[「2025年の崖」に立ち向かうERP刷新プロジェクトの勘どころ]

日本企業のERP刷新で立ちはだかる壁、海外企業との違い:第1回

2019年2月1日(金)磯谷 元伸(NTTデータ グローバルソリューションズ 代表取締役社長)

経済産業省DXレポートの「2025年の崖」が指摘するように、DXの推進にあたって基幹系システムの刷新は不可避の状況である。そんな中で多数の大企業で稼働するSAP ERP(SAP ECC 6.0)も2025年にサポート切れを迎える。だが、“日本流”でERPを構築・運用してきた国内企業にとってプロジェクトの難易度は高く、実際に刷新が進むかは不透明だ。本短期連載では、向こう数年間でERP刷新プロジェクトに取り組む日本企業が直面するであろう課題とその解決策を明らかにしていく。ERP導入支援専業のNTTデータ グローバルソリューションズで代表取締役社長を務める磯谷元伸氏が解説する。

 NTTデータ グローバルソリューションズ(NTTデータGSL)は、NTTデータグループでSAP導入・運用のコンサルティングを専業とする会社として2012年に設立された。現在、400名以上のSAPプロフェッショナルを有している。設立から7年目で、手がけたSAP導入プロジェクトは100件以上、運用維持サービス(AMS:アプリケーションマネジメントサービス)の提供も100社に届こうとしている。

 本短期連載では、当社のコア事業「SAPによるグローバル基幹系刷新プロジェクト」を多数手がける中で見えてきた、日本企業の基幹系システムが抱える課題、今後デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるうえで立ちはだかる「2025年の崖」、そして我々が考える課題解決の方向性についてお伝えしていく。

 第1回は、さまざまなところで語られてきた“日本流ERP”の課題を改めて掘り起こし、そのうえで、グローバルスタンダードとの違いについて解説してみたい。

難易度が高い日本本社へのSAP導入

 NTTデータGSLでは、これまで多数の日系グローバル企業のSAP導入を、世界各国で支援してきた。当社が属するNTTデータグループでは、海外のグループ会社が多くのSAP導入を各国・地域で手がけてきたわけだが、不思議なことに、最も導入難易度が高いのが、お膝元である日本拠点でのERP導入プロジェクトなのだ。

 NTTデータグループがグローバルで手がけるSAP導入案件には、日本企業の海外導入や外資系企業の国内導入など、多様なパターンがある。図1に、「日系企業」か「外資系企業」か、あるいは「海外拠点導入」か「日本拠点導入」かという切り口で4つの領域に分け、それぞれの領域についてのSAP導入案件の難易度を示す。

図1:グローバルから見たERP導入の難易度
拡大画像表示

領域Ⅰ:外資系企業の海外拠点導入(難易度:低)

 海外では、独itelligenceを中心に欧米4000社以上のグローバル中堅企業へのSAP導入を行ってきているが、導入期間はどれも3カ月から半年、長いものでも1年程度で収まっている。米国のNTT Data Servicesや欧州のNTT DATA EMEAでは、グローバル大手企業のシステム導入・サポートを行っているが、欧米の大手企業においても基幹系システムの導入期間は長くて2年前後、通常は1年程度で入れ替えてしまうケースがほとんどだ。よって導入の難易度は「低」と言える。

領域Ⅱ:日系企業の海外拠点導入(難易度:中)

 次に、当社が最も得意とする日系企業の海外拠点へのSAP導入展開(Global Roll-out)である。同じ海外拠点導入でも、「現地拠点=現地コンサル」による要件定義ではなく、日本本社の精緻な管理プロセスを新たに持ち込もうとすると、やや難易度が高くなる。そうは言っても、この場合は事前に本社から各地域で管理すべき最低限の項目やレベルの検討を済ませているため、比較的スムーズに導入できるケースが多い。よって難易度は、領域Ⅰよりはやや高い「中」となる。

図2:NTTデータGSLはこれまでグローバル27カ国でSAP導入を手がけてきた

 NTTデータGSLではすでに、欧米などの先進国、成長著しい中国やASEAN各国、そして南米、アフリカほか、世界27カ国以上の海外拠点への導入実績がある(図2)。それぞれ各国の税制や商習慣に苦労しつつも、当社が持つグローバルテンプレートや導入企業向けに作成したテンプレートを用いて、海外グループ会社とも連携しながら、比較的短期間で複数海外拠点に基幹系システムをGo Live(サービス開始)するという実績を積んできている。

領域Ⅲ=日系企業の日本拠点導入(難易度:高)

 日系企業の日本拠点、特に本社への導入となると、どの業務領域にERPを適用すべきか、実際の業務プロセスをSAP標準に合わせるべき否か、多くの部署を巻き込んだ様々な検討・議論が重ねられる。さらに既存システムや業務プロセスの複雑性も相まって、大規模でかつ、難易度の高いプロジェクトになりやすい。ERPにおけるアドオン比率が日系企業だけが極端に高いことも一つの特徴だ。その結果、日系大手企業の基幹系システム刷新となると、基本構想2年、開発2年、移行・試験1年と5年越しのプロジェクトになることも珍しいことではない。よって難易度は「高」。

領域Ⅳ=外資系企業の日本拠点導入(難易度:低)

 では、日本国内での導入案件がすべて長期化するのかと言えば、そうとばかりも言えない。当社では外資系企業の日本拠点へのSAP導入をお手伝いすることがある。この場合は本国やグローバルで展開されているテンプレートをベースに、日本拠点のフィット&ギャップ(Fit&Gap)分析を実施していくことになるが、日系企業の本社・国内拠点ほど大きなギャップはなく、比較的短期間で導入することができた。よって難易度は「低」となる。

 さて、このように導入パターンによってプロジェクトの難易度に違いが生じてしまうのは一体、なぜなのだろうか。以下で解説していく。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
  • 3
関連キーワード

基幹システム / ERP / SAP

関連記事

日本企業のERP刷新で立ちはだかる壁、海外企業との違い:第1回経済産業省DXレポートの「2025年の崖」が指摘するように、DXの推進にあたって基幹系システムの刷新は不可避の状況である。そんな中で多数の大企業で稼働するSAP ERP(SAP ECC 6.0)も2025年にサポート切れを迎える。だが、“日本流”でERPを構築・運用してきた国内企業にとってプロジェクトの難易度は高く、実際に刷新が進むかは不透明だ。本短期連載では、向こう数年間でERP刷新プロジェクトに取り組む日本企業が直面するであろう課題とその解決策を明らかにしていく。ERP導入支援専業のNTTデータ グローバルソリューションズで代表取締役社長を務める磯谷元伸氏が解説する。

PAGE TOP