[ザ・プロジェクト]

ITグランドデザインで5年後の勝者を目指す―タウ

2017年2月28日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

デジタルビジネス時代に入り、ビジネス環境の変化は高速化している。そのスピードについていくため、新たなシステムを構築する機会や既存システムに手を入れる機会が増加している。しかし、近視眼的に改修を進めていくと、いつかそのしわ寄せが来る。そうならないために「グランドデザイン」がある。わかっていてもなかなか実践できないグランドデザインだが、右肩上がりの業績を続ける自動車売買のタウが、今後を見据えてグランドデザインを策定、その第一歩を踏み出した。情報システム部長の河内山高広上席執行役員に聞いた。

システムが会社の成長スピードについていけなくなった

なぜ、ITグランドデザインの作成に至ったのか。

買取を重視したタウのウェブサイト

 一言でいうと、「システムが会社の成長スピードについていけなくなったから」です。販売の核となっている現在のウェブサイトは、2010年に構築されています。当時の事業戦略上の優先課題は、買い取るべき損害車の確保でした。そのためサイトは、いかに売りやすく、買いやすいかを考えてデザインされていました。その甲斐あって、企業は成長を続けたわけですが、その後業容の拡大や商材の多様化など、ビジネス環境が大きく変わりました。すると顧客ニーズとのギャップが顕著になってきました。バックエンドの業務システムについても、現在のままでは非効率化は免れないと考えていました。これまでは環境の変化に対して、その場しのぎの改修で対応してきましたが、システムは複雑化し、どうにかしないといけないと考えていたこともあります。ちょうど販売システムを刷新するタイミングが来たので、この際社内システム全体を見直そうということになりました。どうせシステム全体を見直すのであれば、業容の更なる拡大やビジネス環境の変化など、この先予想される変化にも対応したものにしたいと考え、中期経営計画に合わせたグランドデザインを作成することにしました。

担当会社は、どのようにして選定したのか。

 ITコンサルティング会社とのルートが特になかったので、規模感や求めているものに合致する成果を上げることができそうか、事業範囲が合っているかといった視点で様々なITコンサル会社を調べました。その結果まずは12社をリストアップしました。その中には、取引銀行や既存のITベンダーからの紹介もありましたが、今回はしがらみではなく、プロジェクトにいかにふさわしいかを重要視しました。それを念頭に12社の顧客層の規模などをヒアリングし、6社に絞り込みました。この6社に、タウの現状や課題を資料にまとめて提出、それをもとに各社にプレゼンテーションを行っていただきました。

最終選定の決め手となったのは。

 コンペに際して、最も重要視したのが、提案の実現性でした。グランドデザインを策定するのが目的ではなく、それを実現して初めて意味をなすものだからです。今回グランドデザイン策定を依頼することになったウルシステムズからの提案署は70ページにおよぶものでしたが、社内への定着など実行するプロセスまでがきっちりと示されていました。また、タウの良い面も悪い面も公平に評価されており、「こういうところが足りないので、こういうものが必要です」と、明快で現実的な提案をしてくれたことも大きかったといえます。また同社は、こちらがコンペへの参加を依頼する段階で、タウを理解しようという意欲が見られました。それがこの結果につながったと考えています。

グランドデザイン策定のスケジュールは。

 6社によるコンペを開催したのが2016年の春で、6月にウルシステムズに決定しました。7月、8月の2カ月間を準備期間として設け、9月からグランドデザインの作成に入りました。ウルシステムズから4名の常駐を配備してもらい、11月に完成しています。約3カ月間の工程です。12月中にグランドデザインを社内にアナウンスし、社員からのフィードバックを収集、それを反映させたものを完成版として、2017年1月からグランドデザインに沿ったIT施策を開始しています。まず最初に手を付けたのが、販売ウェブサイトの新規開発です。

5年後の情報システムのあるべき姿とは

グランドデザインの具体的な内容は。

5年後に市場がとうなっているかは誰にもわからない

 今回のグランドデザインは、中期経営計画ともリンクした5年計画のものとなっています。ここで示されたのが「5年後の全体のシステムはこうあるべき」という姿です。こうあるべき5年後の姿を指標に、そこにたどりつくためにはシステム改修や新規システムの開発をどのようなロードマップで進めていくか、それにはどれくらいの予算が必要となるかが示されています。こうあるべき姿にたとりつくための道のりは、一本道とは限りません。グランドデザインでは5つのパターンが提示されています。例えば、すべてのシステムを入れ換えてしまうパターンもあれば、多くのシステムを新規開発して一部だけ改修するパターン、ほとんどを改修ですませるパターンなどもありました。それぞれに応じた投資額や、経営的な効果も明示され、経営層が判断を下しやすいものとなっていました。

5年先というと、途中で何が起こるかわからない怖さがあるが。

 先ほど5つのパターンがあると説明しましたが、実はその1つ1つのパターンについても更に枝分かれしているのです。予期せぬ事態に備えた緊急時対応計画をコンテンジェンシープランといいますが、この先市場や環境の変化が起こることを想定したコンテンジェンシープランを1つのパターンにつき5つ用意しています。ビジネスは、チャンスがどこに転がっているかわかりません。新たなビジネスチャンスに集中的に投資したい時には、システムで新たな方向性に対応できるようにしました。無論、リスクも視野に入っています。特に、タウの取引がある海外の地域は政情が不安定な所も多く、例えば貨幣価値が暴落するなどの不測の事態が起こることも想定する必要があります。そうなると、別のマーケットで埋め合わせをしなければなりません。そういったリスクにも柔軟に対応できる設計となっています。

IT投資に対する経営層の考え方は。

グランドデザインについて語る河内山氏

 タウの収入源のほとんどがウェブサイトをトリガーとしたものです。唯一の販売ルートがITといっても過言ではないので、経営層のITへの関心はきわめて高いといえます。社内の投資比率でいえば、人件費の次に多いのがIT投資です。また、ITの技術によって顧客の利便性が変わり、他社との差別化要因になります。一方でバックエンドのシステムでも1つの業務が自動化されると、売り物である自動車1台当たりの販管費を下げられるかもしれない。そうなれば顧客に安く提供でき、競争力の向上につながると考えています。つまり経営層は、ITを攻めの道具として認識しているということです。だからこそ、今回のグランドデザインは、企業そのものの将来像を捉えたものとなっているのです。

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