[五味明子のLock on!& Rock on!]

ニッポンのSIerは2018年にどう向き合う? 富士通とCTCがぞれぞれに挑む新たなパートナーシップ

2018年1月24日(水)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

新しい年が始まってからすでに3週間が過ぎた。デジタルトランスフォーメーションや働き方改革など、ここ数年、"変化"への対応力が問われてきた日本企業と日本社会だが、2018年は本当の意味で、過去の常識を根底から覆すレベルでの変革が求められるのではないだろうか。そうした時流にあって、ITが人々と社会にもたらす影響もまた、これまでになく強く、大きなものになることは間違いない。今までできなかったことがITの力を借りてできるようになる - 2018年の本コラムではそうした日本企業の変革を支える技術や事例、さらにはそれらに深く関わる人々の姿を数多く紹介していければと思う。

 今までできなかったことをできるようにするためには、今までとは異なるアプローチで臨む必要がある。2018年最初の本コラムでは、富士通と伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)という国内トップクラスのベンダー・SIerがそれぞれに挑む、"いままでとは異なる"時代を予感させる新しい形のパートナーシップを紹介したい。

富士通×GitHub … グローバルITベンダーとして“デファクト”にあらためて向き合う

 「富士通のサービスのポリシーは“自分たちで使っているモノの良さを顧客に伝える”という点に凝縮されている。だからGitHubのサポートも、まず我々が使い込んでGitHubの良さを知るところからスタートした」(富士通 デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 BPS統括部 シニアマネージャ 川合康太氏)──。富士通は2017年4月から、同社が提供するパブリッククラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5(以下、K5)」において「GitHub Enterprise」のサポートの提供を開始しているが、これはGitHubにとって世界で2社目となるマネージドサービス契約となる。富士通とGitHubという取り合わせに疑問符が浮かんだ向きも少なくないだろうが、「ソースコード管理はGitHubで行うというのが現在の世界の標準。ソーシャルコーディングという文化のデファクトスタンダードとして富士通社内にもGitHubを浸透させる必要があった」と川合氏は語る。世界に先駆けてGitHubのエンタープライズサポートを提供したのは、グローバルIT企業としてデファクトである技術トレンドを積極的に採用する必要性を富士通が強く感じているからにほかならない。

富士通 デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 BPS統括部 シニアマネージャ 川合康太氏(2017年10月に米サンフランシスコで開催された開催された「Universe 2017」でのインタビュー)

 K5というサービスはOpenStackをベースに構築されているため、運営サイドには技術的にも文化的にもオープンソースの知見と経験が多く求められる。富士通は以前からLinuxカーネルやCloud Foundryなどのオープンソースプロジェクトに積極的に関わってきたが、そうした経緯から富士通社内の一部には“オープンソース的なもの”をデファクトとして受けとめる流れが形成されつつあったという。GitHub Enterpriseのサポートの企画/検討もそうした流れから自然と生まれてきたが、やはりGitHubという世界でもっともオープンソース的なサービスと富士通の既存ビジネスを摺り合わせるのはかなりの苦労がともなったようだ。当初は富士通研究所内での試験運用からスタートしたが「GitHubはアップデートのサイクルが非常に速く、富士通のこれまでのやり方や体制では追いつかない部分が多かった。“オープンな開発”というマインド、一つのコードをみんなで良くしていくという文化を理解してもらうのに時間がかかった部分もある。また開発者の中にはソースコード管理にGitLabを使っていたり、ずっとSubversionにこだわっているユーザーもいた」(川合氏)。

 だが一方で川合氏らには「世の中が確実にオープン指向へと動いている以上、このままでは顧客の期待に応えられなくなる」という危機感があった。前述したように、富士通は顧客にサービスを提供する前に、まずは社内ユーザーに利用してもらうというポリシーがある。社内の人間を説得し、納得させた経験を顧客に伝えていく、それはGitHubの提供においても変わらなかった。「富士通はこれまでプロダクトから入る形のサービス提供が多かったが、GitHub Enterpriseはリセラーとして売るのではなく、K5の一部として提供するマネージドサービスであり、我々自身がより納得して作り込む必要があった」と川合氏は振り返る。DevOpsの世界、ソーシャルコーディングの世界ではGitHubがデファクトである。K5でGitHubのサービスを提供するからには、富士通自身がGitHubをデファクトとして扱う必要があった。

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