[ザ・プロジェクト]

電子サインの導入でビジネススピードが加速―パーソル ホールディングス

2017年12月20日(水)杉田 悟(IT Leaders編集部)

「働き方改革」の旗印のもと、RPAやAI、IoTなど多くのIT技術が企業のバックオフィスの業務効率化に貢献を始めている。アドビシステムズが提供するAdobe Signは、業務プロセス改善の一端を担うソリューションだ。電子署名ソリューションのAdobe Signがどのように企業の働き方改革に貢献しているのか、導入を進めているパーソル ホールディングスの馬場優子氏に聞いた。

 IT活用による働き方改革では、RPA(Robotics Process Atomation)やAI(人工知能)、IoT(Internet of Things)など、業務処理を自動化する最新のデジタル技術に注目が集まっている。一方で企業が進めているのが、業務フローの見直しだ。現在運用している業務プロセスそのものに無駄が多く、BPR(Business Process Rengineering)を試みる企業も増え始めている。

 業務フローを電子化の枠組みに乗せるためには、ペーパーレス化は必須だ。紙をデジタルに変換することで、時間や場所の縛りを極力減らすことが可能になるなど、いわゆる「IT化」の恩恵を受けることが可能になる。しかし、ペーパーレス化の際にネックとなるのが、ビジネスフロー上のそこかしこに顔を見せる「署名」や「捺印」の存在だ。

 一般的な企業では、担当者ひとりで完結する業務フローはほぼ存在しない。直属の上司や部門長、役員など責任者の許諾を得るというフローが必ず発生する。ほとんどの場合、上司、責任者、経営者の印鑑や、社判などを書類に捺印するのが慣例になっており、印鑑をもらうために時間や手間、コストが掛かっている。ひとつひとつは小さなロスでも、膨大な量を扱っている大企業では、塵も積もって山となっている。

 そこで必要となってくるのが電子署名。電子署名ソリューションはいくつかのベンダー製品が市場に出回っているが、大規模で高価なものが多い。その中で比較的安価で短期導入が可能とされているのが、アドビシステムズが提供するAdobe Signだ。Adobe Signを使うと、あらかじめ用意された署名やその場での手書きの署名、印鑑の捺印もシステム上で行える。これを業務フローにはめ込んでいくと、かなりの業務効率化が望めるというのだ。

IT環境整備の次の一手として

 今回、取材に応じてくれたパーソル ホールディングス、その母体となったのが、人材派遣会社のテンプスタッフ(現パーソル テンプスタッフ)だ。M&Aを重ねてきた同社が2013年にバイト情報誌の「an」や転職情報誌の「Duda」を発行するインテリジェンス(現パーソル キャリア)を子会社化、2016年に統一ブランド「パーソル」を導入している。

(図1)パーソルグループの主な構成企業
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 現在、ホールディングスのグループ企業数は90社、拠点は国内447、海外43の計490拠点、従業員数は3万2千人にのぼる。インテリジェンスの買収で一気に企業規模を拡大した当時のテンプスタッフは、事業のシナジーを利かせるための新たな経営方針を打ち出し、経営体制を一体運営にし、事業基盤を再構築することにした。その流れでIT基盤も整えていくことにした。

 ネットワークインフラを整備したほか、ばらばらだったバックオフィスシステムを、ワークスアプリケーションズのCOMPANYの新規導入で統合化した。人事データベースも統合し、これまでグループ会社の社員にメールを送ろうと思っても検索できず、アドレスすらわからないような状態が解消、コミュニケーションを取るための基盤も整った。

 「ひとつの企業グループとしては、これでやっとIT環境がゼロになった状態。どこまで進化させるかが、本当のスタート」(グループIT本部GITBITA部 馬場優子部長)。

 そこで、次なる一手として導入を検討したのが、電子サインの導入だった。

(図2)電子サインを検討するに至った背景と導入により目指す姿
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ペーパレス化の推進を目的に

 パーソルグループでは、仕事の性質上、日々大量の書類が発生している。注文書や議事録、作業報告書など一般的なもののほかに、個別労働者派遣契約や業務委託個別契約書、NDA(秘密保持契約)など様々だ。しかし、投資効果の見えずらいバックオフィス業務のIT化は遅れやすく、ペーパーレス化はまったく進んでいなかった。

 ペーパーレス化の遅れにより、業務の効率化を阻害する様々な問題が放置されていた。例えば、契約書類などが紙やFAXでやり取りされているため、ステータス管理ができず、中には原本があるかどうか怪しいものもあった。商談の価格交渉において、交渉時の記録が残っていないため「言った、言わない」の問題に発展することも。資料等のエビデンスが残っていないので、担当者が変わった場合に引き継いだ人が苦労する…などなど。

パーソル ホールディングス グループIT本部 GITBITA本部 部長の馬場優子氏

 そのほか、「仕事のための仕事」となってしまっている事務作業の効率化や、業務フロー改善においてネックとなる印鑑への対応、印紙税のコンプライアンスリスクの回避など様々な課題を解決する手段として導入することにしたのがAdobe Signだった。電子サインを導入することで、ペーパーレス化を阻害する要因を排除できると踏んだ。また、署名や捺印が「送っておくからサインしてと、メール感覚でやれるようになるのではないかという期待もあった」(馬場氏)という。

 Adobe Signは、紙の書類で行っていたと同様の署名や捺印を電子データ上で可能にするもの。あらかじめ作成しておいたサインをボタン一つで電子文書に描き入れられるほか、直接電子ペンでの入力も可能となっている。日本の商習慣では、サイン以上に用いられる印鑑による捺印にも対応している。

 とはいえ、すべての業務に電子サインを適用できるわけではない。企業文書には法令に触れるセンシティブなものも多く含まれているからだ。法令には「電子化OK」という記述はなく、条文の解釈で電子化が可能かどうかを判断するしかないのが現状となっている。パーソルでは、電子サインの適用領域としていくつかの候補を分類、法令とのからみで完全に問題のないものにAdobe Signを導入することにした。

 候補に上げられた文書は、株主総会議事録、取締役会議議事録など会社法関連のもの、財務諸表や税務申告書類など財務関連のもの、注文書や請求書、業務委託契約、NDAなど取引全般に関するもの、採用通知書や雇用契約書など人事関連のものなど。

 このうち、会社法で定められているものについては、海外の取締役などが係わってくるとソリューションの対応も大変なので保留にした。財務関連では、決算関連書類については改正が行われた電子帳簿保存法への対応を優先させることにした。法的に問題がないと判断できた取引全般の契約関係書類について、電子サインを適用させることにした。

 今回、人事関連については適用を見送った。雇用契約書は対象書類の中でも最もボリュームのある文書で、電子化の効果が高いのは確実だが、「グレーゾーン」のため断念したという。要は、一連の契約書の中で電子化可能なものと不可能なものが混在していることがネックとなった。

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