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[インタビュー]

ビッグデータ、HPC、IoT、Edge/Fog、AI……ITの潮流遷移と“次”の注目技術

米グリーン・グリッド会長 ロジャー・ティプレイ氏

2017年11月17日(金)河原 潤(IT Leaders編集委員/クラウド&データセンター完全ガイド編集長)

2017年で設立10周年を迎えた米グリーン・グリッド(The Green Grid)。めまぐるしい潮流遷移の中、コンピューティングやネットワークの諸課題に対して、会員企業やユーザーとの連携によって解を追究してきた同団体が次の10年で見据えるものは何か。会長を務めるロジャー・ティプレイ氏に、最新のトレンドを中心に話を聞いた。
interview:河原 潤 text:柏木恵子 photo:赤司 聡

10年間でエネルギー調達の可能性が大きく広がる

――グリーン・グリッドは設立10周年という節目の年ですね。この10年でコンピューティングやデータセンターを取り巻く環境は大きく変わりました。

 当団体はこの10年でさまざまな成果を上げることができたが、確かに課題は設立当時と今とではまるで異なっている。1つには、これは地域にもよるが、原油資源が潤沢になったことで、かつて重大な課題としていたエネルギーコストがずいぶん下がってきている。また、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用が普及していったことで、発電にかかるコストもだいぶ下落した。

 このように、エネルギー調達の可能性が大きく広がったことが最大の変化かもしれない。とはいえ、再生可能エネルギーは必要な時にいつでもあるというものではない。そのため、エネルギー貯蔵の工夫が必要になる。注目はリチウムイオン電池で、データセンター内において大量蓄電が可能な「エネルギーストレージ」としての利用が始まっている。

写真1:米グリーン・グリッド会長 ロジャー・ティプレイ氏

 この動きはデータセンターの設計にも影響を及ぼすようになっている。データセンター内に設置されるIT機器のパフォーマンスをワット当たりで見るようになったのも大きな変化だ。今のIT機器のワット当たりのパフォーマンスは10年前と比べて飛躍的に向上し、機器の台数を大幅に減らせるようになった。

 もっとも、ビッグデータ分析やHPC(High-Performance Computing)といった、ハードウェアリソースがあればあるだけ使うような分野は別の話になる。コンピューターサイエンスは昔からそのようなものだからだ。

――グリーン・グリッドのワーキンググループ(WG)活動や各種研究で、近年特にアクティブなのはどの分野でしょうか。

 液体冷却(Liquid Cooling)は最もホットなトピックの1つだ。データセンター/マシンルームにおける冷却は非常に重要な問題だが、コンピュートリソース需要の急増で、一般的な空気冷却にいよいよ限界がきている。

 そこで、液冷を採用し個々のサーバーの各CPUのクロック周波数やチップの処理性能キャパシティを改善することで、データセンター全体の空調効率化を実現できる期待が高まっている。ムーアの法則を永遠に続けることは無理だが、数年間延命させることは可能と考えている。先にも述べたビッグデータ分析やHPCは、多くのケースで液冷が欠かせなくなるだろう。液冷を手がける複数のベンダーが我々のWGに参加して、さまざまなソリューションの開発を試みているところだ。

 また、DCIM(Data Center Infrastructure Management)WGでは、手がける作業の1つに「DMTF Redfish」に対する管理用インタフェースの開発がある。グリーン・グリッドとDMTF(Distributed Management Task Force)は連携を密に取っていて、我々にはインフラ設備に関する専門知識があるので、DMTFからはUPS、PDU、スイッチギアといった機器の冷却スキームの定義を依頼されている。

 データセンターの可用性に関しては、「OSDA(Open Standard for Datacenter Availability)」という、米アップタイム(Uptime Institute)のTierを使わずに、もっと今のニーズに即した柔軟な可用性指標を実現しようとするプロジェクトがある(図1)。これは欧州のコロケーション事業者のメンバーからの提案が元になっているものだ。Uptime Tierは各Tierの要件を具体的に指定しているが、OSDAではTierの指定によらず、例えばオンサイトの太陽光発電の使用、送電網が安定している地域でのその使用といった、他のアプローチとの組み合わせで可用性を担保するという考え方に立っている。パブリッククラウドへのオフロードもその選択肢の1つとなる。これにより柔軟な設計が可能になり、そうなればコストも下がる。

 このほか、シンガポールのチームが熱帯地域での冷却最適化に取り組んでいるほか、サーバー効率利用のWGで、ゾンビサーバー特定の調査研究を行っている。こちらはそろそろ結果が出る頃だ。

図1:OSDA(Open Standard for Datacenter Availability)プロジェクトで開発中のツール操作画面(出典:米グリーン・グリッド)
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