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[IoT時代に向けたデジタルマーケティングのデータ活用法]

B2Bビジネスの見込み客情報はオンラインで補う:第2回

2014年9月3日(水)飯野正紀、生嶋友貴(アイレップ)

デジタルマーケティング分野でも近年は、ビッグデータ(大規模データ)がトレンドになっている。だが「具体的に何から手をつければよいのか」と悩んでいる担当者も少なくないだろう。今回は、B2B(企業間)ビジネスにおけるデータの活用方法を取り上げる。具体例として、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)データと、オンライン行動データの集合体であるWeb解析データという、管理主体も取得方法も異なる2種類のデータの利用方法を紹介する。

 顧客への商品/サービスの提供形態は大きく、リアル店舗や営業接点で獲得・決済するリード獲得型と、Webサイト上で決済するeコマース型の2つに分けられる。B2B(企業間)ビジネスでは、まだまだリード獲得型アプローチが主な提供形態だろう。

  リード獲得型アプローチにおいて企業が取得できるのは、リード獲得から受注までの営業接点で顧客の“顔”が見えてから以降のデータである。デジタルマーケティングの世界では、「オフラインデータ」と呼んでいる。

 オフラインデータは、セミナーや展示会などへの参加情報、営業活動時の名刺情報などだ。これらを管理するために、多くの企業がCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)といった顧客情報管理システムを構築している。CRMでは、顧客に最も近い位置にいるからこそ取得できる“顧客に紐づいた”データも蓄積・管理しているはずだ。具体的には、顧客への初回接点経路や、顧客ステージ(取引関係の強弱)、受注頻度、受注履歴とすべての売上金額などである。

 一方、Webで取得できるのが「オンラインデータ」だ。代表例としては、Webサイトを訪れたユーザー(以下では、見込み顧客の意)のすべての来訪行動やアクションに関するデータがある。

 Webというコミュニケーション接点で取得するオンラインデータは、リード獲得に至らないユーザーのデータを含んでいる。それ単体では、売り上げや顧客情報とも紐づいていないため、ただ蓄積するだけでは活用できない。集計や考察によるブラッシュアップが必要になる。

「行動のトリガー」含むオンラインデータがデータ活用の鍵に

 しかし、ユーザーが製品/サービスの購入に向けて、対象を調査・検討している段階にあっては、オンライン上の接点をいかに最適にするかという課題が発生する。Webサイトに置いた製品/サービスの各ページの閲覧やカタログのダウンロードなどが、オンラインでの顧客接点になる。

 このとき、ユーザーが顧客になるまでの「行動のトリガー」を含むオンラインデータには、リード獲得と成果向上のヒントが埋もれている(図1)。オンラインデータが今後、企業のデータ活用の鍵を握るとされる理由が、ここにある。

図1:B2B(企業間)ビジネスでのリード獲得型Webサイトにおけるユーザー行動と取得データ図1:B2B(企業間)ビジネスでのリード獲得型Webサイトにおけるユーザー行動と取得データ
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 こうしたオンラインデータに、手持ちのオフラインデータを組み合わせることで、「顧客とのコミュニケーションシナリオ」のためのデータが見えてくる。具体的には、最もリードが獲得しやすいシナリオや、最も収益率が高い顧客をナーチャリングできるシナリオ、最も売り上げが高いシナリオなどを可視化することで、プロモーションの注力チャネルをROI(Return of Investment:投資対効果)に基づき決定したり、予算配分の決定材料にしたりできる。

 これらのデータを通年で蓄積すれば、シーズナリティ(季節性)を加味したナーチャリングと営業アプローチタイミングの選定材料や、新たなリード獲得チャネルの発見が可能になる。営業戦略やオンライン戦略の枠を超えたデータ活用が視野に入ってくるわけだ。

ユーザー情報と来訪時の行動データの2種類がある

 オンラインデータは、(1)ユーザー情報を表すデータと、(2)来訪した際の行動データの2つに大別できる(図2)。

図2:Web解析ツールで取得できる基本的なデータ図2:Web解析ツールで取得できる基本的なデータ
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(1)ユーザー情報を表すデータ:PC/スマートフォンといったアクセスしてきたデバイス情報や、来訪ユーザーが新規かリピートかという来訪時のステータス情報など。Web解析ツールによっては、性別や年齢などのデモグラフィック情報、来訪ユーザーが普段興味のあるコンテンツの類推データも計測・蓄積できる。

(2)来訪した際の行動データ:検索エンジン経由で来訪したユーザーが使ったキーワードデータや閲覧を始めたページの情報など。キーワードなどサイト入口での行動データからは、どのようなモチベーションでWebサイトに来訪したかが分かる。

 来訪時の閲覧ページ群に対しては、その傾向をみることで、商品/サービスへの関心度合の高さが測定できる。 モチベーションの変化から興味範囲、アクションまで、「どこから来て、どこから見始めて、何をどれくらい見て、最終的にどう行動したか?」というユーザーの詳細な動きが受動的に取得できる。

 ただし、これらのデータ単体では、ボリューム把握やWebサイトのアクセス状況、シーズナリティ程度しか明らかにできない。ここに、「クッキーID単位」などのユーザー単位データを蓄積していくことで、より精緻なユーザー行動の解析が可能になる。

 では、オンラインデータはどのように取得できるのだろうか。少しWebの仕組みを勉強したことがある読者であれば、オンラインデータといえば、「アクセス解析」データを想起されるかもしれない。インターネット上のサーバーリクエストやHTMLに仕込んだWebビーコンをトラッキングすることでアクセス数をカウントする。

 Webビーコンとは、ネット利用者の動向を調査するために、Webサイトに埋め込む小さな画像ファイルのことだ。これを追うことで、Webサイトへの訪問の有無や回数などを調査できる。2000年代前半の黎明期には、生ログから閲覧ページ数を算出する必要があった。

 現在のオンラインデータ取得の基本は、「Google アナリティクス」や「Adobe Analytics(旧SiteCatalyst)」といったWeb解析ツールによるトラッキングだ。Web解析ツールの機能進化と普及により、管理画面上でデータを容易に確認・取得できるようになっている。

 近年はさらに、広告配信との連携やアトリビューション分析など、マーケティングアナリティクス(分析)ツールとしての機能が発達している。アトリビューション分析とは、ユーザーが最終的に購入するまでに、どのようなサイトや広告などを経由してきたかを分析し、それぞれの媒体の間接的な貢献度を算出する手法である。マーケティング予算の配分など、広告効果の最大化を図れるようになる。

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