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「クラウドにおけるマイクロソフト」を志向する米セールスフォース・ドットコム

2008年12月17日(水)

Dreamforce 2008開催報告 Dreamforce 2008 / 米セールスフォース・ドットコム セールスフォース・ドットコムは売上高が9億2000万ドル(920億円、2007年度)の中堅企業だ。マイクロソフトの同604億ドルとは比べるべくもない。その同社が米サンフランシスコで自社イベント「Dreamforce2008」を開催、世界40カ国から9500人以上の参加者を集めた。人々に足を運ばせたのは、今回のメインテーマである「クラウドコンピューティング」への期待感だ。

来場者と基調講演

Dreamforceは今回が6回目。11月3日〜5日の3日開催であり、延べ参加者数は昨年に比べ約3000人増加した。来場者はユーザーを示す「カスタマ」、ITベンダーを示す「パートナー」という名前タグを付けており、属性が一目で分かる。メイン会場の出入り口で観察した限りでは、ユーザーが目立った。

日本からも約110人が参加。主要なパートナーに加え、日本郵政やローソン、総務省などが含まれる。各社は、「情報システムを抜本的に変える。そのために本格導入を計画中だ」(ローソン)、「電子政府の仕切り直しの切り札になると見ている」(総務省)と語る。なお日本郵政の岩崎明CIOは、Dreamforceの表彰制度でチーフイノベーションオフィサー賞を受賞した。

200以上あった講演、セッションの中心は、創業者兼CEOのマーク・ベニオフ氏による基調講演である。初日、2日目の午前9時から、それぞれ2時間半にわたって「クラウド基盤」と「CRMアプリケーション」をテーマに、新たなサービスや機能を紹介。その中で「今、経済は厳しいが、クラウドは成長の時である。今日の来場者がそれを示している」、「IT業界が我々のやっていることに気づいた。マイクロソフトも参入した」など、“クラウド時代の到来”を強調した。

2時間半、ベニオフ氏が一人で話しっぱなしというわけではなく、初日はFacebookやAmazon、スターバックス、そしてニール・ヤング氏、2日目はグーグル、Dell(マイケル・デルCEOなど)、アクセンチュアなど多彩なゲストを招いた。

画像:写真1

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発表内容

画像:写真2
写真3 基調講演で「クラウドの時代」をアピールするマーク・ベニオフ創業者兼CEO

基調講演で発表されたのは、PaaSやクラウド基盤関連が3件、CRMのサービスが1件である。

  1. Force.com Sites

    Webサイトをセールスフォースのクラウド基盤「Force.com」上で開発・運用可能にするサービス。Web構築に伴うハードウエア環境やセキュリティなどを考慮する必要がなくなるのが利点だ。現在は開発者向けのプレビュー版を提供(料金は無料)。商用サービス版は2009年の予定である。

  2. Force.com for Facebook

    1億2000万人のユーザーがいる世界最大のSNSサイト「Facebook」との連携機能。Facebook上のソフト開発者はCRMを含むForce.comのソフト資産を、Force.comの開発者はFacebook APIを、相互に使用できる。これによりFacebookとForce.comを組み合わせた新たなサービスを開発できる。

  3. Force.com for AWS

    AWSは米AmazonのWeb Service、つまり計算機資源を提供する「EC2」とストレージ資源を提供する「S3」を示す。Force.comの開発者の利便性を高めると同時に、AWSの開発者がforce.com上のサービスを利用できるようにした。

    最大の利点は、EC2で稼働するPHPやRubyなどの言語/既存ライブラリを使ったサービスと、Force.comのサービスを連携可能にしたこと。Force.com上のサービスを利用・開発するには、Javaライクな言語「ApexCode」を習得する必要があった。その制約を緩和し、EC2を使う開発者の目をForce.comに向けさせる狙いがある。

  4. Salesforce CRM Winter ’09

    50以上の機能を追加。初代から数えて27代目になるだけに、細かな改良が多い。大きいのは、CRMユーザー企業同士の情報連携を支援する「Salesforce to Salesforce」と呼ぶ機能。メーカーと販社、代理店などの協業に役立ち、顧客対応の引き継ぎや営業テリトリー分けを、社内と同じ感覚で行える。

 

展示会場

出展者数は185社、会場面積は昨年比倍増−セールスフォースの勢いを示すかのように、展示会場には様々な企業が顔をそろえた(写真4)。1富士通コンサルティングやデロイト、アクセンチュア、IBM、ウィプロ、アプリオ、ブルーウォルフなどの導入コンサル会社、2ビジネスオブジェクツやインフォマティカ、コグノス、クラウド9といったデータ分析関連ツール企業、3Right90やザクトリーといったCRM関連ツール・ベンダー、4マジックソフトウェアやブーミーなど既存システムとの連携用ミドルウェア製品ベンダー、5AT&TやRIMのようなモバイル関連ベンダー、といったところである。

日本からは、ITベンチャーのマッシュマトリックスが「Afrous Dashboard for Salesforce」を出展した。Web上の情報をマッシュアップする製品で、Force.com上でユーザー自身が情報コックピットを構築できる。

画像:写真4

クラウドの可能性と、同社の課題

IT資源を資産として保有する必要がなく、「ハード/ソフトの調達も基盤設計や性能設計、セキュリティや障害対策も必要ない」(ベニオフCEO)というクラウドは、コンピューティング環境を一変させる可能性がある。セールスフォースは、そんなクラウド・プラットフォームの最有力ベンダーの1社になった。「20年から15年前の、WindowsNTや同95をリリースする前のマイクロソフトに近い状況」と、感じたほどだ。

強みも多い。10年間で築き上げたマルチテナント技術、それを支える「Podアーキテクチャ」と呼ぶスケーラビリティ技術、利用者やネットの予測困難な動きに対処する運用管理技術などだ。同社のパーカー・ハリスCTOは、「マルチテナント技術では、我々が最も進んでいる」と言い切る。

しかし課題も残る。ソフトウェアの品質がその一つ。どんなソフトにもつきものだが、仕様通りに機能が動作しないのは問題だ。「2007年に99.99%」(ベニオフCEO)だった可用性の引き上げも重要だろう。大量の動画転送が急増するなど、同社自身では解決困難なインターネットのトラフィック問題もある。

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