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[ザ・プロジェクト]

ERPのクラウド移行で業務の全社最適を図る─岐阜の100年企業イビデンの挑戦

2019年2月22日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

1912年創業、ICパッケージ基板の製造を行うイビデン(本社:岐阜県大垣市)が、長年自社運用を続けたERPをクラウドに移行した。近年はERPのような基幹業務システムとて、クラウド移行が珍しくなくなっているが、イビデンのような“100年企業”の場合、残らざるをえなかったレガシーシステムも多く、イビデンはいかにしてこの移行を成し遂げたのか。プロジェクトを推進した同社 経営企画部 IT推進室 副室長の稲葉誠司氏が、2019年1月に開催された日本オラクルのセミナーで語った取り組みの軌跡をお伝えする。

 イビデンは岐阜県大垣市に本社を置く、1912(大正元)年創業の“100年企業”。ICパッケージ基板などの電子製品事業と特殊炭素製品などのセラミック事業を営む製造大手である。さかのぼると、揖斐川水系に水力発電所を設置していた電力会社、揖斐川電力にたどり着く。現在でも3つの水力発電所を運営しており、各工場に電力を供給しているという。

最初の移行対象がハンガリー支社になった理由

 そんなイビデンが、既存のオンプレミスERP「Oracle e-Business Suite(EBS)」から、クラウドERP「Oracle ERP Cloud」への移行に取り組み、2019年1月に最初の移行プロジェクトを終えた。対象システムは2005年に導入したハンガリー支社のEBS 11i。海外拠点としては最大規模のシステムになるという。

写真1:イビデン 経営企画部 IT推進室 副室長の稲葉誠司氏

 生産拠点が国内外に17工場あり、販売を国内外20拠点で展開するイビデン。その最初のクラウド移行がなぜハンガリー支社からなのかというと、規模が大きいからではなく、「イビデングループで最初に導入されたERPが、ハンガリー支社のオラクルEBS 11iだったから」(経営企画本部 IT推進室 副室長の稲葉誠司氏)だという。

 かつてイビデンではIT統制への意識が低く、システムは拠点ごとにスクラッチで開発されていた。そのため、各拠点に情報を出すように伝えてもプロセスはまちまちで、思うように収集できなかった。稲葉氏らは、「これではグローバル経営は成り立たない」と考え、共通化が図れるERPの導入を検討することにした。

 稲葉氏によると、当初は日本本社から導入しようと考えていたというが、あるとき、ディーゼルエンジン用フィルター装置の生産会社が2004年に設立されていたハンガリー支社に新工場ができるという情報が入る。

 「これなら既存システムからの移行ではなく、ゼロベースで導入することができる」(稲葉氏)と考え、ハンガリー支社にイビデングループ第1号ERPとして、当時検討の俎上に上がっていたEBSを導入することになった。

 イビデンでは、2005年のハンガリーへの導入を皮切りに、日本、ドイツ、フランス(2カ所)へと順次EBS 11iを導入、2010年からは次バージョンのEBS R12をフィリピン、マレーシア、韓国、中国、メキシコに導入しており、計10のEBSが稼働していることになる。計画では、導入と同じ順番で、2025年までにすべてのEBSをクラウド化していくことになっている(図1)。

図1:グループ各社のEBSの導入時期とクラウド移行計画(出典:イビデン)
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フルカスタマイズは残しつつ統制領域はクラウドで

 ここで、イビデンのシステム構築ポリシーを見てみる。生産システム、販売システム、生産管理システム、品質管理システム、収益管理システムといった事業に直結するシステム群に関しては、顧客からの要求の変化や社内で作っていくものの変化に追従していく「変化対応」を掲げて、フルカスタムでアプリケーションを開発し、グローバルに展開してきた。「この先もフルカスタマイズの方針は続けていく意向で、つい最近、刷新したばかり」(稲葉氏)だという。

 一方、購買や会計、資産管理といった領域についてこだわったのは「統制」。「中身に関してはごだわる必要はない。企業競争力に直結させるため、皆同じ業務のやり方をすれば良い」(同氏)という割り切った考え方をしており、この部分が今回のOracle ERP Cloudへの移行対象となっている。

 人事・給与に関しても、最初は統制をかけようと考えていたが、国によって制度が異なるので拠点に任せたほうがよいと判断し、国ごとにパッケージを選択して使うことにしたため、クラウド移行の対象外となっている(図2)。

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