[Small Smart Nationsから学ぶ「信頼経営」への進化─DBIC VISION PAPER 2]

「SSNs」4国の共通点と特異点─ここから日本は何を学ぶか:第3回

競争力を構成する5因子から考察する

2023年5月23日(火)デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)

スイスIMDの世界競争力ランキングは、競争力の構成因子として「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラストラクチャ」の4つを規定している。これらの因子は、それぞれ5つずつのサブ因子によって構成されている。つまり各国の競争力の評価は、全部で4×5=20のサブ因子によって構成されている。まずは、それぞれのサブ因子について、スイス、スウェーデン、デンマーク、シンガポール=「スモール・スマート・ネーションズ(SSNs)」の4カ国がいかなる評価を受けているのか、とりわけ、共通して高い評価を受けているのはどの因子なのかを、日本との比較も交えて見ていこう。

●第1回:「Small Smart Nations─小さく賢く機敏な国々」の成果が示すもの
●第2回:「鏡としての4つの国家「SSNs」─日本が生き残る道を限界戦略に学ぶ

因子1:経済パフォーマンス
国内経済を必ずしも頼りにはしていない

 まず「経済パフォーマンス」について、スイス、スウェーデン、デンマーク、シンガポール=「スモール・スマート・ネーションズ(SSNs)」の4カ国がいずれも高い評価を受けているサブ因子は少ない。4カ国がいずれも上位10位以内であるサブ因子は1つもなく、いずれも上位15位以内とすると「国内経済」が辛うじてこれに該当する状況である。「国内経済」も4位のスイス以外は10位以下であり、大して高いわけではない。

図1:SSNs4カ国と日本の「経済パフォーマンス」
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総合的な競争力には響かない自国経済

 このカテゴリーの因子が、それぞれの国の経済状況に基づいた評価であることを踏まえると、実は競争力が高いとされるこれらの国々の企業は、自国の経済をあまり頼りにしていないことがわかる。

 逆に言うと、日本の場合は「国内経済」が8位、「国際投資」が9位、「雇用」が2位と、5つのサブ因子のうち3つで非常に良い評価を得ているが、このように自国の経済状況を頼りにしても、総合的な国の競争力の向上には大して役に立っていないのである。GDPが世界3位であることや、欧米諸国に比べて失業率が非常に低いことが、わが国の強みであることは事実だが、目先の安定にとらわれて、それにすがるようになっているのは、非常に危うい感じがする。

因子2:政府の効率性
公正な政府、事業環境と社会の実現に注力

 「政府の効率性」については、2位のスイスを筆頭に4カ国とも総合順位が1ケタであり、特に「制度の枠組み」と「企業法制」のサブ因子において、共通して高い評価を得ている。日本は41位と残念ながら先進国とは言えない順位である。

図2:SSNs4カ国と日本の「政府の効率性」
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企業から国への高い信頼感

 「制度の枠組み」において4カ国の評価を高める要因となっているのは、「法規制の枠組み」(法規制の枠組みが企業の競争力を高めているか)、「透明性」(政策の透明性は十分か)、「官僚制」(官僚制は企業活動の妨げになっていないか)、「汚職・腐敗」(汚職・腐敗は存在しないか)、「中央銀行の政策」(中央銀行の政策は経済にプラスの影響を与えているか)といった項目である。

 これらはいずれもそれぞれの国の企業意識調査の結果を反映したものであるが、やはり企業にとっては安心してビジネスを行うことのできる公正な枠組みを築くことが、政府にとって大切であることがうかがえる。なお、日本は「法規制の枠組み」と「中央銀行の政策」で45位、「透明性」で41位と、企業からの信頼感の低さが足を引っ張っている。

健全な市場環境づくり

 「企業法制」に関して4カ国への評価が共通して高いのは、「起業」(法制度は起業を支援しているか)、「資本市場」(国内外の資本市場へのアクセスは容易か)、「投資インセンティブ」(投資インセンティブは海外投資家にとって魅力的か)、「競争法制」(競争法制は不公正な競争の防止に効果的であるか)、「補助金」(補助金は公正な競争や経済発展を歪めていないか)、「並行経済」(並行・地下経済が経済発展を妨げていないか)といった項目である。

 つまりこれらの国々においては、起業や投資を促進するとともに、公正な市場競争のための法制度を確立し、補助金や並行経済といったマイナスの要因を排除することで、活発かつ健全な市場環境が十分に整備されているのである。

公正な社会の実現

 なお「政府の効率性」の5つ目のサブ因子である「社会の枠組み」については、サブ因子の評価としては4カ国の足並みが揃わなかったが、その中の「ジェンダー平等」(国連開発計画による評価)や「機会均等」(機会均等法制が経済発展を促進しているか)、「社会的結束」(社会的結束は強いか)といった項目では、4カ国が共通して高い評価を得ている。公正な政府、公正な事業環境に加えて、ジェンダーや社会的結束といった公正な社会の実現が、これらの国々の共通項なのである。

●Next:SSNsのビジネスの効率性、インフラ、デジタル競争/人財力、そして日本はなぜ後塵を拝しているのか?

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