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「中核システムのリスク管理に向け、ユーザー企業はメガベンダー各社の戦略を見極めるべき」~米ガートナーのトップアナリストが語る

2012年3月26日(月)

「IBM、マイクロソフト、Oracle 、SAPという4社のアプリケーションのメガベンダーは互いに競合し、一方で協調しながら、総額1000億ドルの予算を費やして顧客のIT予算を奪い合っている。そのため多くの大手ユーザー企業は、これらのベンダーとの関係を考え、戦略的に関係を構築しなければならない。端的に言えば、ユーザー企業は彼らに管理されるのか、それとも管理するのか、どちらの立場を取るのかということだ」。米ガートナーの調査部門でマネージング・バイスプレジデントを務めるデニス・ゴーハン氏は、こう語る。

過去10年の間に業務アプリケーション領域の主要ベンダーは、この4社に集約された。だが、それで落ち着いたわけではない。各社は競争と協調を繰り返しながら、顧客との関係強化=顧客からの収入最大化を競っている。うかうかしていると、無駄なIT投資を余儀なくされかねない。「企業は利用中の製品やその後継製品に目を向けがちだが、しかし本当に理解すべきなのは各ベンダーがどのように振る舞っているのか、その振る舞いがどのように製品に反映していくのか、そして振る舞いの背景にある戦略は何かといったことだ」(同)。

難しさを増しているのが各社の戦略や製品ポートフォリオが似通ってきていることだという。「例えばデータベースの領域では過去、Oracle、IBM、MSが競合してきた。最近、SAPがSybaseを買収し、インメモリーDBのHANAを強化している。BIの領域では4社とも自社の製品ポートフォリオを拡大するべく買収合戦を繰り広げてきた。業務アプリも同じだ。IBMは(会計など汎用の業務アプリこそ持たないが)、ここ数年の買収で業種・業務に特化したアプリを強化している」。

かつての水平分業が崩壊したわけだが、だからといって単純に垂直統合に移行する=例えばIBM1社をメインにする=かというと、そう単純にはいかない。製品・技術の面で完全に横並びになったわけではないし、多くを1社に依存することはITコストの面で問題が生じる可能性がある。

一方で「中核のアプリケーションを乗り換えるには非常に大きなコストがかかるので困難」(同)であり、問題になることが多い保守料金に関しても「顧客の反発を受けてベンダー側も注意深くなった。より使いやすく、不満が出ない体系にするべく注意している」(同)。

そこで「各社の戦略や、それに起因する得手不得手を考慮しながら、(1社ではなく複数の)メガベンダーとの関係を築く必要がある」というのがゴーハン氏の考えだ。この前提でゴーハン氏は、4社の戦略や状況を解説した。以下、IBM、マイクロソフト、Oracle、SAPの順にまとめる。

IBM--製品中心からサービスに転換

IBMは、プロダクト(製品)中心からサービスにようやく変わった。サービス企業になったという事実は、プロダクトに影響を与える。例えばソフトウェア事業はこれまでブランド別だった。そこに買収を通じて得たソリューショングループが加わった。この方がIBMにとってサービスのチャンスも、収益も生まれるからだ。

IBMはSmarter Planetというコンセプトや、大規模な知識システムであるWatsonなど、自社のアイデアや戦略を非常にうまくマーケケティングしている。このような大きなテーマに合う製品ポートフォリオがIBMの投資の中心になる。ユーザーはこの点を見極めるべきだろう。

IBMに関して、ユーザー企業から寄せられる質問を見ておこう。上位3つはライセンス、契約に関係するもの。つまり、これらにユーザーは困難を感じている。IBMの主要な取り組みとユーザー企業の視点が、どのように合致するのかという点も良く聞かれる。またIBMとどのように付き合うべきかかという質問もある。

マイクロソフトーー現在のシェアを保持する戦略

マイクロソフトはプラットフォームに強く、非常に大きなシェアを持つ。その戦略は今のシェアを保持し、同時に関連市場でシェア向上を図ることだ。直販ではなく、間接販売を採用するのが、同社のユニークな点である。成長戦略は、クラウド、モバイル、ユニファイドコミュニケーションなど多い。BIやアプリ事業への参入、強化もその1つだ。ERPパッケージでは(SAP、Oracleとは違う)2番めのレイヤーで活路を見いだす。.NETもまだまだ成長が見込める。

