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国立極地研究所、昭和基地でローカル5Gの実証実験

2022年2月28日(月)IT Leaders編集部

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所は2022年2月25日、昭和基地において、ローカル5Gを活用した移動無線通信システムの実証実験を開始したと発表した。2022年2月の越冬開始に合わせてローカル5Gシステムの試験運用を開始した。これまで屋外ではトランシーバがほぼ唯一の通信手段だったが、実証実験期間中(2023年1月まで)は屋外でもスマートフォンなどを用いたローカル5G通信が可能になる。

 国立極地研究所は、昭和基地において、ローカル5Gを活用した移動無線通信システムの実証実験を開始した(写真1)。ローカル5G設備の設置作業は、2021年12月に昭和基地に到着した第63次南極地域観測隊の準備作業の一環として開始。2022年1月末までに設置準備がほぼ完了し、同年2月の越冬開始に合わせてローカル5Gシステムの試験運用を開始した。実験は2023年1月まで実施する。

写真1:昭和基地の屋外でスマートフォンを操作しローカル5G通信を利用する観測隊員(出典: 国立極地研究所)写真1:昭和基地の屋外でスマートフォンを操作しローカル5G通信を利用する観測隊員(出典: 国立極地研究所)

 昭和基地では、2004年にインテルサット衛星通信設備を設置して以降、観測データの常時送信や、有線接続によるインターネット利用が可能になった。現在では、基地主要部の屋内で無線LANも使えるようになっている。一方、屋外ではトランシーバがほぼ唯一の通信手段だった。今回の実証実験期間中は、屋外でもスマートフォンなどを用いたローカル5G通信が可能になる。

 ローカル5Gの基地局は、昭和基地の基本観測棟屋上に設置した。ローカル5Gで使う4.8GHz帯電波は直進性に優れるため、基地主要部の見通しの良い建屋に設置することで、広い範囲で使えるように設定した。通信範囲は広く、昭和基地がある東オングル島と、周辺の海氷上をカバーする(図1)。

図1:昭和基地ローカル5G基地局の想定カバーエリア。昭和基地のある東オングル島ほぼ全域をカバーしている(出典: 国立極地研究所)図1:昭和基地ローカル5G基地局の想定カバーエリア。昭和基地のある東オングル島ほぼ全域をカバーしている(出典: 国立極地研究所)

 越冬中の隊員が主に活動する昭和基地主要部と、北の浦を中心とする海氷上において、ローカル5Gの特徴である広帯域低遅延の回線を活かした映像中継や、基地設備の遠隔監視を実施する。また、ローカル5Gで利用する4.8GHz帯電波が昭和基地での観測に与える影響も評価する。

 実証実験に使う携帯端末は、ローカル5Gネットワークにより、屋外からの映像伝送をはじめとして、隊員間の情報通信端末として利用する。さらに昭和基地ネットワークおよび衛星通信回線を介してインターネットに接続する。これにより、国内からの遠隔観測支援など、さまざまなサービスを利用できるようになる予定である。

 今後、実証実験の結果を基に、昭和基地における大容量・高速・広範囲のデータ通信環境を進化させる。先端技術の活用により、昭和基地のスマート化を推進していく。基地設備の監視や遠隔制御をはじめ、隊員の安全確保、隊員間のコミュニケーション、観測機器の制御や新たな観測方法など、様々な面で南極観測の高度化を実現させていく。

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