問題解決にあたる時、思考のしかたによって過程や結果が異なる傾向にあると感じている。具体的には、科学的思考のアプローチとデザイン思考のアプローチの違いである。今回はこれをテーマに日頃から考えていることをしたためたい。
長く建設会社の設計に関わってきたこともあり、筆者はデザインへの関心が強い。デザインという領域は広く、意匠もデザインであるし、設計もデザインである。芸術の分野のデザインもあり、工業分野や工学分野のデザインもある。デザインはフランス語のデッサン(Dessin)に由来し、「計画を形にして表す」ことと定義されている。最近ではシステムデザインとかプロセスデザインなど、経営分野でもこの言葉がよく使われるようになってきた。特に「デザイン思考」という問題解決の手法としてのデザイン論が活発になっているように思う。
一方、古くからエンジニアリングという概念がある。日本語では工学と訳されることが多い。数学や自然科学をベースにしていることから言えば、エンジニアリングは工学ではあるが、その目的とするところはもう少し広い概念の問題解決の手段である。情報システムの分野ではシステムエンジニア(SE)という職種があり、ソフトウェアエンジニアリングとい領域があることからシステムエンジニアはエンジニアリングを実践してきたと思われるのであるが、果たして実態はどうか?
同じ問題解決でもデザイン思考のアプローチとエンジニアリングのアプローチは異なる。科学的根拠や数学的エビデンスを求めるエンジニアリングだけでシステムを構築しようとしても、心は通ってこない。人が活用するシステムには、感覚的な要素も重要になってくる。デザインの語源であるデッサンは日本語で「素描」とも訳される。スケッチも素描であり、この素描がデザイン思考では全体把握の重要なプロセスであると筆者は考えている。
思考型による特性の仮説検証
目的が同じ問題解決であっても、そのアプローチが思考法によって異なる傾向にあることに筆者は気づき、仮説検証を行っている。それは科学的思考のアプローチとデザイン思考のアプローチの違いである。仮にどちらも解決しなければならない同じ課題を抱えている「サイエンティスト」と「デザイナー」と呼び変えよう。
サイエンティストは解決に役立ちそうなエビデンスのある"部品"を集めてくる。それらを組み合わせたり分析したりしながら、問題解決へと進めていく。突き詰めていこうとするので常に満足はなく部品を探し続ける。だからずっとどこかに不安があり、フレームワークやモデリングという科学的手法にも頼ったりする。どちらかというと状況に対して悲観的である。
デザイナーは課題やその周辺の要素を俯瞰して、スケッチを描き始める。絵や図や線で全体やつながりなどを描画する。つながりが深いと線が太くなったりする。テキストは補助的にしか使わない。その描画を元に思考を繰り返す。必要な部品を思い浮かべながら部品情報を集めだす。元スケッチを見直したり、工程を絵にしたり、マイルストーンを考えたりする。そのような試行錯誤を繰り返しながら計画をまとめると、ある時点で実践活動に入る。そこからはあまり迷うことなく最初に描いた計画を粛々と進めて行く。どちらかというと結果に対して楽観的だ。
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