守りの戦略もある。顧客が他社のクラウドや製品へシフトするのを阻止し、マイクロソフト製品にとどまるような戦略だ。課題は多岐にわたる。例えばモバイルでは、マイクロソフトは追う立場。そのためマイクロソフトはSAP、Oracleなどに加え、GoogleやAppleとも競合する。他社のモバイル環境にどう対処するかは、難しい課題だ。

ユーザー企業からは、MSのパートナー依存への質問が多い。パートナーが持つスキルはメリット。しかしグローバル企業が世界各地で一貫したサポートを得たい場合、SAPやIBMのような関係を築きにくい。クラウドは企業で使えるのかという質問もある。一番多いのはSharePointに関する質問だ。米企業の間では、これを活用しようという意向が強いが、どれくらいまで活用すべきなのかという悩みもある。

Oracleーー買収で顧客ベースと収益を拡大

オラクルの戦略の中心は買収である。中核製品であるDB、ERPを補完する買収が大半であり、既存の顧客に買収した製品を、買収した製品の顧客にオラクルの製品を売り込むのが基本だ。今では非常に大きなポートフォリオを作り、メンテナンスサービス収入を上げられるようになった。

アプリケーション事業の成長戦略は、あるラインの製品スィートが未完成なのに、別の製品スィートを開発するというもの。そうしてアプリケーションの顧客ベースを拡大し、その顧客に対し多くのミドルウェア製品や「エンジニアードシステム」を販売する。ハード、DB、ミドルウェア、アプリという、ポートフォリオは規模が大きく、収益も高くなる。ベンダーとしては賢いやり方だ。

半面、ユーザー企業は、スィートとして統合されていないアプリに注意する必要がある。オラクルのスタンスは、そこに収益機会があれば必要な開発や買収をするというもの。メンテナンス収入によるマージンは4社の中で最高レベルだが、メンテの料金を得ているからといって投資を継続させるとは限らない。企業は、こうした点を見、戦略のロードマップを確認する必要がある。エンジニアードシステムも同様だ。企業は内部の基盤がどうなっているのか、アプリが最適に稼働するのかを確認する必要がある。

ユーザー企業からは、アプリに対する質問が多い。すべてオラクルで行くのか、そうしないのか、アンリミティッド契約は既存を置き換えるのか、違うのかといったことだ。すべてオラクルで固めるつもりがなくても、買収などにより結果的にそうなるケースが少なくない。契約の質問も多い。オラクルとの契約交渉はハードだ。私の(ガートナーの)同僚で契約専門の人間がいるが、非常に忙しくしている。それからクラウド戦略に関するもの。オラクルは数回、クラウドへの立場を変えてきたからだ。

SAPーー次の成長戦略を実現できるか

SAPの戦略は、顧客に注力し、継続的に売り上げを上げることだ。その市場から保守料金を保持しながら、さらに多くの製品を売っていく戦略とも言える。そのキャッチフレーズが、「オンプレミス、オンデマンド、オンデバイス」だ。オンメモリーDBのHANAに大規模な投資をし、BusinessObjectsやSuccess Factorsの買収も、その延長線上にある。オンデバイスに関わるモバイル領域ではサイベースを買収。成長機会としてとらえ、SAPのコア製品をモバイル対応にすることも重視している。

投資家の視点から見ると、SAPの戦略は短期的な利益を生まないのがリスク要因だ。HANAについては、どのように展開できるのかを求めている段階。BusinessObjectsやSAP BIなどの中で、HANAは何に役立つのかが見えず、まだ事例ベースで売り込める製品になっていない。クラウド、つまりSaaSでは中堅向けのERPサービス「Business ByDesign」は絶好調とはいかないが、そここそ順調。だが、SAP自身の期待には達していない。

Success Factorsの買収は、人的資本管理(HCM)の分野の市場を失わなかった点で意義がある。SAPはこの分野に十分な投資をしてこなかったからだ。だが既存の製品ラインがあるのも事実で、どのようなポートフォリオにするかは課題として残る。

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