[インタビュー]

「ビジネスプロセスの改善から始まる経営変革を日本企業に!」─ソフトウェア・エー・ジー 小原洋社長

2022年11月7日(月)指田 昌夫(フリーランスライター)

独Software AGの日本国内での知名度は、実際の業績や企業規模とかなり乖離があるかもしれない。本国ドイツではSAPに次ぐ2位、欧州全体で7位の売り上げ規模のあるグローバルのソフトウェアベンダーである。原点のAdabasから、主力のARISやwebMethods、そしてIoT基盤のCumulocityまで、さまざまな製品を統合して「Truly Connected Enterprise」という価値を届けるというのが現在の同社だ。2022年6月より日本法人のソフトウェア・エー・ジーを率いる小原洋氏に、Software AGの“今とこれから”、そして日本市場にかける意気込みを聞いた。

プロセス改善は個別最適に陥った日本企業の大課題

 世界的にデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる中で、大手を中心に、改めてビジネスプロセス(業務プロセス)の可視化や標準化に目を向ける企業が増えている。この3年間のコロナ禍で露呈したアナログな業務フローの解消という緊急課題は一段落し、コロナ前からの構造的な問題である労働人口の減少、事業環境の急変に対応できる情報システムの必要性などのテーマが再浮上し、「ビジネスプロセスの見直し」の声が高まりつつある。

 製造業を中心としたかつての日本企業は、カンバン方式に代表されるプロセス管理を追究し、高い生産性を誇示してきた。しかしそれはある意味、習熟したスキルを持つ作業者のスキルと努力に支えられた「部分最適の集合体」だったとも言えないだろうか。また、昨今のSaaSやRPAブームについても、個別・特定のビジネスプロセスを効率化/自動化することはできても、企業全体のプロセスは、サイロがいくつも残ったまま、さらに複雑さを増すおそれもある。

 こうした今の脆弱さにビジネスの現場は敏感だ。ベテラン従業員のリタイヤや慢性的な労働力不足、コロナや政情不安も影響したサプライチェーンのトラブルなどによって、かつてのような生産性を維持することが困難になりつつあり、現場の危機感を募らせている。

 ビジネスプロセスの見直しの機運は、そうした背景から来ている。個別最適を脱して企業全体のビジネスプロセスを可視化し管理する、ビジネスプロセス管理(Business Process Management:BPMというアプローチが昔からあるが、ここに来て再び注目を集めつつある。

写真1:ソフトウェア・エー・ジー 日本法人社長の小原洋氏

 そんな中、BPMをはじめとするビジネスプロセス関連の製品ラインアップを掲げて、ドイツに本拠を置くSoftware AGが、日本市場への取り組みを強化している。2022年5月に日本法人ソフトウェア・エー・ジーの社長に就任した小原洋氏(写真1)が指揮を執り、製品群のマーケティング・販売の再構築に取り組む最中である。その小原氏に、Software AGの“今とこれから”、そして日本市場にかける意気込みを聞いた。

半世紀以上にわたってエンタープライズソフトウェアを開発・提供

 Software AGの国内での知名度は、実際の業績や企業規模とかなり乖離があるかもしれない。本国ドイツではSAPに次ぐ2位、欧州全体で7位の売り上げ規模のある、グローバルのソフトウェアベンダーである(関連記事本誌のSoftware AG関連記事一覧)。

 日本流に言うなら「ソフトウェア株式会社」というシンプルな社名を冠して設立されたのが1969年。以降、半世紀以上にわたって、社名どおりソフトウェアの歴史と共に歩んできた。事業の原点は、メインフレーム向けに開発され、後にオープン環境にも移植されたRDBMSの「Adabas(Adaptable DAtaBAse System、アダバス)」にある。日本でもAdabasを長年使用している大手企業は多数あり、この製品名を聞いてピンとくるという向きも多いと思われる。

 一方で、Software AGは、ビジネスプロセス分野に関しても長らく製品を提供してきた。主要製品の1つであるビジネスプロセス管理/分析ツールの「ARIS(アリス)」の登場は1992年、今から30年前だ。以来、IT業界でビジネスプロセス改革のさまざまなブームが訪れては消えるなか、ARISは時流に合わせた機能を追加しながらも基本路線はぶれることなく、製品・機能のアップデートと統合を繰り返してきた(図1)。

図1:ARISの沿革(出典:ソフトウェア・エー・ジー)
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 2000年以降は、オープン系のソフトウェア企業を積極的に買収し、技術ポートフォリオを拡充。ビジネスプロセス分析に加えて、IoT、システム統合基盤、デバイス管理、アプケーション開発基盤などの領域もカバーするようになった。

 現在の同社は、BPMのARIS、アプリケーション連携(ESB/iPaaS)の「webMethods(ウェブメソッズ)」、IoTプラットフォームの「Cumulocity(キュムロシティ)」という3つの製品ラインを軸に展開している。これらの製品を統合して目指すビジョンを、「Truly Connected Enterprise(真につながっているエンタープライズ)」と名づけている。

 企業全体のビジネスプロセスを分析するためには、IoTデバイスを含めたあらゆる情報を統合し、可視化する必要がある。また、環境変化にシステムが柔軟に対応するためには、さまざまなアプリケーションを連携する基盤が不可欠である。「可視化」と「連携」を実現することで、これらの課題に対するソリューションを提供する。

 「これまでは、Software AGのソリューションを、BPMやESB(Enterprise Service Bus)、EAI(Enterprise Application Integration)といった企業ITのジャンルの切り口で提案してきました。一方、現在掲げている「Truly Connected Enterprise」は、企業のあるべき姿に焦点を当てたビジョンです。その根底には、企業が直面する課題を解決し、持続的な成長を支援する存在になっていくという、当社の決意、覚悟があります」(小原氏)

●Next:ARIS、webMethods、Cumulocityの特徴と「Truly Connected Enterprise」実現の根拠

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