[知っておいて損はない気になるキーワード解説]

やっぱりすごい「3Dプリンター」の実力

知っておいて損はない 気になるキーワード解説

2017年4月28日(金)清水 響子

マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP……。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャ、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を、「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で、分解していきたいと思います。今回取り上げるのは「3Dプリンター」です。

 出掛けに東京オフィスから設計データをアップロード。12時間後、出張先のトロントでできあがった試作品をピックアップしたら、そのままプレゼン会場へ―。一時期のブームが一段落した感の3Dプリント技術は、すでにそんな仕事のスタイルを実現し、再燃の兆しを見せています。

【用語】3Dプリンターとは

 3Dプリンターの何がすごいのか実感するため、板金加工の分野に焦点を当てて、従来のものづくりをおさらいしましょう。設計に基づき金属メーカーから仕入れた板材は、作業に適したサイズに切断、整形(穴開けや表面加工)、折り曲げ、溶接、組立といったプロセスで完成品へと加工されます。一般的な量産工場なら各工程に合った機器や工具があり、人あるいはロボットが細かな作業に加わりつつ、ものができあがります。

(図1)従来の工程イメージ(上)と3Dプリントの工程イメージ(下):ごく単純化した比較。材料や在庫、燃料のほか、各工程に必要な機器、設備、人材といったリソースの節約が期待できる
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 3Dプリンターが従来の工程と決定的に異なるのは、この切断~組立までの工程を一気に行ってしまう点です。極論すると、材料と設計データさえあれば、誰でもものづくりが可能なのです。

プリントの方法

 3Dプリントは、付加製造(Additive Manufacturing)とほぼ同義で、積層を繰り返し造形していきます。主な印刷方法は、レーザー熱結方式(Selective Laser Sintering: SLS)、熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling: FDM)、光造形方式(Stereolithography: SLA)があり、38%を占めるSLS方式がビジネス利用、次いで多いFDM方式がコンシューマー利用の中心です。

(グラフ1)3Dプリンター材料(左)と3Dプリンター技術(出所:Sculpteo「The State of 3D Printing」)
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 SLS方式では、20ミクロンなどごく薄く作業エリアに引いた粉末素材にレーザーを当てて溶かしながら加工し、凝固させる工程を繰り返し、幾重にも層を積み上げて形状ができあがります。樹脂加工で一般的なFDM方式では難易度の高い金属加工に適しているため、ステンレスや金型に使うマレージング銅、チタンや貴金属、歯科治療の主流素材コバルトクロムなど、幅広い素材が利用できます。

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