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[インタビュー]

コンテナ実行環境はキャズムを超えたのか─Red Hat OpenShiftの普及状況を同社幹部に聞く

米レッドハット コンサルティング部門バイスプレジデント ニック・ホップマン氏

2019年11月20日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

アジャイル開発やDevOpsに欠かせないとされる、モダンなアプリケーション開発・実行環境。その有力株の1つと言われるコンテナアプリケーション開発・実行プラットフォーム「Red Hat OpenShift」が登場して久しいが、実際、企業の採用はどこまで進んでいるのか。同社コンサルティング部門バイスプレジデントのニック・ホップマン(Nick Hopman)氏は「アーリーアダプター(初期採用者)からアーリーマジョリティ(前期追随者)に移行しつつある」と話す。氏に詳しい状況を聞いてみた。

 経営環境やテクノロジーの変化に俊敏に対応する、すなわち企業が事業活動をアジャイル(agile:機敏、俊敏)にすることは「デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要条件の1つ」とされる。それをCIOやIT部門がリードし、サポートするには自らがアジャイルにならなければならないという点を、関連記事米空軍、ボーイング、DBS銀行…世界の大手企業・組織がアジャイル開発に挑む理由)で示した。

写真1:米レッドハット コンサルティング部門バイスプレジデントのニック・ホップマン氏

 では、IT部門がアジャイルになるためには何が必要か? アジャイル開発手法のスキル獲得は当然として、DevOps(開発と運用の一体化)やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)と呼ばれるアプリケーションの開発・実行・運用に関わるテクノロジー基盤の整備、マイクロサービスやコンテナ技術の活用などが答えになる。単純化すればモダンなコンテナ型アプリケーションの開発・実行プラットフォーム(PaaS)を装備し、活用することだ。

 実際のところ、そうしたプラットフォームはどれだけの広がりを見せているのだろうか。企業は、どんなタイミングでコンテナ技術ベースのアプリケーション開発に取り組むとよいのか──。この分野の有力製品の1つとして「Red Hat OpenShift」を提供する米レッドハットでコンサルティング部門の責任者を務めるニック・ホップマン氏(写真1)に聞いた。

OpenShiftは今や先進企業だけのものではない

──OpenShiftの最初のリリースは2011年5月で、2014年4月にコンテナ技術のDocker(関連記事)、2015年7月にKubernetes(関連記事)を取り込むなど機能を拡充し、現在でも名称も「Red Hat OpenShift 4」になっています。最初のリリースから8年以上が経過したわけですが、普及状況をどう見ていますか?

 数字は言えませんが、かなりのペースで成長を続けています(筆者注:レッドハットのWebサイトには導入社数が1000社を超えているとある)。米国が最も先行していますが、欧州やアジア太平洋地域、南米など他の地域でも近年は伸びが加速しています。

 少し前まで、OpenShiftの顧客は、何らかのクラウドサービスを提供するような先進企業が中心でした。今は次の成長の波が来ていると感じています。別の表現をすれば、世界のあちこちでアーリーアダプターからアーリーマジョリティが導入する段階に移りつつあります。必然的に独立系ソフトウェア企業や情報サービス企業などIT企業でも採用が進んでいます。

 日本も例外ではありません。三井住友銀行、日本総合研究所、ふくおかフィナンシャルグループといった一般企業に加えて、NECや日立システムズ、野村総合研究所などのIT企業がコンサルティングや教育サービスを開始しました。企業が採用し、企業をサポートするIT企業にも広がっているわけです。この事実は、すなわち全体としてOpenShiftのエコシステムが成長していることを意味します。

──キャズム理論でいう普及への「chasm(溝、隔絶)」を超えつつあると。その原動力は何だと考えますか? 以前から提唱されてきたコンテナやマイクロサービスといった技術の可能性への理解が進んだのか、それともアーリーマジョリティが導入できるレベルまでテクノロジーが成熟してきたのか、どちらが大きいでしょう。

 当然、ニーズとシーズの両方が相まってのことですが、私の立場ではOpenShiftというプラットフォームの安定性や周辺ツールの機能などが成熟したことが大きいです。企業が自らできる範囲が広がり、導入の敷居が下がったわけです。"Do It Youreself"ですね。

 好例がKubernetesのクラスターを効率的に管理できるオープンソースのツールキット「Operator Framework」です。これは、Operatorという、コンテナアプリケーションの展開・管理にまつわる諸作業をコードで記述できる仕組みを用いたもので、運用チームは大量の作業から解放されるようになります(図1)。

図1:Operator Frameworkで複数のKubernetesクラスターを管理するための「Operator Lifecycle Manager」(出典:米レッドハット)

●Next:OpenShift、その導入の機は熟したのか?

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Red Hat / OpenShift / PaaS / コンテナ / DevOps / アジャイル開発 / 三井住友銀行 / 日本総合研究所 / ふくおかフィナンシャルグループ

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