[調査・レポート]

世界最先端IT国家は実現するか? OGCがシンポジウムを開催

2013年12月5日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

安倍政権は2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定した。今後、5年間で世界最高水準のIT国家となるための政府の取組みをまとめたものだ。では、活動は実際に進んでいるのか。それを議論するためのシンポジウムが12月初めに開催された。

政府のIT予算、新規と運用管理は1.2:8.8

 続いて基調講演。自民党のIT戦略特命委員長である、平井たくや衆議院議員が登壇した。同氏は「IT革命は本来、もっと面白いもののはず。業界の説明の仕方が悪いのでは」と前振りをした上で、政府によるITの取り組みについて語った。

 「以前と違って今では政府CIOが設置され、法的な枠組みもできた。政府CIOは事務次官よりポジションが上で、総理に直接注進できる。しかし、各府省のCIO室には、そういった権限がない。情報セキュリティを担う内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)も同じ。このままでは日本のサイバーセキュリティに関してコーディネーションしたり、監査したりする機関が存在しないのと同じ。2014年には立法措置に動きたい」。

 続いてIT投資に言及した。「政府のIT関係予算はざっくりいえば1兆円。うち8800億円が既存システムの更新や保守管理で新規の戦略投資が1200億円でしかない」。新規投資と保守運用の比率は1.2:8.8というわけだ。

 「1兆円を増やせない以上、比率を変えるしかない。そのためにクラウドも必要だが、いつの間にか”霞ヶ関クラウド“という言葉が消え、”政府共通プラットフォーム”になった。前者には、震災対応やエコポイントなどにすかさず対応可能に今までと違うことを可能にするなど、発想の転換があった。しかし、後者は、石橋をたたく方向になってしまった。これはとても残念。(OGCなど)外部との連携などを通じて見直していきたい」。

 なぜ平井氏はそう考えるのか。「今から7年前を振り返ってほしい。ホリエモンが逮捕された年だ。iPhoneは存在せず、ソーシャルメディアもmixiとMyspaceが注目されていた。これからの7年、つまり東京オリンピックが開かれる2020年までの間に社会は想像以上に、劇的に変わる。自分の地元である高松の丸亀町商店街は、アーケードの総延長が2.7kmで全国トップ。だが、楽天を路面店にすると200kmになる。品揃えでも比較にならない。iPhoneの性能は昔のスパコンを超える。IBMのWatsonも携帯に入る。いや、携帯そのものがなくなっているかも知れない。産業革命の真っ只中にいると認識すべきだ」。

 IT好きとして知られるとはいえ、こういった認識を持つ衆議院議員がいることは頼もしい。講演の中で同氏は、近く出版予定の電子書籍「デジタルニッポン2013~ICTで日本を取り戻す」(自由民主党著)もアピールした(図1)。2020年の未来日記という形で、ITが何をもたらすかを描いた本だ。

写真:電子書籍「デジタルニッポン2013~ICTで日本を取り戻す」(自由民主党著)
写真:自由民主党が著作した電子書籍
「デジタルニッポン2013~ICTで日本を取り戻す」

 例えば、東京オリンピック会場への入場にはチケットや身分証が不要で、顔バスになる(生体認証技術)。体調不良になった人が救急搬送先で適切な治療を受けられる(PHR=個人健康記録のクラウド化)。買い物や食品の安全性を買う時点で確認できる(トレーサビリティ)といった具合だ。「正直、乏しい想像力で作ったエピソードでしかない。皆さんからのこんなことが出来れば、出来るという提案を待っている」。

 とはいえ、同氏は表面的な知識でこう言っているわけではない。今年、同氏らは「北欧のメディコンバレーなどを視察し、電子カルテや健診データを活用するメリットを目の当たりにしてきた」という。訪問した国の一つが、国家スローガンとして”ITで国民を幸せにする”をうたうエストニア。同国はパスポートや免許証、さらに商店のポイントカードにもなるICカードを国民に配布し、選挙の投票をネット経由で在宅でできるようにしている、”世界最先端IT国家”である。

 「世界の中でネットで投票できるのはエストニアだけ。それに比べると日本のネット選挙はまだ黎明期でしかない。だが、エストニアは特殊なやり方をしているのではなく日本も取り入れられる。国民番号を導入した後にはやらないといけない」と話す。そこで、まず自民党の総裁選をネット投票で行うことを計画しているという。「いずれにせよ、いろんなことを変えていく必要がある。電子カルテなど医療の高度化は必須だし、決済も24時間365日可能にしたい。個人情報保護法の見直しもそうだ。IT戦略特命委員長としてこれらを手掛けていく」と締めくくった。

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