[木内里美の是正勧告]

RPAブームからシステムデザインの欠陥を考察する

2018年2月27日(火)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

RPA(Robotic Process Automation)ツールを本格的に導入する事例が増えているようだ。複数の業務システム間にある“切れ目”を補完することによって、業務効率アップや人為ミス抑制といった効果が見込めるが、そもそも論に立ち返ると、切れ目が生じるのはシステムデザインの欠陥とも言えるのではないだろうか──。

 1年ほど前の本欄(是正勧告)に、「RPAの導入に死屍累々の予感」と予測した記事を書いた(https://it.impressbm.co.jp/articles/-/14468)。「RPAツールは導入コストが比較的安価であることから、業務プロセスの可視化や標準化を疎かにして安易に導入し、失敗してもその失敗が隠されてしまう恐れがある。そこに死屍累々の予感はある」というものだ。

 その後の導入の様子から、いろいろな傾向が見えてきた。多くの会社が導入済み、導入中、あるいは導入を検討中と、RPAに積極的な姿勢が見られる。RPAを提供する企業への引き合いは非常に多く、テスト導入などの事案も増えているという。働き方改革とも連動しているようで、本来の働き方改革につながるかどうかはともかくとして長時間労働や単純労働から業員を解放したり、生産性改善を図りたいという企業の思いは伝わってくる。

 もう一歩、踏み込むと実態は安易導入組と本格的な導入組に分かれ、2極化の傾向にあるようだ。安易導入組は複雑な処理のデザインをしなくとも導入できるテスクトップ作業の自動化など比較的容易な用途に適用し、本格的な導入組は業務の可視化や分析をした上で適切なRPAツールを選択し、小規模な導入で検証しつつ拡大を図ろうとしている。

 最近、あるBPO(Business Process Outsourcing:社内の管理業務などの外部委託)拠点で、筆者は後者の事例を視察する機会を得た。業務体系の書き出しから始まり、BPMN(ビジネスプロセスモデリングの表記法)でプロセスを可視化。さらに全員のワークタイムを収集して分析し、定常業務の抽出とRPA導入の適応性を判断した上で徐々に導入するアプローチだった。こういう手順で導入すれば業務自動化の効果は確実なものになるだろう。

RPAの本質の理解も進んでいる

 RPAツールには、大別してデスクトップタイプとサーバータイプがある。前者をRPAとは区別してRDA(Robotic Desktop Automation)と呼ぶこともあるが、総じてRPAと呼ばれることが多い。デスクトップタイプはPCにインストールされ、画面操作や入力など人が介在する部分を自動化する。Excelのマクロ機能をPC全体に広げるようなものだ。

 単純な繰り返し作業から利用者を解放するほか処理の効率化や処理ミスの防止などに役立ち、比較的安価に導入でき、対応の柔軟性もある。しかし一定の管理下で運用しないと、EUC(End User Computing)やNotesシステムで見られたような属人化やブラックボックスが生じる恐れがある。

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