デジタルコンテンツのネット配信など、コンシューマー向けビジネスの世界ですっかり一般的になったサブスプリクションモデル。モノの所有からサービスの利用への転換を促すこのモデルは企業ITの世界でも広がっているが、まだ実績を聞かない分野がある。
「所有から利用へ」、あるいは「モノからコトへ」などと言われて久しい。少なくとも10年くらい前には言われていた。これらは購買行動の変化であり、価値意識の転換でもある。CDを購入して音楽を聴くより、Apple MusicやSpotifyと月額定額の契約をして4000万曲聴き放題のほうが、利便性もコストパフォーマンスも高い。
映画やビデオなどの動画コンテンツも、映画館に出向いたりDVDやブルーレイディスクを購入して観たりするよりも、HuluやNetflixと月額定額の契約をして廉価になった大画面液晶テレビやスマートフォンで観たほうがオンデマンドで楽しめる。書籍や雑誌、新聞も電子化が進んでいるから、自宅でタブレットや電子書籍リーダーなどを使って読み、通勤途中にスマホで続きを読むことが普通にできるようになった。
こういったデジタルコンテンツのネット配信サービスに加えて、ここ数年はアナログな分野でも急速にサービス化の動きが広がっている。例えば、洋服やバッグ、装飾品を月額定額で使い放題のサービスがそれだ。1カ月分のワイシャツ(20枚)が毎月届き、月1回返却すればよいという「ワイクリン」がある(https://yclean.co.jp/、画面1)。他人が着たシャツではなく、個人管理された自分のワイシャツが毎月クリーニングされた状態で届けられるのだ。
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ノマドワーカー向けの、スペースを月額定額で借りられるサービスもある。コーヒーは飲み放題、何回でも何時間でも使えるから毎日コーヒーを飲むだけで元が取れる。カーシェアリングとは別のモデルで、月額定額料金でBMWやベンツなどの高級車を使用できるサービスも登場した。保険や諸費用も含まれるから、車庫と燃料代だけあればいい。2018年11月には、トヨタ自動車が販売オンリーから脱却すべくこのモデルを開始すると発表があった。顧客のニーズ変化に合わせたビジネスのサービス化はより活発になっていくだろう。
いま改めて「SSME」を再考する
ところで読者の皆さんは「SSME」をご存じだろうか。「Service Science, Management and Engineering」の頭文字で、2004年に米IBMの研究所が提唱したサービスに関する学際的な体系・概念である。ぼんやりしてとらえどことのないサービスを科学的に体系化し、サービス産業の生産性向上や価値向上をはかることを目的としている。
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