[市場動向]

島津製作所、ダイキン工業、横河電機…
まったく異なるグローバル企業3社の情報システム

2014年7月18日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

2014年7月17日、ERP研究推進フォーラムは<グローバル化と創造的イノベーションで日本の未来を拓く>と題したイベント、「Business Innovation Summit 2014」を都内で開催した。当日のプログラムの中でも、とりわけ興味深い話題が議論されたパネルディスカッションのトピックを紹介する。

 島津製作所、ダイキン工業、横河電機。いずれも海外売上高の比率が60%を超え、グローバル事業を主軸とする国際競争力の高い企業である。2014年7月17日、ERP研究推進フォーラムが開催したセミナーのパネルディスカッションにおいて、この3社の意外な違いが明らかになった。事業のグローバル展開を支える情報システムの姿が、まったく異なっていることだ。

 まず横河電機は”One Global Yokogawa”を標榜し、世界各地のシステムをSAP ERPに一本化しつつある。それも各拠点がSAPを導入するのではなく、同じSAPのインスタンスを全社が利用する形である。必然的にITインフラはもとより、業務プロセスやマスターデータも同一になる。すでに北米と日本の移行を終え、今後数年かけて中国や欧州、アジア、南米などを同じインスタンスに収容する計画という。

 ダイキン工業は、日、米、欧、アジア、中国という各リージョン(地域)ごとにシステムを統合するのが基本方針。グローバルに統合することはしない。ERPを導入する基準は売上高100億円だという。「買収した会社は人事や組織、システムなどを3年間、買収時のものを尊重する」。リージョンごとにERPの導入を進めているが、日本は具体的な導入計画がないという。ただし会計に関してはグローバル標準を決め、遵守させるようにしている。

 島津製作所は、両社の中間。特定の情報システム、具体的には生産管理や販売の実績管理はグローバルで統一する。地域を超えて同じ顧客にサービスすることを考えると、当然かも知れない。しかし、地域特性が強い営業支援などは地域別。それゆえマスターデータも製品関係、顧客(既存)は統一しているが、そのほかは拠点別になっている。ちなみに日本のERPはOracle EBSである。

アプローチは違えど、課題や悩みは共通する

 各社のグローバルシステム整備のアプローチはこのように異なるが、課題や悩みとなると共通点は多いようだ。「グローバル展開で一番困ったことは」との質問に対し、「各拠点にとっては、自分たちの業務を回すことが最優先であって、グローバルはどうでもいいという意識がある」(島津製作所)。ダイキン工業も横河電機もこれに同意していた。

 それに対してどうするか。「会計を標準化するため、年1回、各国から責任者を集めて数日間議論する」(ダイキン工業)」、「当社も同じ。関係者を集めて説明したり、議論することが大事」(横河電機)など、フェース・ツー・フェースでの意識合わせが欠かせないとの認識だ。

 パネルディスカッションのテーマは、「成長するグローバルビジネスを支えるITの展開と地域・拠点の見える化」。これに関してユニークな議論もあった。何を見える化するのか、見える化すると何がいいのか、といった設問だ。

 これに対し「見える化は諸刃の剣。システムの企画時点から数年が経過し、経営陣が代わっていると、詳細なデータを見て何をすればいいか、経営陣が戸惑う。だから具体的なアクションにつながらない」、「データが見えると経営層は心配になる。すると周囲は、そのためだけに手間をかけて調査する必要がある。だから何でも見える化しないようにしてくれ、との要望がある」という。結局、「データを集めて可視化し、それで何をするのかという策がない。経営のグローバル化が必要なのでは?」というのだ。

 ただし、見える化によって「要望に合わせて、いかに無駄なく製品を作るかを検討できるようになった」、「海外拠点における経営課題を、本社側でより早く察知できる」、「各リージョンの状況を比較し、売上高や利益などとは異なるKPIを設定。各国幹部の報酬基準に取り入れる動きもある」といった模範的な回答も当然あった。

 それでも、苦労して見える化したのに、経営層からはそれほど高い評価が得られない…。そんなITリーダーの苦労が伺える話である。なお、パネリストは、島津製作所が執行役員業務システム統括部長の馬瀬嘉昭氏、ダイキン工業がIT推進部IT企画部長の西川昌憲氏、横河電機がコーポレート本部YGSP(Yokogawa Global System Project)部長の今川克巳氏。司会はERP研究推進フォーラムの理事長である斉藤良一が務めた。


 

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