットフォーム以外の新しい製品ビジネスが急成長していることを挙げた。

 「国内市場での好調さは、当社主催イベントやブリーフィングセンターへの来訪者の数にも現れている」とロバートソン氏。年次イベントのvForumには1万5000人以上が来場し、2016年1月に一般公開を開始したVMware Briefing Centerには1年間で1300人以上が訪ずれ、200回以上のブリーフィングを実施したという。

日本企業の要望が本社の製品開発で採用されるケースも

 ヴイエムウェアは、国内顧客から支持が高まっている要因の1つとして、日本企業固有のクラウドニーズにこたえようとする同社の取り組みへの評価を挙げる。

 ヴイエムウェア上級執行役員でテクニカルサービス統括本部長の野崎恵太氏は、「クラウドの利用に際して、日本の顧客は、単にリソースを利用するだけでなく、運用時のきめ細やかなサポートまで求める傾向がある。ここは海外の大手クラウドベンダーが苦労している点だ」と指摘。この点に関して、日本企業がクラウド事業者/ベンダーに要求するレベルの価値を提供できる体制を整えている――というのがヴイエムウェアのアピールである。

 ロバートソン氏も、米国本社の技術者が日本の顧客の声にこたえることは頻繁に行っているとして、次のように説明した。「サーバーベンダーの独自機能への対応など、日本の顧客の要望がそのまま当社製品の仕様に反映されるケースがある。また、CEOのパット・ゲルシンガー自身が日本のビジネスを深く理解していることも大きいだろう」

マルチクラウドの推進と社内人材への投資

 ヴイエムウェアは2016年8月、ユーザーが利用するクラウドが複数にわたっても共通の運用環境でアプリケーションを実行可能にする「クロスクラウド戦略」と、その基本アーキテクチャ「VMware Cross-Cloud Architecture」を発表している(図1)。現在、クロスクラウドで利用可能なクラウドやデバイスとして、インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本IBM、富士通との協業・連携が発表済みだ。

図1:ヴイエムウェアのクロスクラウド戦略の中核を担う「Cross-Cloud Architecture」(出典:ヴイエムウェア)
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 ロバートソン氏は、クロスクラウドで具現化されるマルチクラウド環境を2017年の注力分野の1つに掲げ、「エンドユーザーにとっての使い勝手をより高めながら、俊敏性と革新性を価値として提供していく」と語った。

 エンドユーザーにとっての使い勝手に資する部分として、ヴイエムウェアは「セキュアなデジタルワークスペース環境」にも注力している。同社が最終的に目指すのは「Any Device, Any Application, Any Cloud」、どんなデバイスでも、アプリケーションでも、クラウドでも快適に活用することのできるエンドユーザー環境である。

 注力分野はテクノロジーばかりではない。ロバートソン氏は、社内の従業員に対する投資についても言及した。同氏によると、ヴイエムウェアは過去10年間、退職率が10%未満。転職がめずらしくない外資系ITベンダーではかなり異例の数字だ。「このことは人材を大切にする企業であることの証だ」とロバートソン氏は胸を張り、従業員が幸せでいることが企業の成長にもつながると強調した。

 従業員の定着率に加えて、人材のダイバーシティも特徴だと、ロバートソン氏は言い添えた。「日本の顧客への対応をより迅速に行えるようにするため、長期にわたって日本法人で勤める米国本社の技術者が増えて、社内ではハイブリッドカルチャーが浸透しつつある。社内に新しい風を吹き込み、新たなイノベーションを促進するためにも、積極的に外国人を雇用したいと考えている。また女性の従業員も増えているが、まだまだ少ないと感じている」(同氏)

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