[市場動向]

「データドリブンな組織」の実現で欠かせない3つのステップ

VUCA時代を生き抜く! データドリブンな組織・カルチャーへの転換[後編]

2019年5月30日(木)奥野 和弘

前編では、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)がもたらした、今日の著しいビジネス変化のスピードと、それに対応しうるデータドリブンな組織のあり方について、例を挙げながら説明した。あらゆる企業に求められる、データドリブンな組織へのトランスフォーメーションを実際、どのように進めたらよいのか。後編となる本稿では、筆者の経験を通して得たベストプラクティスを基に、データドリブンな組織の実現で欠かせない3つのステップを紹介する。

●前編はこちら(関連記事VUCA時代を生き抜く! データドリブンな組織・カルチャーへの転換[前編]

ステップ1:データを集約する

 「データドリブンな組織を実現したい」。そう決意した組織が最初に取り組むべきは、データの集約である。組織内に蓄積されたあらゆるデータを収集、蓄積、処理し、全社員が使える形にしていかなければならない。そこで、アクセス権を適切に管理でき、データを必要とする人たちにリアルタイムに提供できる単一のプラットフォームを導入することの検討が始まる。

 ここで言う「単一のプラットフォーム」であることは重要で、社内に複数の異なるプラットフォームが存在していては意味がない。カレンダーアプリケーションを例にとって説明しよう。部署AはGoogleカレンダー、部署BはOutlook、部署Cはサイボウズを使っているとする。その場合、部署をまたいだプロジェクトで、メンバーのスケジュールを確認し予定を調整するのに、幾つものアプリを開かなければならない。このような非効率は、データプラットフォームについても同様なのである。

写真1:データが集約されていない環境では、複数部門のメンバーのスケジュールを確認するのにも非効率が生じてしまう

ステップ2:データの利活用を社内に広げる

 組織全体をデータドリブンに変えるというのは大がかりなプロジェクトである。しかし、今日のビジネスのスピードは数年前とは比較にならないほど速く、常に変化している。そのため、一昔前のITプロジェクトのように、要件定義から始めて、ウォーターフォール型で構築し、完了までに1年以上かかるようなアプローチを選ぶことはできない。

 そこで、アプローチとしては「小さな成功」を連続的に獲得していくアジャイルの手法が望ましい。データへのリテラシーが高い人材が多く、かつプロジェクトの難易度が低く、データを活用することである程度ビジネスインパクトのある成功が見込める部門や領域、チームを最初のスコープとして定めることを薦める。これらの部門で早期かつ確実に成功体験を作り上げることができれば、その成功事例を展開するかたちで、データドリブンな組織となることの価値を社内に訴求し、全体の活動を盛り上げていけるようになる。

 逆に、蓄積されたデータの精度が低く、また適切に構造化されていない部署からアプローチした場合、データのクレンジングなど思わぬところで多くの労力を無駄にするといったケースも生じてしまう。データに知見のない部署から始めたせいで、社員からの強い反発を招き、導入から半年が経ってもデータ活用がまったく浸透しないといった壁にぶつかる企業も少なくないので留意されたい。

ステップ3:データによる意思決定を組織のカルチャーとして定着させる

 たとえ高価で洗練されたビジネスダッシュボードを用意しても、扱う種々のデータが最終的に意思決定に生かされ、ビジネス成長につながらなければ、その導入価値はない。組織は、データに基づいた意思決定が推奨される環境づくりまで意識して全体を整える必要がある。

 上述したように、先行してデータドリブンな組織へと生まれ変わった部署の成功体験を他部門へと普及させる。その活動と同時に、マネジメント層が常にデータを使ってディスカッションを行い、アクションを実施する手本を示していく。これを意識的にやっていけば、新入社員であっても、入社から短い期間で常にデータに基づいた報告や意見が求められる環境に順応していく。筆者の環境で経験済みである。

写真2:データドリブンの最終ステップは、データによる意思決定を組織のカルチャーとして定着させることだ

 また、データドリブンな組織では、データに必ずしも明るくない社員でもデータを使いこなせる必要がある。例えば、Domoプラットフォームには、データを簡単に共有し、プラットフォーム上のチャットでデータに紐づいたかたちでリアルタイムな議論を行いながら決定されたアクションを管理できる仕組みが備わっている。しかも、これらをすべてモバイルから行えるため、データから何らかの異変に気づいた時には、会議の開催を待ち、PCを開く必要すらなく、すぐさまに意思決定を行える。

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 以上、前編(関連記事VUCA時代を生き抜く! データドリブンな組織・カルチャーへの転換[前編])と後編の2回にわたって、VUCA時代に求められるデータドリブンな組織、そしてカルチャーへのトランスフォーメーションの道のりと実践のポイントを説明してきた。

 最後に忘れてはならないこととして、データドリブンな組織への変革は困難ではあってもあらゆる企業がやり遂げる必要がある。また、その価値のきわめて高い変革だということを強調しておきたい。筆者自身、その変革がもたらす環境の実現に臨み、体験し、組織のビジネス変革を成功させることができた。適切なアプローチで臨めば、データドリブンな組織への変革は間違いなく実現可能なのである。


●筆者プロフィール
奥野 和弘(おくの かずひろ)
Domo ディレクター プリセールスソリューションズ
2015年にDomo入社。2017年2月より現職。Domoプラットフォームを活用して課題を解決するソリューションコンサルタントとして、顧客企業のPDCAサイクル改善やデータドリブンな組織・カルチャーの推進、ビジネス課題の解決と最適化に貢献している。Domo入社以前は、複数の外資系IT企業でエンジニアやプリセールスを経験。保険・通信・小売・製造・公共事業など幅広い顧客を担当する中で、さまざまなビジネス課題解決に尽力した経験を持つ。(2019年5月執筆時点)

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データドリブン / VUCA / デジタルトランスフォーメーション / データマネジメント / Domo

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