[インタビュー]

拡張アナリティクス、アナリティクスハブ、グラフ分析─次に来るBI/アナリティクス技術は?

米ガートナーのBI担当アナリスト、カーリー・アイディーン氏に聞く

2019年6月18日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

約1兆7000億円という金額の大きさが目立ったSalesforce.comによるTableauの買収。しかしそれだけに目を奪われるべきではない。10年以上にわたってBI市場を牽引してきたセルフサービス/ビジュアル重視のBIツールから、AI(人工知能)との融合による次世代のBI/アナリティクスツールへの移行を知らせるサインと位置づけることもできるからだ。そこで、来日した米ガートナーのアナリストに次世代BI/アナリティクスについて聞いてみた。

BI/アナリティクス分野で新たな地殻変動が始まる

 米セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)による米Tableau(タブロー)の買収、その少し前のグーグルによるLookerの買収など、BI(ビジネスインテリジェンス)分野で大きな動きが続いている(関連記事欲しかったのは「顧客を正しく見て理解する力」─Salesforce.comによるTableau買収の背景)。10数年前に相次いだ、オラクル(Hyperionを買収)やSAP(BusinessObjectsを買収)、IBM(Cognosを買収)といった大手ベンダーによるBI企業買収を思い起こさせるほどだ。

 一方で、DataRobotH2O.aiなどBIやマシンラーニング(機械学習)を自動化し、統計分析手法を知らなくても高度な分析を可能にする製品も登場している(関連記事「データ専門家いらずの機械学習」は本当か?「Driverless AI」の特徴と仕組み)。

 さまざまな動きを見るに、今、BIやアナリティクスの分野で何らかの大きな地殻変動が始まっているかとさえ思える。こんな状況を分野専門のリサーチャーはどのように見ているのか。米ガートナー(Gartner)でビジネスアナリティクスとデータサイエンスを担当するカーリー・アイディーン(Carlie J. Idoine)氏(写真1)にインタビューする機会があったので聞いてみた。

 簡単にまとめると、テクノロジーが大きく変わる時期であり、どんなソリューションをどう活用するかで成果が変わるため、企業はBIツールの動向を継続的にウォッチする必要がある、ということになる。以下、一問一答形式でお伝えする。

写真1:米ガートナーのカーリー・アイディーン氏

──Tableauは、ガートナーのBI/アナリティクス分野のマジッククアドラント(Magic Quadrant:ガートナーの市場別プレーヤーポジションマップ)においてリーダーに位置する有力ベンダーです。そんな企業をセールスフォースが157億ドル(約1兆7000億円)で買収します。どう見ていますか?

 率直に言って、買収金額の大きさも含めて非常に驚きました。その意味では想定外ですが、しかし視野を大きくとるとBI/アナリティクスのあり方が新しいフェーズに入りつつあると見ることができます。買収額は約26億ドル(約2800億円)ですが、2019年6月初めには、グーグルがビッグデータのビジュアル分析ツールを提供するLookerを買収しました。同社は設立が2012年のスタートアップであることを考えると、26億ドルは決して小さいとは言えません。

 この動きについて、ガートナーがどう考えているか、企業が何を知るべきかについて、私も含めて当社のアナリストがブログで見解を発信しています(関連リンクThe Week The Modern Analytics and BI Market Changed Forever)。これを読んでいただければ、示唆を得ていただけると思います(囲み記事)。


BI/アナリティクス市場に関するガートナーのアナリストの見解

 アイディーン氏が示したブログは、確かに示唆に富むものだ。要旨は下記のとおりである。

●グーグルとセールスフォースは今回の買収によって、「Power BI」を提供済みのマイクロソフトにポートフォリオ(機能のラインアップ面)で見劣りしないようになった。特に、グーグルにとっては、Lookerの買収により、欠けていたアナリティクススタック(分析機能)のギャップを埋められる。

●セールスフォースの「Einstein Analytics」は、Tableauとは重複する部分がある。そのため、買収の論理的根拠および相乗効果はあまり明確ではない(筆者注:Einsteinの場合、分析結果はともかくビジュアル表示機能が弱いので、それをTableauが補完するという見方ができる)。

●大手クラウドベンダーであるグーグルとセールスフォースは今後、共にオンプレミスの分析機能を持つことになる。これは、特に大企業ではすべてをクラウドで行うのではなく、オンプレミス/クラウドを混在させたハイブリッドアプローチが必要であるという現実を反映している。

●両社を含めた最近の買収は、2007~2008年に相次いだオラクルやSAP、IBMによるBI企業の買収ラッシュに似ている。各社の当時のアプリケーションとテクノロジースタックを補完する動きだった。

●最近の買収はグーグルやセールスフォースだけではない。SisenseによるPeriscope Dataの買収、AlteryxによるClearStory Dataの買収、およびLogi AnalyticsによるZoomdataの買収もある。

●伝統的なBI市場のリーダーが買収された後、TableauやQlikなどのセルフサービスBIベンダーが台頭し、BI市場の拡大を牽引した。ここから考えると、セールスフォースなどクラウド大手による買収や統合はオーグメンテッドアナリティクスのような、次のイノベーションを生むだろう。


●Next:拡張アナリティクス、アナリティクスハブ、グラフアナリティクスとは?

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