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第一生命の中長期IT戦略は攻めと守りの「バイモーダル」─オンプレを活かしつつクラウド移行を推進

2019年10月15日(火)杉田悟

少子高齢化、人口減少が進む日本だが、その影響が直撃する業界のひとつが保険業界だ。今後、ビジネスモデルの改革が必須という状況といえる。大手生保の一角である第一生命保険は、次世代ITシステム基盤「ホームクラウド」を構築しデジタルトランスフォーメーション(DX)改革に臨もうとしている。その第一フェーズは、2019年9月末に稼働した。2019年10月10日、日本マイクロソフトの記者説明会にゲストとして招かれた第一生命保険ITビジネスプロセス企画ユニット長ITビジネスプロセス企画部長の若山吉史氏が、その背景にある同社の中長期IT戦略「バイモーダル戦略」と「ホームクラウド」の詳細を解説した。

 既報のとおり(関連記事第一生命、次世代システム基盤「ホームクラウド」をMicrosoft Azure上に構築)、第一生命保険は日本マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」上に「ホームクラウド」と呼ばれるシステム基盤を構築した。その背景には同社の中長期IT戦略「バイモーダル戦略」がある。第一生命保険の若山吉史氏による詳細の解説を紹介する。

社会環境の変化に会社の仕組みも対応

写真1:第一生命保険ITビジネスプロセス企画ユニット長ITビジネスプロセス企画部長の若山吉史氏

 若山氏によると、生命保険業界の環境は大きく変化を遂げているという。これまで生命保険は社会保障制度の補完としての役割を担ってきた。社会への最大の価値貢献は、保険金や給付金を顧客に確実に支払うことにあった。顧客の万が一の場合の「プロテクション」が生命保険であった。

 しかし、少子高齢化の進展など社会環境が大きく変わるにしたがい、新たな役割を担うことになった。それが「顧客の健康増進やクオリティ・オブ・ライフの向上を担う」ことだ。予防や早期発見で顧客の健康を維持する「プリベンション」が新たな役割として重要視されている(図1)。

図1:生命保険会社の使命はプロテクションからプリベンションへ(出典:第一生命保険)
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 「このような新しい価値を提供していくためには、生命保険会社の仕組みも変わっていかなければならない」。そのためにもデジタルトランスフォーメーション(DX)は必須ということになる。

 第一生命として、DXの最初の事例といえるのが「健康第一」というスマホアプリの開発だった。生命保険会社の役割の変化を受けて、顧客の健康を維持・向上させる取り組みを支援するためのサービスだという。2017年3月に開始したこのサービス、第一生命にとって初めての本格的なクラウド運用ともなった。そのサービスのクラウドプラットフォームに選んだのが、日本マイクロソフトのMicrosoft Azureだった。

中長期IT戦略は「バイモーダル戦略」

 健康第一の開発・運用で蓄積したクラウドのノウハウが、第一生命の中長期IT戦略に活かされている。その名称は「バイモーダル戦略」。モード1、モード2という2つのモードからなるIT戦略だ(図2)。

図2:バイモーダル戦略のモード1とモード2(出典:第一生命保険)
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 モード1は「守りのIT」。既存の業務効率化のためのシステム、SoR(Systems of Record)の領域だ。モード2は「攻めのIT」。顧客とつながるためのシステム、SoE(Systems of Engagement)の領域となる。モード1については徹底的に効率化を図り、モード2に財源を振り向けていくのがバイモーダル戦略となっている。

 バイモーダル戦略の実現方法として考えたのが、段階を追ったシステム構造改革だ(図3)。第一生命ではバイモーダル戦略を打ち出す以前からレガシーモダナイゼーションに取り組んでいる。

図3:現在は「将来像」の端緒についたところ(出典:第一生命保険)
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 生命保険会社のシステムの中心は、契約管理システム。膨大な数の顧客の契約データを長ければ5、60年分継続的に保存している。この巨大で複雑なシステムは、自前で開発したメインフレームで動いている。「スパゲッティ化まではいっていないが、どんどん新しい機能を追加している」状況だった。新規の機能を加える場合、既存の領域についての調査・テストに時間がかかるといった弊害が生じていたという。

●Next:ホストをスリム化する「DNA計画」とは?

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