[五味明子のLock on!& Rock on!]

IBM Watsonベースの高速開発環境とRed Hat Ansible Tower 3.1 に見る「自動化」の最新動向

2017/04/24 - 04/28

2017年5月1日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

今回は“自動化”をテーマにした2つのソリューション - 日本IBMによるWatsonベースの“超”高速開発環境、Red Hatの運用管理自動化プラットフォーム「Red Hat Ansible Tower 3.1」 - に焦点を当てた。

Watsonのパワーをアプリ開発に! 「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」の概要

日本IBM 専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 クラウドアプリケーションイノベーション担当 山口明夫氏

 いまやIBMのビジネスを根幹から支える存在となったコグニティブコンピューティングシステム「IBM Watson」だが、日本IBM 専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 クラウドアプリケーションイノベーション担当 山口明夫氏によれば「Watosnのパワーをアプリケーション開発にも活かしたいという強い要望を顧客から受けるようになっている」という。

 特に銀行や製造業など、レガシーな既存システムとクラウドベースの新システムが混在し、相互連携が取りにくい現場から切実な声が上がっている。「深夜に人力で、Excelのタテヨコのマス目を埋めていく、そんな古いスタイルの開発ではなく、もっと効率的に品質を担保したいという要望が日に日に強くなっている」(山口氏)。

 そうした声に応えるために日本IBMが今回提供を開始するのが「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」だ。このソリューションは、プロジェクト管理を支援する「コグニティブPMO」、そしてアプリケーション開発と保守を支援する「統合リポジトリ&ツール」という2つのラインから構成される。価格は個別見積もりだが、基本的にクラウド上のサブスクリプションサービスで月額20万円~が最低価格のようだ。

 Watsonが開発に投入されるとどういうことが可能になるのか。Watsonが実装されるコグニティブPMOを導入すると、例えばチャットボットによる自然言語でのQA対応やレポートの自動作成、トラブルの事前予測などが可能になる。また日本企業が苦手とする開発や運用の自動化に関しては統合リポジトリ&ツールを活用することで、整合性チェックの自動実行、コード生成からデプロイまでのプロセス自動化、テストスクリプトの自動生成などが可能になり、それに伴った大幅なコスト削減効果が期待できるという。

IBM Watsonを活用した次世代超高速開発を使うと、コード自動生成は70%、リリースまでの期間短縮は50%、仕様間の整合性は100%を実現できるという
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 「現場の人々の助けになるような情報 - 例えば、“5年前のあのプロジェクトの報告書はどこにある?”といった、人手で検索するのが難しい情報に対しても、過去の実績に基づいて速やかなサジェスチョンが可能になる」と山口氏。開発現場の効率化が進まずに苦しむ日本企業をWatsonのパワーで支援していく構えだ。

オープンソースの自動化ツール「Ansible」が「Red Hat Ansible Tower 3.1」となって国内提供開始

 オープンソースのIT運用自動化ツールとして高い評価を得ていたAnsibleがRed Hatに買収されたのは2015年10月のこと。それ以来、RHELやOpenShiftといった同社のポートフォリオとの統合を進め、2017年4月25日には、「Red Hat Ansible Tower 3.1」として日本市場でも提供を開始することを発表した。インタフェースも日本語に対応して提供される。

 データセンターの自動化は、いまや全世界の企業にとって避けて通れない課題となっている。そして数ある自動化ソリューションの中でもオープンソースをベースにしたAnsibleはRed Hatに買収される前から多くの企業で導入されており、現在でもNASA、Splunk、Grabといった企業での大規模ユースケースが知られている。

Red Hat エグゼクティブバイズプレジデント兼CMO ティム・イェートン氏

 Ansible Tower 3.1はマルチプレイブックによるワークフロー、クラウドに最適化されたスケールアウトクラスタリング、ユニバーサル検索機能などを備えており、「自動でスケールする唯一の自動化ツール」(Red Hat エグゼクティブバイズプレジデント兼CMO ティム・イェートン氏)というクラウドネイティブな自動化ツールである点が最大の特徴だ。

 もっとも、Red Hatは「クラウドだけでなくオンプレミスにも対応する」ことを明言しており、ハイブリッドな環境でもAnsible Towerは十分にそのケイパビリティを発揮できるとしている。「Ansibleのポリシーは“Automation for Everyone”、自動化ツールをすべての企業に提供すること。自動化こそがあらゆる企業のデジタルトランスフォーメーションに結びつく」とイェートン氏。国内ではすでに2月28日から製品提供を開始しており、販売価格は130万円(年間サブスクリプション料/100ノード以上から)。

「AnsibleのコンセプトであるAutomation for Everyoneは日本の働き方改革にも貢献する」とイェートン氏
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 前述のIBM Watsonによるソリューションと同様に、自動化やDevOpsの導入に苦心する国内エンタープライズ企業をターゲットにしたソリューションだが、金融や通信といった業種からの引き合いが増えているという。イェートン氏の言葉にあるように、デジタルトランスフォーメーションの足がかりとして自動化に取り組む企業が増えることを望みたい。

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