「高度情報通信人材」「先導的ITスペシャリスト」などの表現に込められている人材像は、先進的イノベーションを体現したり、世界レベルでリードしたりといった高度なイメージを想起させる。しかし教育の実態はそれを期待できるものなのか? 今回はこうしたテーマを考えてみる。
日本の企業や組織にコンピュータが導入され、情報システムが構築・利用されるようになって50年以上が経過した。この間、情報システムの技術者育成は常に課題であった。建築や機械など他の技術分野と比べて、あまりにプロフェッショナルな人材が少ない。その人材不足を憂いて経団連も何度となく警鐘を鳴らしてきた。
筆者は2005年から経団連情報通信委員会の情報化部会の下に新設された「高度情報通信人材育成に関するワーキング・グループ」に関わるようになった。育成を狙っている人材像は、実務に長けた「高度な」人材である。経団連では産学官連携の強化を提言し、2006年には重点協力拠点2大学(筑波大学、九州大学)と協力拠点7大学(共同大学院を含む)を選定。民間から従来にない強力な実務教育指導支援を行うことを決め、国の施策と連携させて実務的な教育強化を図った。
この活動の延長線で高度IT人材を専門的に育成するナショナルセンターおよび融合型専門職大学院の設立も提言した。残念ながら即座に設立とはいかず、代わりに2009年7月に経団連有志企業11社が「特定非営利活動法人 高度情報通信人材育成支援センター(CeFIL)」を設置した。専門職大学院の下地作りの意味合いだったが、諸々の理由で本来の機能を果たしているとは言い難い状況に留まっている。
文科省が進める産学連携の実践教育
国のIT人材育成を俯瞰的に見ると、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が示す「創造的 IT 人材育成方針」(2013年12月25日)はあるものの、実際の施策は関係各省庁が縦割りのままバラバラに作られ、明確な育成像や継続性がない。
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