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[ベテランCIOが語る「私がやってきたこと、そこから学んだこと」]

デジタル時代を迎えて日本企業のIT部門の向かうべき方向(2)

第14回

2017年3月6日(月)寺嶋 一郎(元・積水化学工業情報システム部長)

前回、デジタル時代はソフトウェアの時代であり、IT部門が飛躍するチャンスであると述べた。今回は、CIOやIT部門がどちらの方向に向いて、何をすべきなのか、筆者の思うところを述べてみたい。何かを読み取っていただければ幸いである。

 デジタル時代とは、アイデアとそれを実現するソフトウェアが新たなビジネスを起こす時代で、あらゆる企業がソフトウェア企業になっていかざるを得なくなる。まさにソフトウェアの時代が来た。日本企業でソフトウェアに一番関係している部門はIT部門である。そう、ソフトウェアの時代こそ、IT部門が脚光を浴びる時代であり、ビジネスの中心になる時がついにやってきたのだ。

 ところが昨今「デジタルトランスフォーメション」の推進役として、CDO(Chief Digital Officer)という役職が注目を浴びている。最高デジタル責任者、すなわち「デジタル」化の推進役としての役割を果たす役員である。本来なら「デジタル」に一番親和性の高いCIOなりIT部門がその役割を果たすべきではないのだろうか。そうならない理由のひとつに“IT部門の劣化”とでも呼ぶべき実態がある。多くのIT部門は深刻な問題を抱えている。

崖っぷちのIT部門

 一番の問題は社内のIT導入に際してIT部門がイニシアティブをとれてないことだ。汎用機の時代は多くの企業が内製主体でソフトウェアを開発していて、それなりにイニシアティブをとれていた。1990年代以降、IT部門はコストセンターであるといった認識のもとで要員数を減らされ、利用部門とITベンダーの仲介をする程度のことしかできなくなった。「餅は餅屋に」という考えもあり、その中でITのアウトソーシングやシステム子会社の売却も進んだ。一方でオープン化もあって利用部門が直接ベンダーに発注し、システムを構築する動きも広がった。時代の風が、IT部門を弱くさせる方向に吹いていたと言えるかもしれない。

 かといってIT部門が被害者とは限らない。システム案件の複雑さは増し、案件数も増加する中で、人手不足を理由に自らの仕事をITベンダーに“丸投げ”するようなことも散見される。もともと企業のIT部門の社員は、他部署から移動してきたり、ITが専門でないことが多いので、そのほうが楽なのだ。こうして、徐々にベンダーにおんぶにだっこの状態になり、行き着くところ、要件定義や企画・提案までもベンダーに頼むようになった。ベンダーから見れば売上が上がり、頼られるのは大歓迎だ。こうしてIT部門の空洞化が進み、肝心のITに関する実力がなくなっていく。

 空洞化したIT部門は、既得権益であるITに関する承認権限にしがみつく。ここに官僚主義が入ってくると、IT部門がビジネスの足を引っ張ることにもなりかねない。本来、IT部門はビジネス部門のニーズをきちんと理解して自社に最適なシステム化を担うべき存在である。しかし知識、知見で上回るベンダーに任せれば何かあっても責任を回避できる。結果、ベンダーの言いなりになり、高コストで課題の解決には遠いシステムを作ってしまうのだ。

 さらに、こういう話をよく聞く。「クラウドのSaaSを使いたくて相談に行ったが、セキュリティ上の課題を盾に、IT部門はすぐにNoと言う。埒が明かないので、ビジネス部門はIT部門を無視して直接ITベンダーと取引する。“シャドーIT”の広がりに拍車がかかり、セキュリティはかえって悪化している」。かなり厳しめに書いてしまったが、さすがにここまでのことが多いわけではない。それでも利用部門からこんなふうに見られることもあるという話である。

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