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[CIOのための「IT未来予測」将来を見据え、目前のITを評価せよ]

ブロックチェーンも活用する“e国家”エストニアにみる戦略としてのIT

2016年9月19日(月)大和 敏彦(ITi代表取締役)

ITを活用し競争力を高めなければならないのは企業だけではない。国家も同様に、ITを活用することで世界を構成する一員としての責務を果たすと同時に国民の豊かな生活を実現する必要がある。そうした中、国家の仕組みのデジタル化において先進国として知られるのが東欧のエストニア共和国だ。同国のデジタル化の状況と成功要因を見ることによって、先端ITの推進に必要な要件を考えてみたい。

 前回の『ブロックチェーンによるイノベーションを加速するOSSの「Hyperledger」』において、ブロックチェーンの応用が色々な分野で始まっていることを紹介した。そうした中には、国家レベルで広い応用を目指している例も出てきている。その最右翼がエストニア共和国である。最近も「ブロックチェーンをIDカードに導入」「医療データの記録にブロックチェーン利用へ」「ブロックチェーンで公共のサービスを提供開始」といった同国に関する記事が多数報道されている。

図1:エストニア共和国における「e-State」の歴史図1:エストニア共和国における「e-State」の歴史
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 エストニア共和国は、ラトヴィア、リトアニアとともにバルト3国として旧ソ連から独立した、人口約130万人の国である。現在はEU(European Union)に加盟している。「e-State」として政府(統治)の再定義から始め、デジタル化によって人々の生活やビジネスをシンプルにすることを推し進めてきた(図1)。「国にとって必要なのは領土ではなく人」という考えをベースに、人や国に関するデータおよび、国の仕組みをサイバー空間上に実現している。

 e-Stateのベースにあるのは、国土のどこからでもインターネットへアクセスできるコネクティビティ(接続性)とデジタル認証技術によって個人情報を暗号化して埋め込んだIDカードである。インターネットやIT環境へのアクセスは「人が持って生まれた社会的権利」と考え、その環境を実現するためのプロジェクトを1996年に始めている。

 一方のIDカードは2002年から、その所持を15歳以上の国民に義務付け、身分証明書と運転免許証、健康保険証などを統合した。2007年には、モバイル機器をIDに使えるモバイルIDも開始している。こうした取り組みの結果、エストニアはEU圏でのデジタルパフォーマンスやデジタル化の競争力を統合したインデックス「EU Digital Economy & Society Index」において第1位にランキングされている。

ビジョンとしての7つの「E」

図2:エストニアがe-state構築に向けて掲げるビジョン図2:エストニアがe-state構築に向けて掲げるビジョン
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 エストニアはe-state構築に向けたビジョンとして、以下のような複数の「E」を打ち出している(図2)。

Empowering(エンパワー、権限の付与):国民に多くの権限を与え、デジタル化によってほとんどの申請やサービスをオンラインで提供する。。IDカードを使えば完全ペーパーレスの電子署名によって、納税や、警察関連、教育、医療、選挙、会社設立、パーキングなどのサービスすべてを利用できる。例えば会社設立登記では、IDカードまたはモバイルIDを使い「e-Business Resister」というサイトにアクセスすれば、申請内容の登録、諸費用の支払いなど4つステップを踏むだけで、最短18分で完了というケースもある。そのため新規企業の98%がオンラインで登記している。

Easy(簡易化):すべてのサービスには1つのWebサイトからアクセスでき、デジタル化したソリューションを簡単に使える。利用者自身にWebサイトを使うことによるメリットが出るような仕組みになっている。

Efficient(効率性):デジタル化によって時間やお金などの節約を図る。「e-Tax」と呼ぶ税金申告システムでは、2000年にオンライン申請を開始し、現在では国民の95%が使っている。e-Taxでは、5クリックで申請が終わるという効率化とともに、還付金の振込が書類では数カ月かかるところを3~5営業日で行われるというインセンティブも設けている。

Economical(経済性):仕組みをデジタル化することで、業務に要する時間や人の増加を防ぎ、運用コストの節約を図る。e-Taxによる税金申告では電子化比率の増加に伴って、個人に関する会計士や税理士の仕事や関連業務は減り、税金に関する業務効率向上やコスト削減に大きく寄与している。

Everywhere(どこでも):「社会的権利」であるコネクティビティとサービスへのアクセスを国内全土だけでなく、海外からのアクセスにも広げている。

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